解説ハマースなんかと心中するつもりはみじんもないとはいえ、ガザ地区の惨状にまったく触れない「停戦」ではヒズブッラーだけでなく「抵抗の枢軸」陣営にとっても劇的な威信の低下は免れません。また、今後もイスラエルがレバノン領どころかシリアやイラクまで攻撃できる自由があるということになると、完敗に等しいです。イスラエルの側も短期間で一方的にヒズブッラーを葬り去るはずが、政策目標である「北部の避難民の安全な帰還」を全く果たせずに「停戦」で、何か軍事的・戦略的戦果が上がったかは微妙です。一方、ヒズブッラーは抵抗を継続し今後もそうする能力を確保した点、イスラエルはヒズブッラーの幹部を短期間のうちに大方殺し尽くした点で、戦果や勝利を主張する材料があります。要するにどっちも「負け」で「勝ち」でもあります。ただし、ガザも、シリアもイスラエルが攻撃し続けるようなので、これを放置した「停戦」はほとんど意味がありません。
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コメンテータープロフィール
新潟県出身。早稲田大学教育学部 卒(1998年)、上智大学で博士号(地域研究)取得(2011年)。著書に『現代シリアの部族と政治・社会 : ユーフラテス河沿岸地域・ジャジーラ地域の部族の政治・社会的役割分析』三元社、『「イスラーム国」がわかる45のキーワード』明石書店、『「テロとの戦い」との闘い あるいはイスラーム過激派の変貌』東京外国語大学出版会、『シリア紛争と民兵』晃洋書房など。
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