巣鴨で愛され100余年「喜福堂」さんのあんぱんは、和菓子職人の伝統と魂を未来へ紡ぐロングセラー
ここで質問です。
あんぱんのあんこは、粒餡派でしょうか?それともこし餡派でしょうか?タイトルから「皮むき小豆」派です!とお答えいただいた方は、おそらく今回の名店のあんぱんをご存知なのではないでしょうか?
巣鴨地蔵通り商店街、通称・おばあちゃんの原宿にお店を構える「喜福堂」さんは、1916年創業の老舗パン屋さん。木目とアースカラーが温かなデザインからは想像もつきませんが、実は関東大震災を機に巣鴨へ移転し、そこから歴史を紡いできた老舗。そして名物でもあるあんぱんに使用されるあんこは、全てお店で直炊きという素晴らしい拘りを持つお店です。
実はこちらの喜福堂さん、二代目の方が優れた和菓子職人さんとしても活躍しており、その手腕を遺憾なく発揮し、製法を令和の今に至るまで受け継ぐ「和菓子職人のあんこ」をいただけるお店。
一般的な粒餡、こし餡も勿論魅力的なのですが、パン屋さんでは聞きなれないあんこもずらり。今回はその中から「皮むき小豆」と「しゅまり小豆」をご紹介。
「皮むき小豆」は、薄墨のような上品且つ贅沢な色味。皮むき餡特有の仄かに青みがかった色合いは、一般的なこしあんよりもより一層手をかけている証拠。茹でる前の小豆の皮を剥いてから加熱し、更に漉して皮を除去していくのです。その工程を知っていると、何ともありがたい気持ちになります。
舌の上を揺蕩うような皮むきあんは、酵母のふくよかな芳香を纏いつつも小豆の香りを底わないような意外と強かな仕上がりに。咀嚼するたびにさらさらと口の中をいったりきたりするたっぷりの皮むき餡を思い切り頬張ることができるなんて…パンもふかふかではなくしっとりというところが親和性の高いポイント。
一般的に、黒胡麻は白胡麻よりもエッジのきいた香ばしさや仄かなしぶみが特徴の胡麻です。さらに、喜福堂さんのあんぱんには通常よりも多く胡麻が塗されているのですが、そこを両手で押しのけるように「しゅまり」小豆の粒あんの風味、甘味、そして旨味が飛び込んでくるではありませんか。
酵母の香りに後押しされ、旨味や甘味、ほんのわずかな野性味のある渋みが一度に押し寄せ、あんぱんだからこその幅のある味わいで、口の中が満たされます。砂糖の甘味をも味方につけた豊かなあんぱんはリピーターさんが多いのも納得です。
看板商品の粒あんぱんを含め、こうしたちょっとリッチな小豆のあんぱん、栗やさつまいもなどを練り込んだ季節のあんぱんなど、非常に多彩なあんぱんを食べ比べできる喜福堂さん。また、イチオシというクリームパンやりんご入り、メロンパンなど、パン屋さんといえば!な商品から総菜パン、サンドイッチも揃います。
初代が築き上げた土台、和菓子職人であったという二代目の製餡技術、その餡子に合うパン生地を生み出した三代目、そして令和を越えて次の時代をも視野に捉えた四代目の柔軟な発想。巣鴨の人たちだけではなく、沢山のパン好き、あんこ好きの心をとらえて離さない温かい味わいをぜひ一度。