北欧デザインに起きている新しい変化とは
5~15日、北欧フィンランドの首都ではヘルシンキ・デザイン・ウィークが開催され、北欧各国の最新デザインが展示、今後の業界の行く末が検討された。
毎年230以上のイベントが期間中に市内各地で開催される。
フィンランドを中心に、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、アイスランドの北欧諸国の最新デザインが発表された。
プログラムを見て驚いたのは、地球環境や労働環境に配慮したデザイン業界の未来を考える企画の多さだった。
以前紹介した「Lovia」は、ごみの価値を問いなおす展示をしていた。
北欧では、環境や気候変動問題に対する市民の関心が高い傾向にある。
「北欧デザイン」の新要素は、サステイナブルであることだ。
商品を増産し続け、消費社会が続くことは必ずしも環境に良いとはいえないため、デザインやファッション業界は大きな転換を求められている。
このようなデザイン大型企画では業界関係者ばかりが集まりやすいのだが、一般市民の姿も多く、現地でのデザインに対する関心の高さが伝わってきた。
本会場の建物では5階建ての 65部屋が全て展示室となり、まるでデザイン博物館のようだった。
今、業界で起きている変化を主催者のプログラム責任者であるAnni Korkman氏に聞いた。
「フィンランドのデザイン業界での主な変化といえば、オブジェ中心だったデザインから、大規模なデザイン思考への移行です。気候変動対策や都市開発を、より良い方向へと進める手助けとなるのがデザインです」
「世界的にみて、フィンランドの業界が注目を浴びる特徴といえば、50~60年代の巨匠たちの存在です。アルヴァ・アールト、タピオ・ヴィルカラ、ナニー・スティル、アルミ・ラティアたちが築き上げてきた美意識が、世界の変化に伴い、再定義されるという素晴らしい時代を今迎えています」
数多くのトークショーの中で、「もうこれ以上の商品は、地球上にいらない」という考えにどう思うかという問いもあった。新しい解決策を模索中の時、デザインは道しるべとなるものだ。すぐに捨てることになる安い商品ではなく、長期的に大事に使いたいと思う商品が、これからより必要とされてくる。
サステイナブルな未来社会へ向けて、デザインが今こそ必要とされてくるというのが、イベントが提示した答えだった。
Photo&Text: Asaki Abumi
写真・文:あさきあぶみ