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朴元淳ソウル市長の死で露わになった、韓国社会の巨大な「亀裂」

徐台教ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長
告別式での朴元淳市長の遺影。「時代と並び、市民と並び」とある。ソウル市提供。

13日午前、ソウル市庁で故朴元淳(パク・ウォンスン、64)市長の告別式が行われ、その後故郷・慶尚南道昌寧郡に埋葬された。突然の死去から4日、その死は韓国社会を脅かす「亀裂」を際立たせた。

●スター市長の「死」

9日午前に公邸を出たきり失踪した朴元淳ソウル市長は、日をまたいだ翌10日の0時1分、ソウル市内の北岳山中で遺体となって発見された。自死だった。

この前日の8日、朴市長からセクシャルハラスメントを受けたとして、同氏の元秘書の女性がソウル地方警察庁に告訴状を提出し、警察に事情を説明すると共に証拠を提出していた。

韓国社会ではこの事実が朴市長の自死に影響を与えたと見る向きが強い。前日まで公務をこなすなど、特別な兆候が見られなかったからだ。何らかの形で捜査が始まることが朴市長に知らされ「極端な選択(韓国では自死をこう表現する)」に及んだという推測だ。

このため、同氏の死は苦みを持って韓国社会に受け止められた。

「朴元淳」の名前は80年代後半から20年以上にわたり市民社会の象徴として、さらに2011年からはソウル市長として韓国社会の発展の歴史に深く刻まれてきた。

そんな同氏の市民に奉仕するイメージと(告発内容が事実である場合)セクシャルハラスメント加害者である実際の姿の間に、すさまじいギャップが存在したからだ。

自死を選ぶことで自身への責任追及を逃れると共に、被害女性にさらなるショックを与え、さらに性暴力告発運動(metoo運動)全体を萎縮させる影響を及ぼす可能性までもあった。その行動は「卑怯」と批判を受けても仕方のないものだった。

なお、同氏の葬儀はソウル市葬として行われた。

●被害女性側の記者会見

誰もが耳を疑った朴市長によるセクシャルハラスメント。様々な憶測が飛び交う中、ついに13日午後、被害女性Aさんを支援してきた『韓国性暴力相談所』と『韓国女性の電話』という権威ある市民団体による記者会見が開かれ、事件の内容が語られた。

「楽しく仕事するため」とセルフィー(自撮り)をするなかで身体を押しつけ、Aさんの膝にアザがあるのを見て「フーをしてあげる」と膝に口づけしたり、「抱きしめてほしい」とやはり身体的な接触を強要したという。こうした出来事は主に、市長執務室内の「内室(寝室)」で起きたという。

また、メッセンジャーアプリ「テレグラム」上に記録が残らない秘密チャットルームを設け、そこでAさんに対し下着写真やわいせつなメッセージを継続的に送りつけたという。被害女性は朴市長の秘書を務めた期間と、その後他部署に異動した後も含め4年間、セクシャルハラスメントの被害を受け続けたという。

Aさんが8日に提出した告訴状には「性暴力特例法(通信媒体利用わいせつ、業務上威力醜行)」違反と、刑法上の強制わいせつという犯罪事実が記載されていた。両団体はAさんと今年5月から面談を重ねていたという。

『韓国性暴力相談所』のイ・ミギョン所長は会見で「この事件に接してから、司法的手続きをしっかりと行い加害者(朴市長)は相応の処罰を受け、被害者は日常に戻れるよう支援しようとした」と述べ、「この事件は真相究明を行わずに済むような事案ではない」と強調した。

さらに朴市長に対し「自死を選んだ意味が、被害者に対する謝罪の意味でもあったならば、どんな形でも被害者に対し性暴力についての謝罪と責任を取る意思を伝えるべきだった。それなのに(遺書には)『皆に申し訳ない』と書いたことで、『被害者はすでに謝罪を受け、責任を果たしたのではないか』と一方的な解釈がなされ、被害者にとてつもない心理的な圧迫を加えている」と非難の目を向けた。

