「峠の釜めし」容器、炊飯にパン焼きに使える!実際に試した“駅弁容器のオススメ活用術“
☆「峠の釜めし」これまでも、これからも“益子焼“とともに!
旅行先で食べたあと、家に持ち帰りたくなる駅弁容器といえば、信越本線・横川駅(群馬県安中市)などで販売されている「峠の釜めし」の土釜容器を思い浮かべる人も多いでしょう。掌に持った時、唇が触れた時の感触も心地よく、1958(昭和33)年から変わらぬ人気を保ち続ける定番駅弁の、魅力のひとつがこの土釜にあると言っていいでしょう。2017(平成29)年にはパルプモード(紙容器)の「峠の釜めし」も登場しましたが、土釜容器での同商品も変わらず発売されています。
2021(令和3)年11月には、この容器を製造している益子焼の窯元「つかもと」が業績の悪化にともない、民事再生の手続きを行うとの報道がありました。同社は新しいスポンサーのもとで再建への道をたどり、駅弁の製造元である「荻野屋」も、以下のようなコメントを発表しています。
「手続き前と変わらず、商品の製造ができる状況にあり、そのため、当社の「峠の釜めし」の販売については、なんら影響はございません」(「荻野屋」ホームページより))
今後とも変わらず供給が行われるとのことで、「峠の釜めし」と土釜のマッチングを楽しむことができそうです。
そしてこの土釜容器は直火にかけられるため、炊飯に使えることでも知られています。しかし料理への活用法はそれだけではありません。
これまで通算20個以上の「峠の釜めし」容器をはじめとして、さまざまな駅弁容器を活用してきた筆者が、ちょっとだけ旅行気分を味わえる“駅弁容器の活用術“を提案します。
※以下、記事内の写真・調理は筆者によるものです
☆炊飯だけじゃない!「峠の釜めし」土釜・料理にパン焼きに
※まずは基本の炊飯
「峠の釜めし」は製造の段階から土釜にお米と水を入れて炊飯しているため、持ち帰った容器で1合(お茶碗2杯分程度)のご飯を炊くことが可能です。「荻野屋」のホームページにも分量や簡単な方法が記載されているため、その手順は拍子抜けするほどカンタンです。
ちょうど一人分・個食の炊飯ができるこの土釜は、慣れればちょっとした調整やアレンジが利くのも嬉しいところ。例えば、水分量を少し減らして炊飯→最後に少しだけ火力を強めて底面を“お焦げ”にしてみたり、端から醤油やごま油を垂らして香ばしさをプラスしても良いでしょう。
この土釜でご飯を炊くと、フタとの隙間から上がってくる湯気や、湧き上がる際に聞こえるコトコトなど、調理の際のささやかな音を楽しめるのも嬉しいところ。「はじめチョロチョロ、中パッパ」の音に耳を傾け、釜めしでの炊飯を楽しむのも良いかもしれません。
※続いて「個食の一品料理」
峠の釜めしの容器はアクアパッツァ・アヒージョなど、個食のメインディッシュ作りにも最適です。荻野屋のホームページにもさまざまな調理例が掲載されていますが、筆者が自宅で作ったもののなかでは、釜の深さを生かして中サイズの玉ねぎを丸々入れるオニオングラタンスープや、野菜と豚肉を敷き詰めたミルフィーユ鍋などがお勧めです。
※パンやケーキ作りにも!
ゆっくり熱が伝わる特性を利用して、パンやケーキ作りに利用しても良いでしょう。程よい通気性がある分、何度か試した限りではふっくらした食感を楽しむことができました。ただ、土釜の底は少しザラっとして生地が底にこびりつきやすいため、クッキングシートを敷いた方が後々ラクです。
※使用上の注意点
ただこの容器は植木鉢などに転用する場合も多く、底面を薄くして穴を開けやすくしているため、複数回の使用で底面に割れが生じます。使用前後にしっかり乾燥させ、「目止め」(米のとぎ汁を沸騰させ水漏れを防ぐ)など、普通の土釜と同じようなメンテナンスを行ったほうが長く使える傾向にあります。
☆ランチのひと時で小旅行?駅弁容器活用で「どこかに行った気分」を!
「峠の釜めし」以外にも、弁当箱として再利用できるような駅弁容器はいろいろとあります。たとえばJR東日本のグループ会社が断続的に発売している「特急列車ヘッドマーク弁当」は、弁当箱メーカーの老舗・スケーター製の密閉性が高い4点止めランチボックスを容器に使用しているため、普段使いのランチボックスに最適です。(ただし各デザインは短期間での限定販売)
たとえばこの容器に全国の有名駅弁を再現して盛り付け、「今日の弁当は○○駅弁!」というささやかな「旅行に行った気分」をランチタイムに楽しむのも良いでしょう。(上の調理例は鹿児島本線・折尾駅の駅弁「かしわめし」風)
また駅弁の味を覚えて再現風に作るのも良いでしょう。「クックパッド」などのサイトでは“〇〇駅弁風”などというレシピも数多く掲載され、中にはそれぞれの調製元(駅弁の製造業者)が意外なコツを公開している場合もあります。
例えば横浜駅・シウマイ弁当のシウマイは「干したホタテの貝柱が味の秘訣」と、崎陽軒の方がかつてテレビ(TBS系列・はなまるマーケット 2011年1月21日放送分)でインタビューに答えており、その際の再現レシピをもとにシウマイを作ってみると、確かに「崎陽軒“風”」の味を楽しむことができました(注:本物の方が間違いなく美味しいです)
余談ですが筆者もNHK「さし旅〜駅弁マニアと巡る熱狂的ツアー」(2017年放送)に“駅弁を再現するマニア“として出演し、指原莉乃さん・高島政宏さんなどに「シウマイ弁当風駅弁」を実食いただきました。
また、タコツボ型の陶器でおなじの西明石駅弁「ひっぱりだこ飯」は、各地の駅弁大会でもまさに”ひっぱりだこ”状態。関西ではこの容器を「『何かに使えるやろ』とオカン・オトンがとっておいたものの、棚の奥にしまわれたまま」という家庭も多いでしょう。
2021年1月に、この容器の専用フタ「ひっぱりだこの蓋」が発売されたことで、活用の方法は一気に広がりました。上の写真では、この駅弁容器に有名ラーメン店の卓上をイメージした漬物(「一風堂」風のもやしナムル・「らあめん花月」風の壺ニラ)を入れていますが、普段は「ひっぱりだこの蓋」を3個購入し、冷蔵庫で蓋をして保管しています。
これをテーブルに置いておけば、自宅がラーメン屋さんのカウンター風に早変わり。いつもの袋ラーメンも気分的に美味しくいただくことができます。この「ひっぱりだこ飯」も数々のバリエーションがあり、上写真の容器はピンクのものが「ハローキティひっぱりだこ飯」・黒が「ゴジラvsひっぱりだこ飯」、茶色は通常販売版と、見た目のカラフルさやデザインに隠された“小ネタ”で楽しめます。
そのほか、プリンや茶碗蒸しにも最適です。
「家にあるけど、使ってはいない」駅弁容器を活用して、ちょっとした“旅行に行った気分“を味わってみてはいかがでしょうか。今までの旅行を思い出しつつ、駅弁容器や再現レシピで作った弁当を自ら提げて出勤すれば、ランチを待つ時間も、ほんの少しだけワクワクしたものに・・・なるかもしれません。
【了】
※この記事は2021年2月25日の「乗りものニュース」掲載記事を、現在の状況にあわせつつ加筆・修正し、再掲載しています