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サイ・ヤング賞2度の投手を引き留められなかった球団の「プランB」はサイ・ヤング賞3度の投手なのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジャスティン・バーランダー Oct 4, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今オフ、ジェイコブ・デグロームは、ニューヨーク・メッツと交わしていた5年1億3750万ドル(2019~23年)の契約をオプト・アウトし――途中で打ち切り――FAとなって、テキサス・レンジャーズから5年1億8500万ドルの契約を得た。メッツも再契約に向けて動いていたが、実現はしなかった。ニューヨーク・ポストのジョエル・シャーマンは、メッツが提示したのは3年1億2000万ドル程度、と報じている。そのとおりだとすると、年平均額はレンジャーズを凌いでいた。

 メッツからFAになった先発投手は、デグロームだけではない。1ヵ月前に「この球団は防御率3.50未満の先発投手3人がFAに。1人はオプト・アウト、2人はオプション破棄」で書いたとおり、タイワン・ウォーカークリス・バシットも、FA市場に出た。

 一方、マックス・シャーザーは、来シーズンもメッツにいる。3年1億3000万ドル(2022~24年)の契約をオプト・アウトできるのは、来オフだ。また、メッツは、年俸1400万ドルの球団オプションを行使し、カルロス・カラスコを引き留めた。

 だが、ローテーションの残り3枠が、デビッド・ピーターソンタイラー・メギルに、先月、マイアミ・マーリンズから獲得したエリーサー・ヘルナンデスでは心許ない。3人とも、今シーズンは、先発としてもリリーフとしても投げた。ピーターソンの防御率は4.00未満だが、あとの2人は5.00以上だ。

 SNY(スポーツネット・ニューヨーク)のアンディ・マルティノは「FA市場の動きは速くなっている。メッツのターゲットの中核はバーランダー」とツイートしている。

 デグロームとジャスティン・バーランダーは、どちらもサイ・ヤング賞投手だ。今シーズン、バーランダーが3度目のサイ・ヤング賞に選出されるまで、2人の受賞回数は並んでいた。バーランダーであれば、デグロームの「プランB」になり得る。

 ただ、来シーズンの年齢(6月30日時点)は、デグロームが35歳、バーランダーは40歳だ。数日後に30歳になるカルロス・ロドーンのほうが、年齢に伴うリスクは低い。サイ・ヤング賞投手ではないものの、昨シーズンと今シーズンの投票で、ロドーンはア・リーグ5位とナ・リーグ6位に位置している。

 オーナーのスティーブ・コーエンの財力をもってすれば、どちらの投手にも、その希望を満たす契約を申し出ることはできるはずだ。ローテーションの空きを考えると、2人とも手に入れようとしてもおかしくない。けれども、バーランダーもロドーンも、欲している球団は多い。デグロームがFA市場から姿を消し、この2投手に対する需要は、さらに高まっている。

 なお、バーランダーとロドーンについては、それぞれ、こちらで書いた。

「シャーザーに続き、バーランダーも年平均4000万ドル以上の契約を手にする!?」

「2年前に「契約を解除されてFA」となった選手が、今オフは「自ら契約を打ち切ってFA」になる」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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