JR北海道、2023年度決算発表 33億円の黒字決算だが、国補助金など差し引くと巨額赤字は変わらず
JR北海道は2024年5月8日、2023年度決算を発表した。グループ売上高は1,477億円で、うち鉄道事業売上高が698億円。それに対して営業経費が1,977億円かかり、本業の儲けを示す営業利益は499億円の赤字決算であった。これに対して、営業外収益で経営安定基金の運用益315億円と、特別利益で国からの補助金249億円などを計上し、最終的な当期純利益は33億円となった。
鉄道事業売上高は前年の585億円から698億円に100億円以上伸ばし、営業費用は前年並みであったことから、単年度の赤字額を前年の572億円から499億円に圧縮している。事業全体でみれば、鉄道事業単体の赤字額が563億円に対して、小売業、不動産賃貸業、ホテル業、その他で64億円の利益を確保し、最終的にグループ全体の赤字額を499億円に圧縮している。なお、コロナ前の2018年度決算では、鉄道事業の売上高818億円に対し赤字額は550億円であった。
JR北海道は、2018年度以降、赤線区の廃止を進めてきているが、全体の事業構造からみれば、赤線区の赤字額はそれほど大きな額とは言えず、業績改善に与える影響は軽微である。なお、2022年度の線区別収支では、赤字額が一番大きいのは北海道新幹線の129億円、次いで札幌近郊路線の72億円だった。JR北海道は、そもそも1987年の国鉄改革時に、年間500億円の赤字額を適正な赤字額として、当時の長期金利約7%から逆算して設定された経営安定基金の運用益により国鉄から引き継いだ路線を全線維持できるように制度設計された会社であったが、バブル経済崩壊後の国の低金利政策により、そのスキームは1990年代後半には崩壊していた。
JR北海道が、鉄道事業者として本来行うべきことは、赤線区の切り捨てではなく国鉄から引き継いだ地域の重要な社会インフラである鉄道を鍛え上げることで利用者を増やし、地域経済の発展に貢献することではないのか。そうしたスキームがすでに崩壊したのであれば、場当たり的なコスト削減の対策ではなく、根本の問題である国に対して制度の崩壊を声高に叫び、鉄道事業の利便性向上のために投資に必要な予算を確保し、利用者に寄り添ったサービス展開を行うことで北海道経済の発展に寄与することが本来の使命ではないのだろうか。
(了)