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【速報版】第1回芸備線 再構築協議会 全国のローカル線に影響も ほぼ全て議事録【配布資料有り】

宮武和多哉ライター(乗り物・モビリティ全般、観光、ご当地グルメ)

 営業成績が低迷して久しいJR芸備線・備後庄原駅~備中神代駅間(68.5Km)の今後について話し合う「第1回再構築協議会」が、2024年3月26日にホテルメルパルク広島で開催された。

 この記事では、再構築協議会の概要ならびに、実際にどういった事項が話し合われたのか。資料や実際の質疑応答を、できるだけ速報ベースでお伝えしていきたい。

※13:30頃に協議会は終了。報道各社からの質問が相次ぎ、予定時間からの遅れが生じたようです。

※21:10 すべての更新完了。今後は画像、資料追加の可能性があります

地域公共交通の「リ・デザイン」解説(国土交通省資料より)
地域公共交通の「リ・デザイン」解説(国土交通省資料より)

【再構築協議会、なぜ必要?】

  低迷のローカル線の経営問題は、沿線の県・市町村と鉄道会社による「任意協議会」で話しあわれるが、廃止提案や費用負担を恐れる自治体側が拒否を貫き、協議が長期化する場合も多い。再構築協議会は「参加応諾義務」「結果尊重義務」が生じる法定協議であるため、速やかに話し合いを行うためのものといえるだろう。

 また、ローカル線と競合する路線バス・タクシー・通学や通院用のバスが乱立し、それぞれ経営が厳しいようなケースもある。国は一定の予算を出すが、それは単純な赤字への補助ではなく、鉄道に限らず地域の交通を見直したうえで必要な補助が行われる。前者が赤字への止血補助だとすれば、後者はこれからの存続への補助だといえるだろう。

芸備線は制限速度が15kmなどに制限された区間もある
芸備線は制限速度が15kmなどに制限された区間もある

【なぜ、芸備線が適用第1号に?】

 芸備線の中でも、今回の協議の対象となる区間は、「1日利用者13人、年間営業収入100万円・2.3億円の赤字」(東城駅~備後落合駅間)など、鉄道としてはあまりにも厳しい低迷が続く。JR西日本はこの不採算を見過ごすわけにはいかず、今後についての任意協議を既に申し出ている。

 しかし沿線自治体(広島県ならびに庄原市・岡山県新見市など)は、参加=廃止という懸念から、乗車促進などの振興策以外の話し合いを拒否。従来通り「都市部の黒字でカバーすべき」「国の負担による存続」という主張を続けている。ここが近年廃止された各地の路線と異なっており、参加応諾義務が生じる再構築協議会の開催に至った。

 それでは、第1回・再構築協議会の様子を見てみよう。

☆再構築協議会・資料(速報版)

【参加者の出席者名簿】

 協議に先立って、協議会の議長を務める国土交通省・益田浩局長が挨拶を行い、芸備線の経営がきわめて厳しい状態にあると発言。今後について「数字とファクトに基づいて議論を行いたい」と述べた。

 なお、今回の参加者は広島県・庄原市・新見市ともに副市長級が参加。(首長は全員不参加)国が中国運輸局長、JR西日本は広島・岡山支社長が参加している。

【芸備線再構築協議会の設置について(経緯)】

 特定区間(備後庄原駅~備中神代駅)だけでなく、広島市・三次市などへの参加を即したものの、安芸高田市が「特定区間内でない」という理由で不参加となっている。

【芸備線の状況・JR西日本から資料説明】10:30~

 資料の説明は、西日本旅客鉄道(以下:JR西日本)・広岡研二 広島支局長によって行われた。

 芸備線の現状について、「高速道路の整備で、自動車や高速バスにシフトした。沿線は過疎化が進み、残念ながら駅は町の外れにある。(筆者注:庄原・西城の商業地域や病院は、国道183号沿いなどに離れている)クルマ社会の街づくりについていけず、(鉄道は)生活のお役に立てていない」と述べた。

 先に述べたとおり、JR西日本は2021年6月に、鉄道を含めた地域交通の見直しを申し入れている。今回の協議会でも、「鉄道以外のサービスに置き換える」と明言し、路線バスなどへの転換を議論する場であることを、最後に明言した。

【岡山県・上林勝則副知事の発言】10:45~

新見市・野間哲人副市長
新見市・野間哲人副市長

・通勤・通学や、雇用の維持に必要である。特に高校生にとっては、なくてはならない

・芸備線は地域の公共交通の骨格である

・JR西日本には、地域のために引き続き運行してもらいたい

・鉄道をほぼ利用していないことが資料で判明したため、利用しない沿線住民に意識の変更を図り、デスティネーションキャンペーンでの集客を図った。

・成果は確実に表れている。乗客増加は協議会に有益な数字となる。(数字への言及は「次回の再構築協議会で説明」と発言)特急「やくも」新型車両、森の芸術祭などで集客を図っていただきたい。

