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川上泰徳

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中東ジャーナリスト

報告

見解なぜ、バイデン政権が残り2カ月という時に、イスラエルとヒズボラの停戦が合意したかを考えれば、ネタニヤフ首相が停戦を望んだということしかないだろう。この1年のガザやレバノンでのイスラエルの軍事攻勢を見れば、バイデン政権の政治圧力は首相に一切、通じないことが明らかになった。では、なぜ、ネタニヤフ首相がいまレバノン停戦に合意したかは、トランプ次期大統領の「ディール(取引)」を予見して、次期政権発足までにガザとイランでの取引に有利な状況をつくるという狙いだろう。トランプ氏は前政権でのやり方を見れば中東紛争ではイスラエルに有利な「現状追認」が原則であり、イスラエルはガザではさらに軍事攻勢をかけ、できる限り破壊を進めるだろう。イランに対しては、トランプ氏がイランとの取引に入っても、イランがヒズボラを交渉カードとして使えないように、レバノン政府との停戦合意という形でヒズボラを抑えたということだろう。

コメンテータープロフィール

元朝日新聞記者。カイロ、エルサレム、バグダッドなどに駐在し、パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」などを現地取材。中東報道で2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2015年からフリーランス。フリーになってベイルートのパレスチナ難民キャンプに通って取材したパレスチナ人のヒューマンストーリーを「シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年」(岩波書店)として刊行。他に「中東の現場を歩く」(合同出版)、「『イスラム国』はテロの元凶ではない」(集英社新書)、「戦争・革命・テロの連鎖 中東危機を読む」(彩流社)など。◇連絡先:kawakami.yasunori2016@gmail.com

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