見解高齢労働者の労災は深刻化する一方だ。筆者が代表を務めるNPO法人POSSEにも65歳以上の労働者の労災事故の相談が増えており、負傷による後遺症がなかなか治癒しない、生活に困窮するなどの問題が起きている。建設業や製造業だけでなく、介護、清掃、商業、警備などでも高齢労災は多い。背景として、人手不足の職場を高齢者の負担で間に合わせている構造がある。このため高齢者に過剰な負荷をかけたり、コストを惜しんで安全対策を十分に行わなかったり、労災保険の使用を妨害したり、損害賠償を払わない経営者が後を絶たない。また、働く側も年金では生活に足りず、危険な職場でも働かざるを得ない環境がある。安全対策の努力義務では足りず、高齢労働者への配慮を具体的に義務化し、違法に対する労基署の指導や、事故が起きた際の損害賠償請求をしやすくすべきではないだろうか。
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コメンテータープロフィール
NPO法人「POSSE」代表。年間5000件以上の労働・生活相談に関わり、労働・福祉政策について研究・提言している。近著に『賃労働の系譜学 フォーディズムからデジタル封建制へ』(青土社)。その他に『ストライキ2.0』(集英社新書)、『ブラック企業』(文春新書)、『ブラックバイト』(岩波新書)、『生活保護』(ちくま新書)など多数。流行語大賞トップ10(「ブラック企業」)、大佛次郎論壇賞、日本労働社会学会奨励賞などを受賞。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。専門社会調査士。