アメリカ人は老後資金はいくら必要だと考えているのか? 100万ドルで約13年しか生活できない州も
参議院選挙を目前に、「老後2000万円問題」が紛糾している日本。
公的年金受給額によっては、老後に必要な資金は2000万円どころではなく、6000万円という指摘もされている。
ところで、アメリカ人は老後にはいくら必要だと考えているのだろうか?
老後資金には170万ドル必要
アメリカでは、老後の生活のために、401(k)(確定拠出年金と呼ばれる年金で、企業や加入者が毎月一定額の掛金を拠出して運用する)という年金プランに老後資金を積み立てている人が多い。
米大手証券会社チャールズ・シュワブが、この年金プランの加入者1000人(25〜70歳)を対象に行なった調査によると、加入者は平均170万ドル(約1億8000万円)の老後資金が必要だと考えていることがわかった。
日本の場合、無職の高齢2人暮らし世帯の支出は月平均26万5000円で、65〜95歳の30年間では総額9540万円の老後資金が必要となる。アメリカ人は日本人の倍近くの老後資金を必要としている計算になる。
細かくみると、4%の401(k)加入者が10万ドル(約1080万円)以下の老後資金しか必要としていない一方、1000万ドル(約10億8000万円)以上の老後資金を必要としている加入者も1%いる。33%の加入者が100〜300万ドル(約1億800万円〜3億2400万円)の老後資金を必要としていることがわかった。
しかし、多くのアメリカ人が、老後資金が170万ドルに達するような積み立てを行なっていない。
51%の401(k)加入者が、401(k)にサラリーの10%以下を積み立てているが、アメリカの2017年の平均世帯年収は61372ドル。10%を401(k)に積み立てた場合、その額は年6137.20ドル。7%の利率で40年間、401(k)に積み立てた場合、約130万ドルに膨らむ。大金だが、それでも、彼らが必要だと考えている170万ドルに達しないのだ。
ちなみに、調査対象になった1000人のアメリカ人は、2018年に、401(k)に平均8788ドルを積み立てていた。リスクをとって株などに投資すれば、170万ドルという老後資金の目標額には到達できるかもしれないとチャールズ・シュワブは分析している。
100万ドルで何年老後の生活が送れるのか?
しかし、例えば、100万ドルの老後資金で、何年間生活できるのだろうか? 居住する場所によっても、それは大きく異なる。2017年、HowMuchが行なった試算によると、65歳で引退後、100万ドルを使い果たすのにかかる時間が最も短いのはハワイ州で13年1ヶ月、最も長いのはミシシッピ州で25年6ヶ月であることがわかった。老後の生活費にほぼ倍近い差があるわけだ。
ちなみに、100万ドルで長く生活できる州は、ミシシッピ州25年6ヶ月、アーカンソー州25年、テネシー州24年5ヶ月、カンサス州24年5ヶ月、オクラホマ州24年4ヶ月。
100万ドルで長く生活できない州は、最も短いハワイ州の13年1ヶ月を筆頭に、コロンビア特別区14年2ヶ月、カリフォルニア州15年、オレゴン州16年7ヶ月、ニューヨーク州16年7ヶ月。
23%が働き続けると回答
老後資金で長く生活できない場合、当然、働き続けなければならない。
実際、引退せずに働き続ける覚悟をしているアメリカ人は多い。The Associated Press-NORC Center for Public Affairs Researchの調査では、労働者の23%が、50歳以上の場合は10人に2人が、引退せずに働き続けると答えている。また、4人に1人が、65歳をすぎても働き続けると回答している。実際、この6月、65歳以上の5人に1人が仕事をしたか、職を探していたという。“3分の1の労働者が経済的に老後の準備ができていない”(同調査)からだ。
十分な老後資金を準備できない限り、65歳以降も働き続け、老後資金に合わせて居住場所を考える。老後の生活を成り立たせる策は、日本もアメリカも同じようだ。
(参考記事)
What's the magic number for retirement savings? $1.7 million, according to this study
Nearly one-quarter of Americans don't plan to retire, poll says
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