鹿島の内田篤人が最後まで貫いた美学…”奇跡ラストマッチ”の感動スピーチで明かした32歳で電撃引退した理由とは?
クールに聞こえても、胸中には熱き血潮が脈打っていることを誰もが知っている。右ひざのけがをさかのぼっていけば右太ももを痛め、手術ではなく保存療法を選択してグループリーグのピッチに立ち、鬼気迫るプレーで孤軍奮闘した2014年のブラジルワールドカップに行き着く。 ガンバ戦の前半39分には、カウンターを発動されかけた矢先にFW宇佐美貴史を激しく倒してイエローカードをもらった。いつしかボロボロに剥がれた右ひざのテーピングを、後半途中の飲水タイムにグルグル巻きにして補強。最後のパワーを注入して、アディショナルタイムに大仕事を成し遂げた。 「僕は人に恵まれているし、それはサッカーが終わった今後も確信している。素晴らしい選手や監督に恵まれてプレーしたすべてが僕の力となり、糧となる。これからの人生がすごく楽しみです」 セレモニーで花束を贈呈した神様ジーコから黎明期に注入された、何がなんでも敗北の二文字を拒絶するDNAを置き土産にした内田は「またどこかでお会いできることを楽しみにしています」と言い残し、爽やかな表情とともに選手としてのサッカー人生へ別れを告げた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)