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難しい東京の天気予報 最高気温と最低気温がほぼ同じで雪はぎりぎり

饒村曜気象予報士
大雪の住宅街(写真:アフロ)

真冬並みの強い寒気

 真冬並みの強い寒気が南下し、北日本では12月上旬としては記録的な大雪となっています。

 山形県大蔵村肘折では、今シーズンで全国初の積雪1メートル超えとなりました。

 平野部で雪となる目安が、上空約1500メートルの気温が氷点下6度です。

 12月6日(金)朝には、この氷点下6度線が関東北部から九州北部まで南下しました(図1)。

図1 上空約1500メートルの気温(12月6日6時)
図1 上空約1500メートルの気温(12月6日6時)

 このため、北陸の富山市や金沢市、山陰の鳥取市や松江市だけでなく、関東の水戸市でも初雪を観測しました。

 水戸地方気象台では、4時57分から5時18分に感雨計で降水現象があるのを観測し、天気判別のプログラムで、「みぞれ」と判定されました。

 「みぞれ」は雪混じりの雨のことですので、これをもって初雪としたわけです(今冬から水戸は無人観測となりました)。

 ただ、水戸の降水量は0.5ミリに達しませんでした。

 日本上空約1500メートルの氷点下6度線は、7日(土)朝まではほぼ同じ位置にありますが、その後北上して7日(土)夕方には津軽海峡に達する見込みです。

 広い範囲で、朝方に雪で降っても、夕方には雨で降る可能性があるという気温予想です。

 これに加えて、降水現象そのものがあるかどうかという予報が加わります。

 12月7日9時の予想天気図では、日本の南海上に停滞前線があり、関東の南海上に低気圧が新たに発生するという予報です(図2)。

図2 予想天気図(12月7日9時の予想)
図2 予想天気図(12月7日9時の予想)

 関東南岸に発生する低気圧と日本南岸にある前線に伴う雲域の北上が弱く、現段階の予報では、朝の段階では関東にかかっていない見込みです。

 雲域が関東にかかるのは上空約1500メートルの氷点下6度の線が北上してからで、降水現象があるとしても、雪ではなく雨と考えてられます(図3)。

図3 雨と風の分布予報(12月7日9時)
図3 雨と風の分布予報(12月7日9時)

 ただ、そもそも降水があるのかどうかも微妙です。

コロコロ変わる東京の天気予報

 12月7日(土) の東京都心の天気予報は、「曇り」「雨」「雨または雪」「雪または雨」と発表のたびにコロコロと変わっています。

 これは、本州南海上の低気圧や前線に伴う雲域の北上がどこまでなのか、その程度の予報が難しいことに加え、南下している寒気の動向によっては、雨か雪かが変わります。

 降水現象があるのかどうかが微妙、降ったとして、雨になるのか雪になるのかも微妙ですので、土曜日の東京の天気予報に行いては非常に難しい予報です。

 このため、気象予報士が苦労して予報をし、解説をしていました。

【追記(12月7日10時)】

 横浜では、12月7日3時半過ぎから、「みぞれ」を観測しましたので、これが初雪となりました。横浜も、水戸と同じく、今冬から人間の目視観測を廃止し、無人観測となっていますので、プログラムによる判定です。

東京の気温の日変化

 あすの天気予報については、多くの人の生活リズムに合わせ、最低気温は、「あすの朝の最低気温」、最高気温は「あす日中の最高気温」を発表しています。

 多くの日は、一日の最低気温が明け方に、一日の最高気温が昼過ぎに観測されますので、事実上「あすの最低気温」、「あすの最高気温」と同じです。

 しかし、12月7日(土)の東京のように、例外があります(図4)。

図4 東京の気温変化(12月6日以降はイメージ)
図4 東京の気温変化(12月6日以降はイメージ)

 時系列予報は、最新のものをお使いください

 12月4日(水)、5日(木)、6日(金)と、最高気温が徐々に低くなっていますが、いずれの日も最低気温が明け方に、最高気温が昼過ぎに観測されています。

 しかし、7日(土)は、未明から気温が下がりはじめ、日中が一番低くなるという気温変化のイメージです。

 下層寒気の流入に加え、分厚い雲で日射がないために、このようなことがおきると考えられます。

 最高気温は日付けが変わる頃に観測され、最低気温は日中観測されます。

 そして、東京周辺では、「あすの最低気温」、「あす日中の最高気温」はともに6時前後の気温となる可能性があり、両者はほとんど同じ値です(図5)。

図5 関東の県庁所在地の最高気温(左)と最低気温(右)の予報(ウェザーマップ発表)
図5 関東の県庁所在地の最高気温(左)と最低気温(右)の予報(ウェザーマップ発表)

 特異な気温変化をする7日(土)ですが、8日(日)以降は多くの日のように、日中には気温があがるという日変化をします。

図1、図3、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図4の出典:ウエザーマップ資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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