【認知症の現実】「物が届いた時には買ったことを覚えていない」 ある日息子が大量の通販の請求書を発見 夜中に徘徊して帰れなくなることも・・・それでも要介護認定が受けられない!?
■専門家「認知症は要介護認定では軽くみられる傾向がある」
「訪問調査は30分から1時間。それもまったくの初対面の方が来て話します。日本人は、認知症であるかないかにかかわらず、ほとんどの人が『できる』って答えるんです。『1人でお風呂入ってますか?』と聞いたら入っていなくても『入ってる』って答えてしまいます。なので、1回だけの訪問調査で全貌が明らかになるかというと疑問です。」 そう話すのは介護保険が専門の大阪城南女子短期大学・前田崇博教授です。
(前田教授) 「この制度は介護の時間によってランクが決められるので、1人暮らしをされていると、介護を受けている時間があるのか?という見え方になります。特に認知症の場合は、時間も場所も人もわからないという人でも、歩ける、1人で食事ができる、という状況であることは多いので、そうなると要介護どころか、その下の要支援と判定されることは多いです。なので認知症と要介護認定の項目は相性が悪いです。認知症を軽く捉えすぎていると思います」 また、要介護の認定はかなり客観性を持たせたシステムではあるものの、どうしても地域差が出てしまうといいます。 (前田教授) 「要介護の状態にならないよう食い止める、つまり介護予防事業が効果を上げている自治体が概して認定率が低くなる傾向があります。その一方で、介護施設やサービスが整備されている地域は比較的高くなる傾向にもあります。そこで厚生労働省は、全国どこで申請しても統一された基準に基づいて審査されることを基本原則とした『要介護認定適正化事業』を実施していますが、いまだに地域格差は残っている状況です」 前田教授は介護保険がスタートした2000年から、この問題は懸念されていたことだと話します。 (前田教授) 「要介護認定は『生物体としての個体評価』で、家族の有無や経済状況、どこで生活して いるか等は関係ありません。介護の地域格差をなくすためにも、全国どこで調査・審査を 受けても同じ結果になるような科学的なシステムの確立が必要になってきます」
■同居すればいい・・・わけじゃない
Aさんに「父親と同居しないのですか?」と聞いてみました。すると「同居したからといって問題が解決するわけではない」との答えが返ってきました。 (Aさん) 「僕は普通のサラリーマンで、昼間は会社にいるわけです。だけど、中古品買取業者の電話も、大量の請求書も昼に来ています。父親が散歩に行って帰ってこられない、ということも昼に起きるんです。そうしたら、同居してても同じことですよね」 認知症の初期段階だからこそ、これから確実にやってくる、状態が進行した時のことを考える時間にしなければならない。これが認知症の現実です。
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