Aさんは会見には出席しなかったが、その文章が代読された。以下に全訳して引用する。

手のひらで天を遮ることができると思った。未熟な考えだった。とても後悔している。そうだ。私は初めてのあの時、声を上げるべきで、泣き叫ぶべきで…そうしてこそ正しかった。そうできていたならば、今の私が自責しなくてもよかったのではないかと、何度も後悔した。沈黙の時間は一人でとても苦しく痛ましい。より良い世界で生きたいと思った訳ではない。ただ人間らしく生きる世の中を夢見る。

巨大な権力の前で力なく弱い私自身を守るために、公正で平等な法の保護を受けたかった。安全な法廷であの方(朴市長)に向けて『やめてください』と叫びたかった。耐えられないと泣いて訴えたかった。許してあげたかった。法治国家の韓国で法の審判を受け人間的な…勇気を出して告訴状を提出し…私の尊厳を踏みにじった方が、みずから人間としての尊厳を捨てた。死という文字は、私があれだけ恐れた、口に出せずにいた言葉だ。私を愛する人たちの心を痛める自信がなかった。

だからこそ、あまりにも失望が大きい。今でも信じられない。故人の冥福を祈る。多くの人たちの心を傷つけるという思いにためらいもあった。しかし50万人を超える国民の訴えにも変わらない現実(筆者注:朴元淳市長の葬儀をソウル市葬にすることに反対する国民請願に50万人以上が署名した)は、私があの時に感じた無力感を思い出し、息が詰まる。

真実の歪曲と推測が飛び交う世の中に対し怖くて重い気持ちでペンを取った。私はこれからどう生きていけばよいのか?しかし私は人間だ。生きている人間だ。私と私の家族が日常と安全をすべからく回復できることを願う。

なお、9日の段階で韓国メディアが報じていた「他にも多くの被害者がいる」という内容について、Aさんの弁護人を務めるキム・ジェリョン弁護士は「私と被害者が知る限り、知らない」と答えた。

会見ではまた、Aさんが記者や秘書の同僚、知人にまで朴市長による被害を知らせ、ソウル市内部にも助けを求めたが「朴市長はそんな人ではない」「単なる失敗ではないか」と取り合ってもらえなかった事実も明かされた。

13日の被害女性側による記者会見の様子。『韓国性暴力相談所』ツイッターより引用。
13日の被害女性側による記者会見の様子。『韓国性暴力相談所』ツイッターより引用。

●3つの亀裂 その一:男性既得権社会と女性の亀裂

あなたが孤独でありませんように。

尊敬する人の権力に抵抗できず、ハラスメントの対象にならなければいけなかったあなたが、治療と回復のために必要な精神科での相談を受けて、やっと告訴を決めたあなたが、既に始まった『2次加害』と『身元暴露』に胸を押しつぶされそうになっているあなたが、孤独でないことを知ってほしいです。

(中略)私は弔問しない考えです。しかし、すべての死は惜しく悲しいものです。遺家族の皆さんに深い慰労のお言葉を伝えます。

(10日、柳好貞[リュ・ホジョン]正義党議員のFBより)

まるで何事もなかったかのように哀悼することはできません。故人が私たちの社会に残した足跡がいくら大きく意味のあるものだったとしても、まだ私たちが知るべきことがあります。

誰かが勇気を出して問題を提起しましたが、捜査を受けるべきだった人はこの世を去りました。この話の終わりが『公訴権なし』と、ソウル特別市の名前で行われる前例のない葬儀になることに、当惑を覚えます。

(中略)前例のないかたちで行われなければならないのは、ソウル特別市葬ではなく、高位公職者たちがしでかす、位階(権力)による性暴力に対する徹底した真相究明であり、再発防止対策です。(後略)」

(10日、張恵英[チャン・ヘヨン]正義党議員のFBより)

朴市長の死が確認されたその日に「弔問を拒否する」と明かした、第二野党・正義党の2人の初当選女性議員が残した印象は鮮烈だった。柳議員は1992年生まれの27歳、張議員は1987年生まれの33歳といずれも若い。先の4月に行われた総選挙で同党の比例1,2位としてスカウトされたホープたちだ。

