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納期の変化で振り返る「iPhone 14 Pro」供給不足問題

山口健太ITジャーナリスト
iPhone 14 Pro(筆者撮影)

アップルの最新スマホ「iPhone 14 Pro」は、2022年の年末になっても在庫がないという異例の状況が続いていたものの、ようやく改善の兆しが見えてきました。

いったい何が起きていたのか、これまでの経緯を納期の変化から振り返ってみます。

iPhone 14 Proの納期はどう変わったか

新型iPhoneの発売直後には毎年のように争奪戦が起きています。とにかく発売日に手に入れたい人に加えて、プレミア価格を狙った「転売」目的もあるでしょう。

それでも、1〜2か月もすれば落ち着き、年末商戦に向けて在庫は潤沢になります。そしてアップルは10〜12月期に1年で最大の売上を記録する、というのが毎年のパターンでした。

2022年の新モデルの中でも、「iPhone 14」と「iPhone 14 Plus」については比較的すぐに入手が容易になりました。

ところが人気の高い「iPhone 14 Pro」と「iPhone 14 Pro Max」については、しばらく経っても2〜3週間待ちの状況が続くことになります。

iPhone 14 Proの代表的なモデルとして、新色の「ディープパープル」、容量が256GBのモデルについて、2022年9月23日から10月31日までの納期の変化を示したのが以下のグラフです。

9月23日から10月31日までの推移(アップルのWebサイトより、筆者作成)
9月23日から10月31日までの推移(アップルのWebサイトより、筆者作成)

この日数とは、アップルのWebサイトに表示される配送予定日のうち、最も早い日までを数えたものです。発売後、しばらくは配送まで「25日」前後かかる状態が続きました。

9月後半には買取価格が高騰。アップル直販価格で税込16万4800円のこのモデルを、一時は25万円台で買い取る業者が現れたことで話題になりました。

しかし10月14日になると、日数は「14日」に短縮されます。通常であれば需給が落ち着き、年末に向けて日数は短くなっていくかと思われました。

ところが10月26日には再び納期が「22日」に伸び、その後は25日前後で安定してしまいます。この頃、iPhoneの工場がある中国の鄭州市において新型コロナによるロックダウンが実施されたと報じられています。

以下は、11月1日から11月30日までのグラフです。

11月1日から11月30日までの推移(アップルのWebサイトより、筆者作成)
11月1日から11月30日までの推移(アップルのWebサイトより、筆者作成)

供給に不安の声が高まる中、11月6日にアップルはプレスリリースを発表。「出荷台数は当初の予想を下回る見込みであり、お客様のお手元に届くまでの待ち時間が長くなることが予想されます」と、泣きを入れる事態になりました。

アップルが供給状況についてプレスリリースを出す事態に(アップルのWebサイトより)
アップルが供給状況についてプレスリリースを出す事態に(アップルのWebサイトより)

その後、日数は11月8日に「30日」、11月18日には「39日」と伸びていきます。中国では抗議デモが広がり、iPhoneどころではない状況になります。そして12月に入り、中国政府はコロナ対策の方針転換を発表するに至ります。

以下は、12月1日から2023年1月4日までのグラフです。

12月1日から2023年1月4日までの推移(アップルのWebサイトより、筆者作成)
12月1日から2023年1月4日までの推移(アップルのWebサイトより、筆者作成)

これにより工場の再開が期待されたものの、日数は12月8日に「40日」となった後、12月後半まで「31日」で横ばいになります。コロナ対策の緩和により感染が拡大したことで、再び生産が困難な状況に陥ったとみられます。

状況に変化があったのが12月31日で、日数は「19日」に短くなります。鄭州市の工場では稼働率がほぼ元に戻ったことが報じられます。そして1月4日には「9日」となり、これまでで最も日数が短くなりました。

1月4日現在、配送までの日数は最短で「9日」(Apple Storeのアプリより)
1月4日現在、配送までの日数は最短で「9日」(Apple Storeのアプリより)

2022年9月23日から2023年1月4日まで、全体の推移を示したのが以下のグラフです。

2022年9月23日から2023年1月4日までの推移(アップルのWebサイトより、筆者作成)
2022年9月23日から2023年1月4日までの推移(アップルのWebサイトより、筆者作成)

1月末の決算に注目か

コロナ禍でのアップルは、iPadやMacBook Proの供給不足に見舞われながらも、大黒柱のiPhoneについては目立ったトラブルがありませんでした。

しかし2022年、最も売上を期待できる時期に、最も人気のシリーズの供給不足を招いたことになります。アップルの株価は下落が続いており、1月3日には時価総額が2兆ドルを割り込んだことが報じられました。

一連の騒動では、iPhoneの生産の大部分を中国に依存していることも注目を浴びました。これまではアップルの成功を支えてきた要素の1つといえますが、今回はそれが裏目に出た印象です。

今後は数年をかけて、インドやベトナムに分散していくとみられます。これらの国では単にiPhoneを作るだけでなく、経済成長によってiPhoneの需要が伸びることも期待されています。まずは1月末に発表予定の10-12月期の決算に注目といえるでしょう。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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