最低賃金「1500円」はなぜ注目を集めているのか? #専門家のまとめ
衆議院選挙の争点に最低賃金1500円への引き上げが急激に争点となっている。自民党の政策集には記載されていないものの、石破首相は自民党総裁選時に「2020年代に全国平均1500円」に引き上げるという目標を掲げているほか、各党も類する政策を提示しているからだ。
経済界では「倒産してしまう」という批判が噴出している一方で、一部では日本経済全体の観点からは最低賃金を上げて企業の競争力をあげるべきとの見解もある。さらに、政策論的には全国平均1500円なのか、全国一律1500円以上なのかをめぐっても議論がある。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
近年、最低賃金をめぐっては単純に「生活困難だから賃金を上げなければならない」というだけではなく、より広い経済的・社会的関心がもたれている。論点の一つが、最賃の引き上げは「経済に寄与するのか否か」である。今回のまとめでも、中小企業の倒産を懸念する声と、むしろ「駄目な企業」を保護すべきではないという相反する見解が見られた。確かに、最賃が上がれば企業は設備投資を増やすなど生産性を上げるしかない。こうした議論は著名な経済評論家であるデービッド・アトキンソン氏が提唱することで、近年支持者を増やしている。
また、最低賃金を全国一律にすべきかについても議論が活発化している。四つ目に挙げた東京新聞の記事で紹介されている静岡県立大学の中澤教授の研究によれば、実は都市と地方で必要な生計費に大きな差はないことが実証されている。だとすれば、都市に比べて最賃が低く抑えられている地方では、非常に生活が困難であることになり、東京への人口移動も促進していることになる。
以上のように、今日では最低賃金について、日本経済全体への影響や地域格差の問題としても考えられるようになっている。