国の予算はどう作られているのか? 行政学者が解説
ちなみに予算編成を担当する財務省主計局は、総務課など6つの課と主計官、主計監査官からなるが、直接予算編成を担当するのは9人の主計官たちである。組織形態は軍隊組織に似ており、現場で指揮をとる主計官たちを「連隊長」と呼び、その主計官のもとに数人の主査(中隊長)と主計官補佐(小隊長)がおり、その下に係長、係員が配置される。1つの連隊は10数人から20人程度だ。 そしてこの9人の主計官を束ねるのが「師団長」と呼ばれる3人の「局次長」で、この局次長がそれぞれ3人ずつの主計官を指揮下におく。この3人の局次長が各省庁の予算編成に責任を持つ。それを大局的見地から指揮するのが軍団司令官の財務省主計局長であり、その上の総司令官が財務大臣ということになる。 10~11月にかけて主計局次長の一次査定、二次査定の局議がなされ、この間、主計局総務課では税収見積もり、国債発行などについて主税局、理財局と協議し予算全体のフレームワーク作りを進めていく。 予算編成の大詰めを迎える12月に入ると、国会議員や知事、市町村長、圧力団体らが財務省や政府与党(連立政権を支える各党)に陳情攻勢をかける。これがよくテレビに映し出される光景で最後のツメがこの頃行われると見てよかろう。 こうして財務省は年末の押し詰まった12月下旬に政府原案を閣議に提出し、閣議の了承を得て各省庁に予算の内示をし、国民に公表する。ただし、これで予算編成が終わる訳ではない。公表の翌日から予算化されなかった事業に対する復活折衝が始まるのだ。主計局長と各省庁事務次官など事務レベルで折衝し、それで決着がつかない案件は各省大臣と財務大臣で行う大臣折衝へ、さらには与党の党三役折衝へと政治折衝の過程を経て決着をつけていく。それらを経て政府案が正式に決まる。 政府案は翌年1月中~下旬には国会に提出され、まず衆議院で予算審議が行われる。憲法の規定で予算審議は衆議院に先議権がある。2月中に衆議院予算委員会で審議され衆議院本会議において可決した後、参議院に回される。参議院予算委員会の審議を経て、参議院本会議の可決をみて3月下旬に新年度予算が成立するという流れだ。 もっとも、これは順調なケースで、衆参が「ねじれ国会」の状態だったり、大災害など不測の事態が発生し予算審議が長引き、4月に入っても予算が成立しない見通しの場合、本予算成立までの期間(1~2月)は暫定予算が編成されることになる。暫定予算は本予算が成立するとそれに組み込まれる。