JR留萌本線 廃止後の”これから” 代替路線バス&都市間バスの現状 課題は「どうする留萌駅・道の駅」
☆113年の歴史に幕 留萌本線が留萌市から消える
留萌駅(北海道留萌市)~深川駅間を結ぶ「JR留萌本線」のうち、末端部の留萌~石狩沼田間(35・7Km)が2023(令和5)年3月末をもって廃止。残る石狩沼田~深川間も、3年後の2026年3月での廃止が決定しています。
かつては石炭・漁業の拠点として賑わった留萌市も、現在は人口2万人弱と全盛期の4割少々。留萌本線は100円の収入にかかる費用(営業係数)が「2183」(2021年度)と、極端な低迷が続いていました。
そして4月からは、路線バス、都市間バス(高速バス)などが、これまでと同様に留萌への移動を担うことになります。それぞれの変更点と、近年置かれている現状を見てみましょう。
☆鉄道の”次”を担う路線バス・都市間バスの現状
@苦境が続く並行路線バス
路線バス「留萌旭川線」「旭川留萌線」(沿岸バス・道北バス)は、廃止後も変わらず5往復が運行されます。なお、先だって2016年に留萌~増毛間が廃止となった際も、増便はありませんでした。
2020年には10往復から8往復、2022年には8往復から5往復に減少したばかり。コロナ禍前には鉄道・路線バス合わせて20往復近くの定時運行がありましたが、23年4月からは1日5往復と、朝晩の速達便「特急あさひかわ号」(3年間の実証実験運行)のみとなります。
しかし「留萌旭川線」は、鉄道と同様にコロナ禍前から厳しい状況が続いていました。道や国の補助があっても、苦境が続いているそうです。
共同運行を担う沿岸バスも、2022年には「沿線市町村等と協議をしながら路線維持の可否を判断する」とコメント。これまで鉄道存続に割いてきたリソースを、交通手段の”トリアージ”(優先度の決定)”でバス存続に振り向ける必要がありそうです。
またこれまで5時台・6時台に1本ずつあった留萌駅発の上り便は、予約制のタクシーに移管されます。鉄道沿線の中でも留萌と他市町では学区をまたぐため、旭川・深川方面への早朝の通学は3人ほどと、以前から多くありませんでした。
@区間利用が可能!都市間バス(高速バス)
留萌~札幌間は、北海道中央バス「高速るもい号」が1日7往復。
深川経由3・5往復、滝川経由が3往復(上り1本のみ留萌道・留萌大和田ICから札幌直行)ありますが、実は留萌から深川・滝川への区間利用ができるようになっており、高速道路(留萌道)を経由するため快適。ある意味こちらも留萌本線の代役になり得そうです。
@2駅が廃止 沼田町内のバス
ほか、沼田町内で廃止される「真布駅」「恵比島駅」は、国道233号の現道開通後に「留萌旭川線」のバスルートから外れています。こちらは沼田町営バスによってカバーされる見込みです。
一括廃止の予定だった石狩沼田~深川間は、猶予期間として3年間(4月入学の高校生が卒業するまで)存続しますが、すでに減便分を補う「通学バス」の運行があるなど、徐々に“廃止後”の体制に移行しつつあります。
☆近いのに遠い ふたつの“街の核”「留萌駅」「道の駅」の今後
JR留萌駅も、留萌本線とともに23年3月に営業を終了。1967(昭和42)年の落成から46年が経過していることもあり、留萌市は駅舎を解体する方針です。
市内ではほか市役所・中央公民館なども築50年以上が経過、かつ一帯は留萌川の増水による被害の可能性も。老朽化が進む各施設を一体化しつつ、避難所・防災機能を兼ね備えた複合施設の構想は議論の途上にあり、市も道の駅を優先させる意向を示しています。
なお路線バス・都市間バスはもともと駅ロータリーまで入っておらず、100mほど南の「早道通り」沿いに路線バス(沿岸バス)が道路を挟んで1か所づつ、少し離れて都市間バス(北海道中央バス)と、バラバラに待合所が設けられています。
いずれも老朽化が進んでいますが、市議会の動きを見る限り「複合施設に交通拠点を」という動きは具体的になく、あまり活発に検討されていないようです。
そして駅の北東に広がるのが、2021年に開業した「道の駅るもい」と、JR羽幌線(1987年廃止)の敷地を活用した「船場公園」。広大な敷地はうっすら細長い扇形で、かつての隆盛ぶりを窺わせます。
しかし現在、「道の駅るもい」は、子育て世代のための遊戯施設「ちゃいるも」の利用が1日6人程度の日もあるなど、やや苦戦気味。
この敷地と駅は、2016年に廃止された留萌本線・留萌~増毛間の廃線跡で綺麗に分断されており、直線なら300mほどのところ、実質的な距離は倍以上。市街地や住宅街の賑わいを呼び込みづらい状況です。
留萌本線が消える“そのあと”、新しい街の核となる「複合施設(留萌駅)」と「道の駅・船場公園」の移動の改善・連携が課題となるでしょう。広い鉄道用地による分断の改善は、「道の駅るもい」の現状を打開するためにも必要ではないでしょうか。
なお「道の駅るもい」に併設するかたちで、アウトドア用品メーカーの「モンベル」(モンベルアウトドアヴィレッジるもい構想)出店の話も持ち上がっています。
同社と留萌市が描く「モンベルアウトドアヴィレッジるもい構想」は単なるアウトドア用品の販売にとどまらず、観光案内やクライミング体験、宿泊、そして林業・漁業向けの品揃えも。この計画と同様にモンベルが進出した南富良野町(「道の駅南ふらの」併設)の建設費用は約11億円、留萌市では「同程度かそれ以上の金額」と想定しているようです。
☆先手を打つ検討を 鉄道廃止の”そのあと”
留萌市でも、駅跡地への複合施設の検討が始まったのは、廃止決定後の昨年から。「留萌駅跡」「道の駅」は土地も構想も分断されたままです。
JR北海道は不採算路線を各地で抱え、廃止される鉄道の撤去やバス転換費用のために4年間で約240億円を計上。しかし中には直前まで「存続」「廃止」の二極にこだわり、廃止後を見据えず、決定後に燃え尽きるような自治体も。
JR北海道の経営上の負担ともなる交付金を効率よく使うために、鉄道廃止の“そのあと”を先がけて描くことも必要ではないでしょうか。
〈了〉
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