見解ハマスには政治と軍事を統率する最高指導者はおらず、もともと集団指導である。今回は政治部門トップの政治局長を置かず、政治委員会が停戦協議などの政治決定を行うとするが、そこが軍事部門まで統制するわけではないので「集団指導体制」と呼ぶのは適切ではない。日本のメディアの多くが政治局長のハニヤや後任のシンワルを「最高指導者」と呼んでいるが、AFP電でも「 the head of the Political Bureau(政治局長)」であり、それを「最高指導者」と呼ぶのは誤り。シンワル死後、政治局長を選任せず、来春まで「5人の政治委員会」で率いるのはイスラエルのガザ攻撃やレバノン侵攻が続いている限り、イスラエルの暗殺作戦も続くと判断し、新たな政治局長を任命してもすぐに暗殺されることを想定した上で、その都度、政治局長選任で政治活動が中断されることがないようにという全く実務的な判断だと、私は理解している。
同じ記事に対する他のコメンテーターコメント
コメンテータープロフィール
元朝日新聞記者。カイロ、エルサレム、バグダッドなどに駐在し、パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」などを現地取材。中東報道で2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2015年からフリーランス。フリーになってベイルートのパレスチナ難民キャンプに通って取材したパレスチナ人のヒューマンストーリーを「シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年」(岩波書店)として刊行。他に「中東の現場を歩く」(合同出版)、「『イスラム国』はテロの元凶ではない」(集英社新書)、「戦争・革命・テロの連鎖 中東危機を読む」(彩流社)など。◇連絡先:kawakami.yasunori2016@gmail.com
川上泰徳の最近の記事
川上泰徳の最近のコメント
【解説】イスラエルとヒズボラの「停戦合意」をバイデン大統領が発表 なぜ今?背景は? トランプ大統領就任前に事態沈静化狙ったか
FNNプライムオンライン(フジテレビ系)