なぜ“浪速のロッキー”ジュニア赤井英五郎はプロデビュー戦で144秒TKO負けを喫したのか…父が息子へ熱く語ったエールとは?
息子のパンチをミットやサンドバッグで受けたことがあり、そのポテンシャルを知っているからこそ熱いエールを送る。 「挽回はできると思う。ここから20連勝すればええんです。英五郎の型にはまったときのパンチは凄い。ズシンというか、ズゴーンというパンチ。他の選手と違う重さを持っている。気持ちは強い男です。誰よりもショックを受けているのは本人。今はへこんでいるやろうけど、ゆっくり休んで明日にむかって立ってくれればいいと思う」 試合後、2人はエレベーターホールの前でバッタリと会った。 父は息子を抱きしめ、耳元で「もう一回、一から練習して頑張っていこうね」とささやいた。 赤井ジュニアに父が取材で語っていたメッセージを伝えた。 「ここから20連勝?それは聞いていないですが、過ぎたことは仕方がない。僕一人で戦っていない。コーチと話し合いながら勝つための練習をしている。コーチにも申し訳ない。もうちょっと頑張りたい」 自信喪失ではなくモチベ―ションが高まったのか? 「アマで負けたことのない経歴ではないが、プロの負けの一回はアマチュアと違って大きい。僕だけが続けたいと言って続けられる世界じゃない。ミドル級は怪我もある。今の戦い方だと今後も怖い。話し合いながら自分がうまくなれる練習をもっと緻密に考えていきたい」 赤井ジュニアは再び立ち上がることを決意した。 アマ時代もアキレス腱断裂の大怪我を乗り越えてきた。挫折に強いのも、生死の淵からカムバックした父譲りの“遺伝子”なのかもしれない。 アマ時代は、東農大や海外遠征などでスキルを学んだが、ほぼ独学と言えるもので、帝拳入門と同時に基礎的なスキルから学び直した。5月に予定されていた試合が新型コロナ禍の影響で延期になり「いつでも試合ができるように」と節制を心掛けて体重も75、6キロにキープ。指摘されてきた「ガードが甘い。しっかり上げなさい」をテーマに帝拳の豊富な重量級ボクサーとスパーを積んできた。デビュー戦では、これまでのスキルでは通用しないことや数々の課題も浮き彫りになったが、まだプロ転向1年も経過していないのである。 そう考えるとノビシロは無限大ではないか。話題性、スター性もプロの条件。敗れても前へ出続けた。そして英和さんには、怒られるかもしれないが、赤井ジュニアには、本能型の父とは違いロジックを組み立てることのできる明晰な頭脳がある。英五郎主演の“浪速のロッキー”のリアルな続編は敗戦から始まるのだ。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)