・「大量輸送に見合っていない」という意見に異議。沿線の共通認識を決めてから議論・分析の必要がある。

【広島県・玉井優子副知事の発言】10:58~

・今年度の経常利益は1466億円。過去に比べて大幅に増加。不動産業でも利益を挙げている。なぜ維持できないのか、JR西日本に説明を求める

・駅周辺を拠点化、鉄道の効果を最大限にすることが必要。

・再構築協議会を協議する3年間の間に、取り組みによる乗客増加などで丁寧な議論を行いたい。

【新見市・野間哲人副市長の発言】11:02~

・新見市はふるくから3線(芸備線・伯備線・新見線)が交差する。サンライズ出雲への接続を考えると、必要不可欠。

・デマンドタクシーなどで利用者は増加している。効果の観察には長期間が必要であり、結論は出せない。

・国に鉄道ネットワーク維持の在り方を示してもらいたい。

・いろんなことを議論するためには、JR西日本がデータを開示する必要がある。

【庄原市・大原直樹副市長の発言】11:10~

・芸備線はダイヤ減便・直通列車で利用者が使いづらい状況にある。

・市民の移動を支え、全国に繋がるネットワークは重要な役割を果たす。

・本来は国土交通省によって、JR西日本が赤字の内部補助を行うことで存続すべき。

・飛躍的な乗客増加は見込めない。大量輸送の価値にとらわれない議論が必要。収支による判断だけでなく、総合的に判断すべき。

・我が国の交通政策をはじめ、地方の活力を維持するために、芸備線への議論を行っていただきたい。

・芸備線は人口減少などに対する価値として、改めて存続していただきたい。

【神田佑亮・呉工業高専教授の意見】

・庄原市出身で、中学生のころから通学に利用している。その観点で発言を行いたい。

・交通の問題は、交通単体ではなく街づくりとして見なければいけない。

・中国道や一般道などが整備されている。行先にどれだけ魅力があるか、目的地に人が移動できるかを検証しなくてはいけない。20年、30年を見据えた議論を。

・国土・県土をどう作っていくのかという議論が、70年代からなされていない。交通にとらわれない議論を。

【国土交通局・中崎剛局長の発言】11:25~

・自治体との連携、コンパクトな街づくりはは有効な手段である。

・3万人ほどが沿線に点在している。人口減少下で、鉄道は観光促進・周辺都市とのつながりの強化につながる。

・共通認識に基づいて、ファクトとデータに基づいて協議を行いたい。

・鉄道ネットワークの維持に関しては、国土交通省によって一定の整備が行われている。

【中国運輸局より】

・再構築協議会はこのあとも、5月中旬、夏。秋や年明け、年度末にも開催される。

【質疑応答】11:31~

質問:岡山県 上坊副知事 再構築協議会開催のスケジュール変更はあるか。議論が打ち切られることはないか。

中国運輸局:議論が真摯に進められている限り、議論の打ち切りはない。スケジュールの変更にも柔軟に応じる。

【中国運輸局・国土交通省の記者会見】12:00~

質問:どのようにして意見をまとめていくのか。

回答:国は中立的な立場を堅持。共通認識を持つためのファクト・データに基づいた議論が必要。国は中立だけでなく、振興策・鉄道の意味も含めて幅広い観点から参与していく。

質問:3年間で合意できるだけの議論ができるか

回答:3年間で結論を出したいが、自治体や住民の意見を伺って、納得感を出す努力をしたい。

質問:議事公開の在り方。一般的な議論の公開について

回答:第1回の議論ではどのような議論をするか、定まっていなかった。(注:媒体への取材案内の時点では「冒頭のみ撮影」だったが、後から協議会公開に変わった)公開については、自治体の幹事会で議論した上で公開していきたい。(注:一部資料はこの記事内にあります)

質問:今後の部会設置は、どのような議論を想定しているか。次回開催はどのような議論をするのか

回答:部会の開催は想定していない。次回は、このあと自治体の幹事会で先に議論。

質問:国は中立的といいながら、予算の拠出は避けられない。今後はどのような関与をしていくのか。

回答:芸備線が多量輸送の手段として役割を果たしていない、と認識している。JR西日本は県境にまたがる複数の路線で経営が悪化しており、見直しが必要と感じている。

質問:

内部補助の関与を国から示してほしい、との意見があった。再構築協議会で見方を示すのか、後日いつぐらい回答するのか。

回答:国は路線の適切な維持をJR西日本に求めている。「特急列車が走る区間」など、再構築協議会入りの条件は、下に画像を張る予定。

質問:

各自治体によって「内部補助」「ネットワークの維持」「鉄道の付加的なメリット」など、意見が分かれた。国はどう対応していくのか。

回答:国としても幅広く議論した上で考えていきたい。

質問:新見市から出た、姫新線なども含めた協議を行うのか。また第3セクター鉄道などの専門家に意見を伺うことで、集客の向上などは考えていないのか。

回答:声を聴く場を設けることは考えている。

質問:再構築協議会の中間報告などはあるのか。

回答:現時点でスケジュールなどは未定。実証事業の取り組みをどう評価するか、方向性は出していきたい。

質問:木次線と一体化した議論はするのか

回答:現時点では未定

質問:全国でどう適用していきたいのか、再構築協議で難しいと考えていることは

回答:存続ありき、廃止ありきではない、真摯な努力で納得されるような結論を形成するのは難しい。再構築協議会の設置も、不安がある中で議論に応じていただいたのはありがたい。

筆者の質問:今回の2県2市は、従来通りの「JRによる鉄道存続」という姿勢を崩さず、自前での資金拠出による存続策(上下分離方式・3セク)もし2県2市からそういった提案があれば、国はすぐに応じることができるか。

回答:仮定の話にはお答えできないが、もしそういったご提案があれば。行司役だけでなく様々な支援・補助を提案して対応させていただく。

質問:なぜ芸備線を最構築協議会第1号に指定したのか。

回答:芸備線はJR西日本のなかで最も不採算であり、他2県にまたがる芸備線は、かなり難しいケースと認識しており、開催させていただいた。

【岡山県副知事:広島県副知事の質疑応答】

質問:J内部補助が可能か、JR西日本の他線区のデータ公開を要求している。なぜ公開の櫃余殃があるのか。

回答:非公開のデータを、まず出すのが重要。そのうえで、なぜJR西日本による内部補助ができないのか、丁寧にご説明いただきたい。(注:すでにJR西日本より、「多量輸送に向いていない」などの説明を受けている。)

質問:これまで通り芸備線をJRに運行してほしいというスタンスは、2市2町で変わりはないか。現実にどのように存続していきたいか

回答:前提を置かずに協議したい。存続を求めているのは共通認識だ。

質問:ローカル線を抱える全国の知事会に働きかけるようなことは、考えていないか

回答:個別での働きかけを行っていく

筆者の質問:全国のローカル線は、只見線(福島県)などのように県・市町村の出資による非復旧費用負担や、運行による経費の支援、予算を出すケースが増えている。いま、乗車促進策ではなく、地元負担による存続は考えていないのか。

回答:(両県とも)仮定の話には答えられない。今後とも乗車促進策を行っていく

質問:これから芸備線に対して、どういった策をとっていくのか

回答:モニタリングなどによるファクトで、芸備線お存続の理由を明確に行っていきたい。。これまでの積み重ねもあるので、潜在需要を掘り起こしていきたい

【JR西日本・広島支社長 岡山支社長の質疑応答】

問:2県2市が提出を要求している各路線のデータ・経営データを公表する予定はあるか

非公開のデータをどのように出すのか

回答:出せないデータもあり、検討していく。議論に関係ないデータは出せない。

質問:「需要に見合ったダイヤになっていない」との声もある。増便などを行う予定はあるか

回答:線路の容量もあり、難しい。

筆者から質問:自治体は「存続のためのファクトと数字を積み上げる」というが、これまでの実証実験で

「高校生22名に通学モニターをお願いして、定着したのは2名」

「イベントで1000人集客したものの、鉄道利用者は100人にもはるか届かない」など、ファクトと数字は相当はっきりしているように見える。

また同じような社会実験の協力を要請された場合、JR西日本は協力を行うのか。

回答:協議のうえ、必要があれば複数回行うこともある。

☆最後に

 今回の協議会では、沿線2県2市の主張はまったく変わらず、抜本的な経営改善よりJR西日本の内部補助を求める方針は、むしろ強硬になっている印象を受けた。なお、各自治体からは「赤字への補助」「上下分離・自治体への出資による存続」という発言は、聞かれなかった。

 次回の再構築協議会も、具体案がないまま進む可能性もあり、今後が懸念される。

〈了〉

ライター(乗り物・モビリティ全般、観光、ご当地グルメ)

鉄道全線完乗・路線バス1800系統乗車・フェリーなど船舶60航路乗船(いずれも国内・202年現在)47都道府県で通勤ラッシュ巻き込まれ&100Km以上ドライブを経験。モードにこだわらず「乗りもの」全般をカバー。 ☆☆ 全国の駅弁・駅そば・ご当地料理を食べ歩き、おうちで再現レシピも作成します(「再現料理人」としてNHK「さし旅」で指原莉乃さんと共演等経験あり)  ☆☆ 香川県高松市出身・兵庫県・大阪府・高知県・東京都・神奈川県などに在住経験あり  ☆☆ 著書「全国オンリーワン路線バスの旅2」(イカロス出版)2022年6月28日発売!

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