Yahoo!ニュース

[全訳]第79周年 光復節 慶祝辞(24年8月15日、尹錫悦大統領)

徐台教ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長
15日、演説する尹錫悦大統領。韓国国営放送KTVよりキャプチャ。

8月15日、ソウル都心の世宗文化会館で行われた第79周年光復節慶祝式で、尹錫悦大統領は慶祝辞を発表した。演説全文を翻訳する。翻訳は徐台教で、テキストは韓国政府の配布本による。

●第79周年 光復節 慶祝辞


尊敬する国民の皆さん、
700万人の在外同胞の皆さん、
そして2,600万の北韓同胞の皆さん、

本日、私たちは光復79周年を迎えました。

祖国の独立のために献身された殉国先烈と愛国志士たちに敬意を表し、遺族の皆さんに深く感謝申し上げます。

国権を侵奪されて以降、今日に至るまで、私たち国民はとても偉大な歴史を綴ってきました。

そして、この偉大な旅路を貫く根本的な価値は自由です。私たちの光復は、自由に向かう闘争の結実でした。

国権を失った暗澹たる状況でも私たち国民は諦めませんでした。

1919年の3·1運動を通じ、国民が主人となる自由な国を作るという一致した熱望を確認しました。

このような熱望を込めて上海臨時政府を樹立し、国内外で様々な独立運動を展開していきました。

内に向けては教育、文化を通じ自らの力を養うために絶えず努力し、外に向けては外交的、軍事的な独立運動を止めませんでした。1945年の解放後も自由に向けた闘争は続きました。

1948年、自由民主主義憲法を制定しこの地に大韓民国政府を樹立しました。

憲法制定以来、今まで守ってきた自由民主主義と市場経済という憲法精神は、私たちが享受する豊かさと繁栄の土台になりました。

北朝鮮の南侵により6.25戦争が発生するや、自由民主主義国家と共に血を流して戦い自由を守りました。

自由の価値を守り発展させ、共に汗を流して努力した結果、産業化と漢江の奇跡、そして民主化を成し遂げました。

今や大韓民国は目覚ましい経済成長を越え、グローバル中枢国家、グローバル文化強国へと跳躍しました。

帝国主義勢力の国権侵奪も、分断も、戦争も、いかなるものも自由に向けた私たちの力強い前進を阻めなかったのです。

しかし、私たちにとって完全な光復は、依然として未完の課題として残っています。

私たちの前には必ず解決しなければならない、重大な歴史的課題があります。

それは統一です。

1919年、私たち国民は韓半島に国民が主人である自由民主国家を建設するための努力を始めました。
1945年、日本の敗戦により解放されたものの、分断体制が続く限り私たちの光復は未完成にならざるを得ません。

自由を剥奪された凍土の王国、貧困と飢餓に苦しむ北の地へと、私たちが享受する自由が拡張されなければなりません。

韓半島全体に国民が主人である自由民主統一国家が作られるその日、初めて完全な光復が実現するのです。

私は今日、憲法が大統領に命令した自由民主主義平和統一の責務に基づき、

韓国の統一ビジョンと統一推進戦略を私たちの国民と北韓住民、そして国際社会に宣言したいと思います。

国民の皆さん、

私たちが夢見る統一大韓民国の未来は明らかです。

国民の自由と安全が保障される幸せな国、

創意と革新で跳躍する強くて豊かな国、

国際社会の和合と発展を先導し、世界の平和と繁栄に貢献する国、

まさにこれが統一大韓民国の未来です。

私は今日、このような統一大韓民国に向かうための私たち課題を提示したいと思います。

第一に、私たち国民が自由統一を推進できる価値観と力量を確固として持たなければならず、

第二に、北韓住民たちが自由統一を切に願うよう変化を作り出し、

第三に、国際社会と連帯するという三つの課題です。

まず、私たち自らが自由の価値に対する確信を、より強く持たなければなりません。

私たちの中の自由を堅固に守ってこそ、私たちが自由民主主義統一を主導する統一推進勢力になれるのです。

私たち皆が自由人となり、私たちの自由が互いに共存するためには、責任と配慮、秩序と規範が前提とならなければなりません。

秩序と規範を無視する放縦と無責任を、自由と混同してはいけません。

自由社会を崩すための虚偽の扇動とニセの論理に振り回されては、なおさらいけません。

いわゆるフェイクニュースに基づいた虚偽の扇動とニセの論理は、自由社会を攪乱させる恐ろしい凶器です。

今やフェイクニュースは一つの大規模な産業となりました。

ニセの知識人たちはフェイクニュースを商品に見せかけ流通させ、既得権利益集団を形成しています。
ニセの知識人と扇動家たちは私たちが真に目指すべき価値とビジョンを全く提示できずにいます。