しかしそのコメント欄には称賛よりも非難の声が多かった。

「いいね」を集めたものの中には「弔問に行かないのは自由だが、それならば黙っていろ」、「戦争中でも相手の大将が死んだら数日は戦闘を止めるもの」、「状況が把握されない中で、むやみに故人を加害者と規定するな」、「少しの間も待てないのか」といった内容があった。ミソジニー(女性蔑視)に基づく内容も多かった。

さらに正義党の党員を脱退する者が相次いだ。正義党も故朴元淳市長も、同じ進歩派に分類される上に、同党の沈相ジョン(シム・サンジョン)代表は弔問に訪れていたにもかかわらず、だ。

こうした事態を前に、同じ正義党から批判の声が上がった。青年副代表を務めたチョン・ヘヨン氏(30歳、女性)は「2人は自身の発言がどんな影響を呼ぶのか想像がついたはずだ。正義党がどうやって作られ、どうやってここまで成長してきたのか知らないのか」と批判した。節度のない発言をして、党を傷つけるなという趣旨だ。

つまり、柳好貞・張恵英両議員の発言は、進歩派の間でも先鋭的過ぎるものと受け止められたということだ。

正義党の張恵英(チャン・ヘヨン)議員。映画監督やシンガーソングライターなど、多彩な顔を持つ。写真は同議員のFacebookより引用。
正義党の張恵英(チャン・ヘヨン)議員。映画監督やシンガーソングライターなど、多彩な顔を持つ。写真は同議員のFacebookより引用。

批判の声が収まらないと見るや、同党の沈代表は結局14日に「二人の議員のメッセージが遺家族の方々と市民達の追悼の感情に傷をつけたなら、代表として心から謝罪する」と述べた。

だが、本当に先鋭的だったのか?という疑問は残る。

現実として、Aさんの身元を調べようとする動きがインターネット上で起こり、正体不明の文書や写真が飛び交った。「2次加害」と呼ばれる行為だ。だからこそ、2人の議員やAさんを支持する声も負けじと上がった。10日の段階で既にSNS上では被害女性への連帯を表明するハッシュタグが作られ、数万単位でシェアされた。

さらに『韓国女性記者協会』も12日に「人権弁護士、市民運動家、行政家として多くの業績を残した故人が秘書にセクシャルハラスメントを行った嫌疑で警察に告訴された事実は重い質問を投げかける。その質問に答える社会的な責任が故人を哀悼する雰囲気に葬られてはならない」と加勢した。

同会はまた、「被害者の苦痛を無視し、故人を一方的に美化する政治家や社会指導層の公的な言及に遺憾を表明する。メディアは今回の事件を報じる際に、性認知感受性を何度も点検するなど責任を果たすべき」とした。

その上で「韓国女性記者協会は被害告訴人と連帯の意志を明かし、今回の事案がmetoo運動の動力(勢い)を損ねたり、被害者たちの勇気を萎縮させることになってはいけない点をもう一度強調する」と主張した。

それではなぜ、こうした鋭い反応があちこちから出てきたのか。

背景には既得権を持つ男性社会に対する、女性たちの大きな怒りと失望があると見るべきだ。その一例が、与党・共に民主党のイ・ヘチャン代表(68)だ。弔問に訪れた際、同党に所属していた朴市長のセクシャルハラスメント疑惑に対する党の対応を問う記者に「この無礼者め」という暴言を吐き話題となった。文字通り「臭い物にはフタ」の態度だ。

さらに葬儀は故人を中心とする既得権を再確認し、今後の団結を誓う場であるとの認識が共有されていた。葬儀が終わった後で異議を申し立てても、その時には既に遅いのである。葬儀の最中に発せられた入れ込みすぎとも取れる女性たちの反応は、「葬儀の最中だからこそ出た当然のものである」と見直す必要がある。

怒りは何も年配層にだけ向けられている訳ではない。「n番部屋事件」を見ても女性の性搾取は若年男性によっても行われている。このように韓国社会の中で、権力と暴力を独占し再生産する男性既得権社会と、その文化・習慣・システムの被害を体験しそれを改善しようとする女性たちの亀裂は深い。

