9月に大量廃止の夕鉄バス、「新札幌―新夕張線」はどのような路線か
夕鉄バスを運行する夕張鉄道は、2023年9月末をもって夕張市内と札幌近郊を除くすべてのバス路線は廃止する。廃止対象となる路線は、新札幌駅前を発着する3路線で、栗山駅前を経由して新夕張駅前に向かう3往復と栗山駅前折り返しの4往復、南清水沢のりすたに向かう急行便5往復だ。
夕鉄バスの公式発表によると、バスドライバー不足と利用者の減少が廃止の理由とのことであるが、2023年10月以降は、夕鉄バスは夕張市と市外を結ぶ路線が消滅し、北海道中央バスが運行する高速ゆうばり号3往復のみが夕張市と市外とを結ぶ唯一のバス路線となる。
夕鉄バスの夕張市と市外を結ぶこれらの路線のうち、筆者は2017年12月に新札幌―新夕張線の野幌駅南口―新夕張駅間に乗車したことがあったので、今回はその時の様子を紹介したい。
かつては野幌駅から分岐していた夕張鉄道
夕鉄バスを運行する夕張鉄道は、かつては北海道江別市の野幌駅と夕張市の夕張本町駅の間を結ぶ夕張鉄道線を運行していたが1975年に廃止され、現在はバス専業の会社となっている。その名残か、現在でも野幌駅近くにはバスターミナルを兼ねた夕張鉄道野幌営業所が現在でも営業している。
新札幌駅前から新夕張駅前を結ぶバス路線は、この夕張鉄道線の代替路線で1日3往復が運行されている。新札幌駅前から野幌駅付近までは国道12号線を走行し、野幌駅南口バス停から夕張市内に至る区間ではほぼ旧夕張鉄道線のルートに沿うような形でバス路線が設定されている。
筆者が、区間快速いしかりライナーで札幌駅より野幌駅に到着したのは10時51分のこと。野幌駅南口から新夕張駅前へ向かうバスの始発便は11時07分発とやや遅い。定刻通りであれば、新夕張駅前への到着時刻は13時31分で、野幌駅南口―新夕張駅前間の所要時間は2時間24分にも及ぶ。
野幌駅を降り立つと、天気は雪で辺りにはしんしんと雪が降り積っている状態で、こうした中、吹きさらしのバス停で新さっぽろ駅前からやってくるバスを待つことになった。天候が悪かったことからバスの遅延を心配したものバスはほぼ定刻通りに到着した。
わずかな乗客を乗せて発車
野幌駅南口からバスに乗車したのは筆者を含め4名。発車時点での乗客数は、すでに新さっぽろ方面から乗車していた乗客を併せて8名であったが、間もなくして到着した野幌バスターミナルでは新さっぽろ方面からの乗客4名が下車し2名が乗車。野幌駅南口から夕張方面に向かう乗客は筆者を含め6名となった。バスの乗客層は高齢のご婦人が大半だ。
江別市野幌から夕張市までの距離は約50km程度で、クルマであれば一般道経由でも1時間程度でアクセスが可能である。そうしたことからバスの利用者は、クルマの運転ができないいわゆる交通弱者に限られてしまっている印象だ。
バスは、江別駅前でさらに数名の乗客を拾うが、江別市街地の終端部であるあけぼの団地までの間に大半の乗客が下車してしまい、あけぼの団地を超えて夕張方面に向かう乗客は筆者を含めて2名のみとなってしまった。
鉄道存続も模索された野幌―栗山間
江別市は約12万人の人口を擁し旧夕張鉄道線沿線の中では最大の人口を誇る。しかし、江別市の市街地を抜けてしまうとそこには広大な雪原が広がる地となってしまい、その後、南幌町と長沼町北長沼地区の小規模な市街地を2カ所通る。
そして、野幌駅南口を発車してバスはおよそ1時間で室蘭本線の栗山駅前へ到着。途中の南幌で乗客1名が下車してしまい、栗山駅前には筆者1名で到着した。栗山駅は夕張鉄道線現役時代も国鉄線との接続駅であり、現在でも栗山駅からは苫小牧方面と岩見沢方面への乗り換えが可能である。
栗山駅前では、バスが数分間停車をするということであったことから、この停車時間を利用して筆者は運転士さんからバス回数券を購入。1100円分の金額式回数券が990円で販売されていた。なお、野幌駅南口―新夕張駅前間のバス運賃は1800円である。
夕張鉄道が廃止された1975年当時、札幌都市圏の拡大が著しかったことから、野幌―栗山間だけでも鉄道として存続できないかという声があり、沿線自治体の南幌町では役場内に鉄道存続のための部署まで設けられて存続の道を模索していたが、結果として実現しなかった。野幌―栗山間の距離は約20kmで野幌―札幌間の距離と同等だ。野幌―札幌間はJRの普通列車が20分弱で結んでいることから、野幌―栗山間を鉄道として存続させ札幌に直結できる路線にすれば、沿線に大きな発展をもたらせたことは想像に難くない。
今も残る旧夕張鉄道新二股駅舎
栗山駅からは、また高齢のご婦人をこまめに拾いながらバスは夕張へと向かって走り出す。旧夕張鉄道線の跡地は、野幌―栗山間はそのほとんどが空知南部広域農道「きらら街道」へと姿を変えてしまったが、栗山から夕張市内にかけては鉄道の路盤がそのままサイクリングロードに転用されているのは対象的で、バスの車窓からは舗装された廃線跡の路盤が時折垣間見える。途中、現存している旧夕張鉄道新二股駅の駅舎も車窓から眺めることができた。
そしてバスは二股峠へと差し掛かる。夕張市は、明治時代、標高の比較的高い山中に石炭採掘を目的として当時の国策によって建設された都市であった。夕張市へ向かう二股峠は一方的な上り坂となっており、夕張鉄道線の現役時代は、峠の中腹に錦沢駅を設置し三段スイッチバック方式によりこの峠を克服し、夕張炭鉱から小樽港へ向かう石炭の鉄道輸送を支えていた。
夕張市内の乗客は敬老パスがメイン
峠を登り切りやや長い夕張トンネルを抜けると、原野が広がるそれまでの風景や嘘のようにいきなり市街地の中へとバスは入った。夕張市内に入るとバスは、夕鉄本社前ターミナルに到着。夕張市内では敬老パスを持っているご婦人をこまめに拾いながら夕張市内を循環。その後、スーパーマーケットのある南清水沢駅前で大半の乗客を降ろした後、バスはほぼ定刻通りの13時31分、終点の新夕張駅前へ到着した。
(了)