ミャンマーの「クーデター」 少数民族問題と中国の一帯一路から見る
一帯一路の重要拠点であるチャオピュー港
中国もミャンマー政府との関係を重視しており、2020年1月に習近平中国主席がミャンマーを訪問しました。インド洋に面するラカイン州のチャオピューは中国の重要戦略である「一帯一路」の拠点となっており、ミャンマーと国境を接する中国西南部の雲南省の昆明との間に原油パイプラインが建設されています。さらに、中国はチャオピューに大型船の停泊が可能な深海港を建設するのに協力する意向であるとも伝えられています。 中国外務省の副報道局長は、今回のクーデターを起こした国軍を非難しませんでした。同時に、「中国はミャンマーの友好的な隣国だ」と明言しました。中国は今回のクーデターがミャンマーとの友好関係を損なわないよう慎重な姿勢を取っているのです。 中国の各紙は大きく事件を扱っています。客観的な報道が主ですが、選挙に不正はなかったとする選挙監視員の証言も報道しています。間接的ですが、中国メディアはミャンマー政府の立場を支持している可能性があります。中国のメディアは政府の強いコントロール下にあるので中国政府の意向を反映していると思われます。 欧米諸国は中国と違って、今回のクーデターを「民主化の後退」ととらえ、国軍を厳しく批判して「即時に行動を撤回すべきだ」と要求し、「軍が応じなければ制裁を復活させる」ことも示唆しました。米国のバイデン大統領は1日、「民主主義や法の支配への移行プロセスに対する直接的な攻撃だ」と非難しました。さらに米政府は2日、ミャンマーで起きた事態を国軍のクーデターと正式に認定し、一部の人道支援を除いてミャンマー政府への援助を停止することを決めました。 国連安全保障理事会は4日、報道声明を発出し、アウンサンスーチー氏らの拘束を批判し、即時解放を求めるとともに、市民の意思と利益に沿う形で対話に基づいて事態を解決するよう求めました。報道声明は国連の公式文書であり、その発表には全15理事国の同意が必要です。もっと強い内容にすべきだとの意見もありましたが、中国がこの声明に賛成したことには重要な意味があります。中国も国軍に対し圧力をかけることに賛成したからです。