「朝起き上がれない」中学生の10人に1人――起立性調節障害、不登校の要因に #今つらいあなたへ
当事者が制作した映画上映 保護者の思い
保護者の立場から発信する人もいる。東京都中野区の野澤菊枝さんは、2022年に起立性調節障害の認知と理解を広げる団体「Kiku-Ne」を立ち上げた。
大学生の長女と高校2年生の次女、2人とも起立性調節障害だ。長女は症状が落ち着いているが、単位制の定時制高校に通う次女は症状が強く、登校できる日のほうが少ない。 野澤さんは長女が中2で診断を受けたときから、学校の保護者会で病気の説明をしたりするなど、学校の先生と連携をとってきた。ただ、長女が高校受験のときに、ある高校の説明会で病気への無理解を感じたことから、「教育現場にこそ、この病気を知ってほしい」と活動を始めた。都内の小中学校や高校の教職員や養護教諭向けの研修で講演している。
野澤さんが力を入れるのが、起立性調節障害の女子高生らが制作した映画『今日も明日も負け犬。』の上映会だ。「当事者による作品で、この病気をより多くの人に知ってもらいたい」と学校や行政、地域の人向けにこれまで17回の上映会を開いてきた。 野澤さんは講演会でこう伝えている。 「当たり前の日常生活ができなくなり、『できないこと』に目が向きがちな病気ですが、朝ではなくても起き上がれた、食事をとれたなど、できていることも実はたくさんあります。急がず焦らずあきらめず、自分らしくで大丈夫です」
「ずっとつきあっていく病気じゃない」 主治医の言葉が支えに
思春期に多く発症するため、受験期と重なるケースも多く、進路の悩みも大きい。 医師の吉田さんは「焦らず、自分の好きなことや得意なことから少しずつ動きだしてほしい。保護者は子どもの病気を理解し、子どもが頑張りたいと思えることをサポートすることが大切です」と話す。吉田さんがかつて診察した子たちは今、看護師やモデル、プログラマーなどそれぞれがやりたいことを見つけている。 奈良県の看護師、瀧迅人さん(23)もやりたいことを見つけた。小学3年生のときに起立性調節障害になり、中学校はほとんど行けなかった。好きだったバスケットボールも中断し、家で鬱々とした日が続いた。