ミャンマーの「クーデター」 少数民族問題と中国の一帯一路から見る
民主派・国軍の双方と関係を維持する日本
日本としても、民主化の後退は強く憂慮されることであり、拘束されたアウンサンスーチー氏や政権幹部らの釈放を求めることは当然です。だが、それと同時に、非常事態を早期に終了させるため、国軍と民主派の間で妥協する余地がないかを探るべきだと思います。日本からはミャンマーに400社以上が、また諸外国からも資本が大量に流入して同国の経済成長の支えになっていることは国軍としても無視できないはずです。また一方で、アウンサンスーチー氏ら民主派があまり急ぎすぎて民主化のプロセスがとん挫することになれば深刻な事態になります。民主派にとっても国軍側にとっても妥協が望ましいのです。 日本は2011年の民政移管より前から、ミャンマーに経済支援を続けてきました。また、2019年10月にはミン・アウン・フライン最高司令官を日本に招待するなど、国軍との意思疎通にも努めてきました。日本は国軍と民主派勢力との間に立てる数少ない国として、国軍には「非常事態宣言」の早期終了と、民主派には国軍との妥協を働きかけるなど事態の早期解決に貢献すべきだと考えます。
----------------------------------- ■美根慶樹(みね・よしき) 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスタン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