見解ケア労働者の処遇改善には二つの方向がある。まず、ケア職場の多くは行政の補助金が出ているため、診療報酬、介護報酬や公定価格、また職員の配置基準など、財源の根拠となる基準の引き上げを政治に求める方向だ。もう一つが見落とされがちだが、補助金を職場で適切に使わせることだ。民営化の中で、経営者による補助金の恣意的な分配や不正な運用は後を絶たない。ケア現場の金の使い道には労働者の声が反映されることが重要だ。 そこで効果的なのが労働組合だ。民営化の進むケア業界では労働組合がない職場がほとんどだが、複数の労働者がいれば労働組合を結成でき、ストライキをする権利も保障されている。筆者が代表を務めるNPOには毎年、集団退職しないために労働組合を結成したいという相談が寄せられる。ぜひ労働組合を選択肢として考えてみてほしい。
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コメンテータープロフィール
NPO法人「POSSE」代表。年間5000件以上の労働・生活相談に関わり、労働・福祉政策について研究・提言している。近著に『賃労働の系譜学 フォーディズムからデジタル封建制へ』(青土社)。その他に『ストライキ2.0』(集英社新書)、『ブラック企業』(文春新書)、『ブラックバイト』(岩波新書)、『生活保護』(ちくま新書)など多数。流行語大賞トップ10(「ブラック企業」)、大佛次郎論壇賞、日本労働社会学会奨励賞などを受賞。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。専門社会調査士。