●その二:保守・革新陣営間の亀裂

次は韓国社会の定番とも言える、保守・革新陣営間の対立だ。

故朴元淳ソウル市長は与党・共に民主党の次期大統領候補の一人として名前が上がるほどの知名度があったし、16年末から17年初頭に起きた保守陣営の大統領であった朴槿恵(パク・クネ)前大統領を弾劾する「ろうそくデモ」を、市をあげてサポートした経歴がある。

そんな人物がセクシャルハラスメントを苦に自死したとすれば、第一野党の未来統合党にとっては格好の攻撃材料となる。直前4月の総選挙で大敗を喫したのでなおさらだ。

現に、死去が発表された直後の10日、現在同党のトップを務める金鐘仁(キム・ジョンイン)非常対策委員会代表は「来年4月7日にあるソウル市長補欠選挙や釜山(プサン)市長補欠選挙、場合によっては別の選挙を前提とする場合、大統領選挙に次ぐ選挙として準備すべき」と発言し、非難を浴びた。

また、12日は同党のキム・ウネ主席スポークスマンが「大々的なソウル市葬は被害者に対する民主党(与党)の公式な加害だと思う」と述べた。さらに同党の所属議員48人は連名で声明を出し「哀悼の気持ちは理解するが、被害女性を保護すべき」と訴えた。

しかし実際の行動はより過激だった。

結局、未来統合党の指導部は、盧武鉉政権時に青瓦台(大統領府)で政策室長を務めた金秉準(キム・ビョンジュン)氏以外には、誰一人として朴市長の弔問に行かなかったからだ。金鐘仁委員長は12日、弔問の行くのかと聞く記者に「常識で判断すれば分かる」と断じた。

さらに告別式が行われた13日には再びキム主席スポークスマンが「民主党が連帯すべきは、あなたたちの側でなく被害者だ」と攻勢を続けた。

いくら政敵だったとはいえ、韓国の文化を考えると著名政治家の死を前に葬儀に参加しないというのは、極めて異例の出来事といえる。保守派と進歩派の亀裂はもはや修復不可能なほどに広がっていることを目の当たりにし、ゾッとした。

未来統合党の金鐘仁(キム・ジョンイン)非常対策委員長。保守と進歩をまたぐ長い政治キャリアで知られる。80歳。写真は同党HPより引用。
未来統合党の金鐘仁(キム・ジョンイン)非常対策委員長。保守と進歩をまたぐ長い政治キャリアで知られる。80歳。写真は同党HPより引用。

●その三:世代間の亀裂

最後は世代間の亀裂であるが、これは前の二つに比べて捉えにくい。言い換えれば50代以上の世代と、それ以下の30,40代の間にある亀裂と定義することができる。男女は問わない。

ここ最近、韓国社会で大きな話題となったセクシャルハラスメント事件といえば、2018年3月に被害者が名乗り出て明らかになった、安熙正(アン・ヒジョン、当時52歳)前忠清南道知事によるもの、さらに今年4月に起きた、呉巨敦(オ・ゴドン、72歳)釜山市長によるもの、さらに今回の朴元淳ソウル市長(64歳)のものがある。

共通点としては、権力を笠に部下に被害を与えたという点、いずれも与党・共に民主党の地方首長だったという点がある。だがこの亀裂の正体は3人の当事者とは関係なく、それを擁護しようとする人と批判する人の間にある。そしてその線引きを「586世代(386世代)」であるかないかに求める立場だ。

「586世代」とは、1960年代前半に生まれ80年代に大学に通い、1987年の韓国民主化を成し遂げた、今は50代になった世代を指す。韓国では近年、この世代を経済自由化の恩恵と、民主化による権力の二兎を手にした「恵まれた世代」とする見方が一般的だ。

さらにこの世代こそが、エリートとして韓国の主要部署に陣取り、自己省察なきまま富と権力の蓄積へと突き進み、今や韓国の格差を広げ社会発展を妨げる負の役割を果たしているという批判の声が強い。300人の国会議員のうち、50代が占める割合は59%にのぼる。

