国の予算はどう作られているのか? 行政学者が解説
執行から検査まで
新年度から予算の執行に入る。ここでは、予算の年間配賦計画が立てられ、4半期単位で各省庁に財務当局から予算が配賦される。受け手となる各省庁はこの配賦計画に基づいて物品の購入や、工事請負契約を結び、事業を執行していく。当然のことだが、国会で議決した予算には法的拘束力がある。財政当局が勝手に「款・項・目」の変更や、実施の変更を指示することは許されない。 1年間の予算執行が終わると、執行が終わった翌年度から決算検査が始まる。内容としては、(1)各省庁が会計帳簿を整理し決算報告を作成する過程(2)並行して行われる会計検査院による会計検査の過程(3)各省庁の決算報告と会計検査院の検査報告を国会に提出し、審議・承認を得る過程、の3つに分けられる。 財政の民主的統制は基本的に国会、地方議会の役割だが、国の会計検査院、自治体の監査委員の役割も大きい。国の場合、内閣から独立した会計検査機関として会計検査院がある。 しかし、会計検査で指摘された事項は翌年度の予算編成、執行の改善として反映されるものの、「事後チェック」が役割なだけに、その限界もある。また、各省庁の多くの出先機関を毎年検査することも体制上無理で、極端な話、10年に一度しか検査院が来ない、という出先機関も少なくない。これで十分な検査体制かどうか、議論のあるところである。
短命政権では責任持てない? 財政規律をしっかり議論せよ!
予算編成、執行、決算計算検査を経た1会計は、国会の決算承認をもって終わる。決算過程に要する年月は1年半に及ぶので、一つの財政過程(PDCAサイクル)は予算作成に約1年、執行に1年、決算検査に1年半の合計3年半掛かることになる。予算はややもすると政治家の人気取りの手段に使われがちだ。特に内閣が頻繁に変わるとその傾向が強い。 政権交代や内閣交代が1~2年単位で行われるようだと、予算編成した内閣は、執行はできず、また決算は2代前(あるいは他党の政権時)に編成されたものを審査・承認する、という事態も出てくる。自治体の場合、首長の任期は4年で辞職や解散はあまりないが、国の場合、そうではない。少なくも1内閣は予算のライフサイクル(PDCA)からすると「4年」は政権の座にいないと、責任ある政治を行うことにはならない。戦後、5年以上続いた内閣は第二次安倍晋三内閣を筆頭に5つしかない。 決算や政策評価を受けないまま内閣が終わる――。日本の財政膨張の原因も短命政権を生みやすい政治状況が絡んでいる。議院内閣制の母国イギリスは首相の頻繁な解散権を抑制する視点から、与野党を含め国会の3分の2が解散に賛成しないと国会を解散できない仕組みになっている。このイギリスモデルを移入すべき時期に日本も来ているのかもしれない。 加えて最近補正予算が安易に組まれ、予算全体を膨張させる傾向が強い。景気対策とか災害復旧が名目となるが、各省庁は補正予算の財務省査定が甘いというところに目をつけ、不要不急の費目を追加要求する悪弊が目立つ。その財源は概ね赤字国債の追加発行だ。日本は財政規律がどんどん失われている。これは財政収支を均衡することだけを意味しない。国民のニーズに合致しない無駄な公共サービスを供給せずに、国民に適切な租税負担を求めるという意味での効率性を実現することだ。 野党やマスコミによる適切な批判なくして財政健全化の道はますます遠のく。新年度予算の国会審議が間もなく始まるが、その点、緩んだ箍を締め直す国会論戦にも期待したい。