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観客上限100%で幕開けの名古屋場所 熊ヶ谷親方の注目は同部屋・幕内最年長の玉鷲「金星に期待」

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
今年度から名古屋場所担当となった熊ヶ谷親方(写真:日本相撲協会提供)

名古屋に夏がやってきた。7月10日に初日を迎えた名古屋場所は、およそ2年ぶりに観客の制限を設けずに行われている。初日は多くの観客でにぎわい、活気にあふれていた。今年度から名古屋場所担当となった熊ヶ谷親方(元幕内・玉飛鳥)は、ご当地・名古屋の出身だ。慣れない業務に大変な日々だというが、今場所はどんな工夫があるのだろうか。話を伺った。

名古屋場所ならではの展示とは

会場の入口に近づくと、何台ものキッチンカーが並び、その前にはテント型の飲食スペースが設けられている。キッチンカーの導入は、名古屋では初の試みだ。

「再入場できますので、お昼時に一度外に出て、キッチンカーまでご飯を買いに行くこともできます。せっかくお客さんがフルで入れる久しぶりの本場所なので、感染対策は十分とりながらも、さまざまな形で喜んでいただこうと思い、こうした工夫をしました」

さらに、コロナ前から名古屋場所を担当している岩友親方(元幕内・木村山)たっての希望で、力士や親方による七夕の短冊展示を復活させた。これにはお客さんも大喜び。多くの人が足を止め、力士たちが思い思いに込めた七夕の願いを読んで、記念写真を撮るなどしていた。

会場に飾られた七夕の短冊(写真:筆者撮影)
会場に飾られた七夕の短冊(写真:筆者撮影)

「うちわやネッククーラーなど、暑い名古屋場所ならではの涼をとるグッズなども多数展開しています。もちろん、主役は土俵ですが、せっかく足を運んでいただいているお客さんには、大相撲を目一杯楽しんでいただきたいですね」

熊ヶ谷親方の語る場所の見どころ

熊ヶ谷親方が「主役は土俵」と言うように、今場所も見どころが満載だ。照ノ富士は、横綱として初めて名古屋の土俵に立つ。長野出身“準・ご当所”ともいえる御嶽海も、大関として初の名古屋場所に挑んでいる。

親方が思う今場所の見どころはどんなところだろうか。

「やはり、横綱・大関と、上位陣に引っ張っていってもらいたいですね。御嶽海と正代はカド番ですが、やっぱり優勝争いに絡んでほしい。そこに、隆の勝、若隆景、阿炎、豊昇龍といった若い三役の力士たちがどこまで食らいついていけるか。注目です」

片男波部屋に所属する熊ヶ谷親方。やはり同部屋で幕内最年長のベテラン・玉鷲には、強い思い入れをもって見ているという。

「いつも部屋で見ていますからね、どうしても応援に力が入ります。特に、ここ3場所連続で金星を取っていますので、今場所も期待していますよ」

その玉鷲は初日、先場所大活躍し敢闘賞を獲得した大栄翔と対戦。その突き押しを問題にせず、最後ははたき込んで勝利。今場所も土俵を沸かせてくれるだろう。

初日から波乱の展開⁉

初日は、御嶽海以外の横綱・大関が黒星スタートとなってしまった。しかし、結びで横綱を下した阿炎は、この白星で勢いづいて、調子を上げるかもしれない。優勝候補筆頭ともいえる横綱に土がついたことで、早くも読めない展開になりそうだ。

運営にさまざまな工夫を凝らすも、土俵が一番と語る熊ヶ谷親方。「初めて見に来る方もいるでしょう。所作や土俵入りといった文化的な部分ももちろん、力士がぶつかり合う音など、テレビでは伝えきれない生観戦のよさを、存分に味わって楽しんでもらいたいです」と、とびっきりの笑顔で話してくれた。

波乱の幕開けとなった名古屋場所。今場所の土俵を制する者は誰か。暑く熱い夏は、まだ始まったばかりだ。

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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