なぜ“浪速のロッキー”ジュニア赤井英五郎はプロデビュー戦で144秒TKO負けを喫したのか…父が息子へ熱く語ったエールとは?
前には出るが、決め手に欠く赤井に対して、岡村は右のボディから右アッパー、続けて至近距離から左アッパーと息をつけないほどの乱れ打ち。赤井ジュニアはただ防戦を強いられた。 左ジャブからプレスをかけるが、右の打ち終わりに左フックを合わされてバランスを崩す。 中央大からボクシングを始めたがボクシング部には入らずアマチュア経験のない岡村が猛ラッシュ。 「足を使え!」「動け!」の声が飛ぶが、赤井はフットワークで危機を脱することはできず、アマの12オンスではない、プロの10オンスのグローブで打たれたミドル級クラスのダメージの蓄積からか動きがスローモーに。体を密着させボディからアッパーで反撃に出たが、右フックを放たれ、正面からの左ジャブに顔がのけぞり、パタっと動きが止まったところで染谷レフェリーが間に入って試合を止めた。ダウンシーンはなかったが、デビュー戦の4回戦の判断としては、このストップは間違いではなかった。 「もっと前へ出て手数を増やしておけばよかった。後から振り返ればなんとでも言える。相手もデビュ―戦。前へきた。向こうが強かったと思う。リングに上がるだけで満足はしていなかった。勝てなかったのが申し訳ない。自分もですが、周りがショックを受けていると思う」 家族の話をふられると言葉に詰まり涙ぐんだ。 「たくさんの方が応援にきてくれた。帝拳には強い選手がいっぱいいるのに試合ができた。こんな状況の中で試合ができることは恵まれている」と感謝の気持ちを伝えた。 リングサイドから父の英和さん、母、姉が見守っていた。 取材に応じた父も悔しそうだった。 「自分のいいところを出してくれたらなあと見ていましたが、最初から細かいパンチをもらい過ぎていた。英五郎の持っているええとこが出る前に先手、先手で当てられたのが敗因。自分から先に攻撃したらええと思ったが、デビュー戦の緊張もあったのか、残念ながら力を出せずに終わったのが可哀そうに思えます。興奮はしていました。英五郎はファイターなんで、もっと頭をふって打てば良かったのですが」 応援団のTシャツを着た英和さんは、「可哀そう」という言葉を何度も使い、息子の気持ちを思いやった。