シャオミのワイヤレスイヤホンから見えるそのすごさとは市場投下のタイミングの見極め力である
シャオミ(Xiaomi、小米科技)は、4兆円を超える売上を持つ、巨大なグローバル企業でありながら、まだまだ日本ではその規模と比較すると認知が進んでいない企業のひとつであると思います。
そもそもはスマートフォンメーカーとして始まったシャオミですが、今では総合家電メーカーどころか、もっと広いジャンルの製品を扱う企業となっています。実際にシャオミの製品を筆者も使っていますし、使っている人たちに聞いても、シャオミという企業に対するイメージはだいたいアップルと無印良品を足して二で割った感じという声が聞こえてくるような企業なのです。
つまり、スマホを中心として、ウェアラブル端末やIoTデバイスなどだけではなく、ドライバーとかリュックとかまで含めたデジタルにとどまらない生活をカバーするような企業が今のシャオミです。
そのシャオミの製品の特長は価格が安い上に機能も高く、デザイン性にも優れているところにあります。その理由はシャオミがはっきり言っているようにハードウェアそのものでは、ほぼ利益が出なくていいとわりきっている経営戦略にあります。つまり、安かろう悪かろうではなく、シャオミの製品安いのには理由がはっきりあるということです。
ただ、値段や性能だけにシャオミの製品のすごさがあるのではありません。いくつかあるシャオミのすごさの中でも、私が特にすごいと思っているのは、その製品をいつどういう内容で市場に投下するかという見極め力です。
今回、シャオミのワイヤレスイヤホンを3機種モニターすることができたので、その観点から、これらの製品を見ていきたいと思います。
Redmi Buds 3 Pro(発売2021年9月、価格6,990円)
シャオミのワイヤレスイヤホンの中ではほぼフル機能。デザインも他では見ないものとなっており、機能面でもアクティブノイズキャンセリングまで搭載している。そのため音質を損なうことなく、外部音を調整することも実現しています。
- アクティブノイズキャンセリング
- 3マイク通話
- 複数デバイス接続
- ワイヤレス充電
- 最大28時間再生
- IPX4 防水
Redmi Buds 3(発売2021年12月、価格5,490円)
一目でなにを目指して作られたのかがわかるデザイン。しかし、ノイズキャンセルを搭載してのこの価格は驚異的。しかも安定した接続と音質を持っています。
- ノイズキャンセル
- デュアルマイク通話
- タッチ操作
- 低遅延ゲームモード
- 最大20時間再生
- IP54 防塵防水
Redmi Buds 3 Lite(発売2022年2月、価格3,990円)
アンドロイド勢では一般的な丸い小型タイプ。しかしこのタイプの小型のものであっても一般的には6g程度となっており、約4gという小ささと軽さは圧倒的。毎日使っていると、軽さも性能の一部であるということを痛感させられる。本体が小さいのでケースも小さく、これも大きな優位点。もちろん過不足のない音質。
- Redmi Budsシリーズ、最軽量の4.2gのイヤホン
- タッチ操作
- 低遅延ゲームモード
- 最大18時間再生
- IP54 防塵防水
これらのラインナップを見ていくと、シャオミのワイヤレスイヤホンはそのジャンルの最先端ではないかもしれませんが、ある程度成熟したジャンルで、圧倒的な価格と性能で市場を席捲することを宿命づけられている製品ばかりです。
というのも、スマホやその重要な周辺機器であるワイヤレスイヤホンは、もう一部のお金を持っている層が持っているようなものでありません。それは普段の生活でもそうですし、今まさに見えているように戦争という極限状態においても、人々に情報を届けるツールとしてなくてはならないものです。つまり、誰もが普通に使えるものであることが大切です。
その意味において、シャオミがどの製品をどのタイミングで投下するのか?してきたのか?ということはひとつの指標になります。それはその製品がジャンル化され、技術もそれなりにこなれ、かつ大量に作ることでコストを抑えられるタイミングであるということです。
特定の技術に優れた製品を作ること、もしくは特定のユーザーに向けた製品を作ることに長けた企業は意外とあります。
しかし、誰もが普通に使える製品をちょうどいいタイミングで大量に供給できる企業というのは、意外とありそうでありません。
- そのジャンルで必要とされている機能が網羅されている
- デザイン面でも優れている
- 大量に生産できる
というのも、上記のようなことがバランスよくできていないと、当たり前ですが、今時のユーザーに受け入れられませんから。そして、そこに関して、シャオミほどうまい企業はそうそうありませんし、誰もが普通に使えるものを提供することには、多くの人々の生活水準を引き上げるという意味があるのです(戦禍の中にあるウクライナでのスマホのトップシェアはシャオミ)。
スマホで使うワイヤレスイヤホンという市場を大きく開拓したのは、言うまでもなくアップルのAirPodsです。もちろんAirPods以前にも左右独立したワイヤレスイヤホンは存在していましたが、スマホと連動して、かつ市場を大きく広げたのはアップルです。ただし、その値段は2万円から3万円ぐらいの価格帯です。
次にアンドロイドで中心となっているいわゆるうどんタイプではないBudsと呼ばれることが多いタイプを開拓していったのがサムスンなどのアンドロイドスマホメーカーです。そして、その値段は1万円から2万円ぐらいの価格帯です。
さらにワイヤレスイヤホンというのは何も音楽を聴くためだけにある製品ではありません。音楽だけでなく、電話やビデオ会議などでの通話、環境音とのバランス、そしてなによりも毎日使うことができるための使い勝手のよさが求められる製品です。
だからこそ、シャオミのワイヤレスイヤホンはさらに安い3000円から1万円以下でラインナップを揃えているのでしょう。誰もが普通に使えるために、まず壁となるのは価格ですから。
ワイヤレスイヤホンはスマホがけん引し、かつ今のコロナ禍という生活の中で、さらに次の段階に進もうとしている製品です。
ソニーはすでに穴の開いたワイヤレスイヤホンという新機軸を出してきていますし、シャオミもさらに次の製品が登場しています。
このXiaomi Buds 3T Proは24bit/96kHzというHDオーディオに対応しながら、やはり同等品よりもはるかに安い価格で提供されています。
そして、スマホの音楽再生では主流となっているストリーミングサービスでは、いよいよHDレベルの音質の配信が常識となっていっています。そこにも、シャオミはちょうど製品を合わせて投入しているのだと思われます。このタイミングの見極め、ホントお見事です。
製品を見るときに、われわれは機能や価格ばかりを見てしまいがちです。でも、たまにはその製品のうらにある企業の姿勢やその製品が世に出るために必要な様々な要素について考えてみるのも、その製品を深く理解する糸口になるのではないかと思います。