そしてこの世代のうち、特に進歩派層が今回の一件で朴元淳市長を積極的に擁護している現実がある。韓国社会に残した功績を過度に称えることから始まり、「死ですべてを償った」という論理が特に通用している。

これを前に若者の経済的惨状を扱ったベストセラー『88万ウォン世代』(07年)の著者で、若手論客として知られるパク・クォニル氏(43)は自身のFacebookで「今回の事件は正確度を測るとてつもない『リトマス試験紙』だ」と見立てた。

パク氏は、「『死んでも気勢を上げる権力』か『生きていても死んでいるような被害者』につくかのどちらしかない」と厳しく論じ、「弔問に行ったことを公的に明かすこと自体が2次加害だ」とも書いた。

また『朝鮮日報』などへの時事や海外文化を論じる鋭いコラムの寄稿で知られるパク・サンヒョン氏(49)も、やはり自身のFacebookで政治家の自殺が続く現実について、「次の政治家の自殺を防ぎたいならば、朴市長の死とは関係なく、事件を残らず全部捜査すればよい」と主張した。

さらに「『私が死んでも私の評判を守れない。死ぬよりも生きて弁論しよう。そうでなければ告訴した人物の言うことが全部信じられてしまう』と思わせれば、次の政治家は自殺を選ばない」とバッサリと斬った。

こうした態度は、社会をさらに前に進めるようとするものと受け止めてよいだろう。若いオピニオンリーダーたちが見せた、上の世代との妥協を明確に拒否する姿勢はとても印象的だった。

13日、ソウル市庁で行われた葬儀で、献花する故朴元淳ソウル市長の遺族たち。弔辞は長女が朗読した。写真はソウル市提供(モザイクは遺族側の希望によるもの)。
13日、ソウル市庁で行われた葬儀で、献花する故朴元淳ソウル市長の遺族たち。弔辞は長女が朗読した。写真はソウル市提供(モザイクは遺族側の希望によるもの)。

●浮き彫りになった「激しさ」

朴元淳ソウル市長が遺体となって見つかった10日未明から始まった、4日間にわたる混乱状況の中で最も多く目にした言葉は「今は追悼の時間」というものだった。

筆者もこれに共感していた。葬儀はすぐに終わる。終わってから一つ一つ問題を確かめればよいと思っていた。だが現実は見てきたように、怒りの言葉と宣言の洪水だった。それを横目に筆者は当初、「なぜ死を前に冷静になれないのか」と訝しんだ。

しかし、それは単なる筆者の「事実誤認」であった。

葬儀が終わった時、どれほどの人がその原因となった(と見られる)セクシャルハラスメント問題に関心を持ち、その真相究明と(事実である場合)再発防止までたどり着くか。声を上げた人々は、これまでの経験からそこにいかなる期待も持てない事を知っていたのだ。

今後については、被害女性Aさんの被害の実態や、告訴状提出の事実がどうやって朴元淳市長の耳に入ったのかなどを明らかにする必要があるという声が多い。朴市長の死により警察の捜査が終了した今、ソウル市の行動が試される状況となった。

とはいえ、今回の件で広がった亀裂が簡単に塞がることはないだろう。朴市長の死は韓国社会にかくも多くの問いを投げかけた。

ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長

群馬県生まれの在日コリアン3世。1999年からソウルに住み人権NGO代表や日本メディアの記者として朝鮮半島問題に関わる。2015年韓国に「永住帰国」すると同時に独立。16年10月から半年以上「ろうそくデモ」と朴槿恵大統領弾劾に伴う大統領選挙を密着取材。17年5月に韓国政治、南北関係など朝鮮半島情勢を扱う『コリアン・ポリティクス』を創刊。20年2月に朝鮮半島と日本の社会問題を解決するメディア『ニュースタンス』への転換を経て、23年9月から再び朝鮮半島情勢に焦点を当てる『コリア・フォーカス』にリニューアル。ソウル外国人特派員協会(SFCC)正会員。22年「第7回鶴峰賞言論部門優秀賞」受賞。

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