ミャンマーの「クーデター」 少数民族問題と中国の一帯一路から見る
2月に入り、ミャンマーからクーデターという衝撃的なニュースが飛び込んできました。国軍が実権を掌握し、アウンサンスーチー国家顧問らを拘束したと伝えられています。同氏は2010年に軍による自宅軟禁を解かれて以来、再びの拘束となりました。 【地図】中国が海・陸路で進める「一帯一路」構想 ミャンマーを理解する上では、根深い少数民族の問題や歴史的に関係が深い中国の「一帯一路」構想という視点もあります。元外交官で平和外交研究所代表の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。
国軍系が総選挙惨敗、憲法改正に危機感?
ミャンマー国軍は2月1日、1年間の「非常事態宣言」を発令し、アウンサンスーチー(Aung San Suu Kyi)国家顧問やウィン・ミン(Win Myint)大統領ら、複数の政権幹部の身柄を拘束しました。代わって「立法、行政、司法」の権限は、ミン・アウン・フライン(Min Aung Hlaing)国軍総司令官が掌握。現在の閣僚は全員解雇され、大統領代行には国軍出身のミン・スエ(Myint Swe)副大統領が任命されました。 首都ネピドーやミャンマー最大の都市ヤンゴンでは、市庁舎など主要建物は国軍の支配下に置かれました。電話は不通になり、銀行では払い戻しなど通常の業務に支障が生じており、市民の生活は脅かされています。市民はクーデターに抗議して連日デモを行っており、職務を放棄する「不服従運動」なども広がっています。軍は、市民らのSNSなどを通じる情報共有を防ぐために通信各社にインターネット回線の遮断を命じました。 国軍は、昨年11月の総選挙でアウンサンスーチー氏が率いる与党・国民民主連盟(NLD)が不正を働いて大勝したと主張していましたが、選挙管理委員会はその主張を認めませんでした。外国からの選挙監視員も大きな不正はなかったと証言しました。総選挙では改選476議席のうち、NLDが前回2015年選挙を上回る396議席を獲得した一方、国軍系の最大野党・邦団結発展党(USDP)は33議席にとどまり、あらためてアウンサンスーチー氏の国民人気の高さが浮き彫りになりました。 にもかかわらず、国軍が実力行使に出たのは、予定通りに議会が開催されると憲法改正への動きが止まらなくなるなど今後の政治状況に危機感を抱いたからだと思われます。