提示することができません。

国民を惑わし自由社会の価値と秩序を壊すことが彼らの戦略であり、真の目標を明らかにする場合、ニセの扇動が通じなくなってしまうからです。

扇動と捏造で国民を分断させ、その間で利益を得ることだけに執着してます。

彼らがまさに、私たちの行く手を遮る、反自由勢力、反統一勢力です。

デジタルサイバー産業の発展に伴い、知識産業が幾何級数的に成長する状況で、

これを悪用する黒い扇動勢力に対抗し、自由の価値体系を守るためには、

私たち国民が真実の力で武装して対抗して戦わなければなりません。

自由は闘争で得るものであって、決して自然と得られるものではありません。

私と政府は私たちの社会で自由の価値を守るために、あらゆる努力を尽くすつもりです。

民間主導の市場経済基調の下に、企業が思う存分活動し、良質の雇用をたくさん作り、国民たちが就職と経済活動の機会をより多く享受できるように最善を尽くします。

私たちの社会をより公正で健康にする、教育改革、労働改革、年金改革、医療改革に、さらに拍車をかけます。

困難な方々を集中的に支援する、一人一人に会った弱者への福祉を拡充し、国民の暮らしをより温かく見守り、

すべての国民の自由を守り、拡大していきます。

これを通じ、韓国社会に自由の価値がより深く根を下ろすようにして、黒い勢力のニセの扇動から、私たち国民を守ります。

私たち国民が自由の価値と責任意識で強く武装してこそ、韓半島の自由統一を主導することができます。

特に青年と未来世代が自由統一の期待と夢を持てるよう、未来志向的な「先端現場型統一教育プログラム」を提供します。

統一がもたらす機会と変化を仮想空間で事前に体験できるよう、作っていきます。

次に、北韓住民たちが自由統一を強く熱望するように、配慮し、変化させるという課題です。

自由の価値を北側に拡張し、北韓の実質的な変化を引き起こすことに、もっと積極的に取り組まなければなりません。何よりも、北韓人権の実質的な改善のために多次元的な努力を繰り広げていきます。

北韓人権の惨状を韓国国民と国際社会に、ありのまま正確に知らせなければなりません。

韓国政府発足後、初めて「年次北韓人権報告書」を発刊したのも、そうした理由によるものです。

これからさらにしっかりと作り、世界中により広く伝えます。

国内外の民間団体(NGO)、友好国、国際機関と共助して北韓の人権蹂躙をより広く知らせ、人権改善を持続的に促します。

<北韓人権国際会議>を推進し、北韓人権に関する議論を全方位的に拡張していきます。

<北韓自由人権ファンド>を造成し、北韓住民の自由と人権を促進する民間活動を積極的に支援します。

北韓住民の生存権保障のための人道的支援も、引き続き推進していきます。

去る8月1日、北韓の水害被災者に対する救護物資の支援を提案したことも、北韓住民の苦痛から目を背けないという、私たち政府の意志を明らかにしたものです。

北韓政権がまたも拒否しましたが、人道的な支援を諦めません。

乳幼児、女性、高齢者、障害者など、北韓の脆弱な階層に対し、食糧や保健をはじめとする人道的支援を積極的に推進します。

北韓住民たちが自由の価値に目覚めるようにすることも重要です。

多くの北韓離脱住民(訳注:脱北民)は私たちのラジオ放送やTVを通じ、北韓政権の偽りの宣伝扇動に気がついたと証言しています。

自由統一が人生を改善する唯一の道であることを、より多くの北韓住民が悟り、統一大韓民国が自分たちを包容するという確信を持つならば、

彼らが自由統一の強力な友軍になるでしょう。特に、北韓の未来の世代に自由統一の夢と希望を植えつけなければなりません。

北韓住民が様々な経路で多様な外部の情報に接することができるよう、「情報アクセス権」を拡大します。

「先に来た統一」である北韓離脱住民を温かく包み込むことも重要な課題です。

去る7月14日、「北韓離脱住民の日」が制定され、初の記念式典を開きました。

脱北者の保護と支援に対する、政府の確固たる意志を明らかにしたものです。

政府は、北韓離脱住民をしっかりと保護し、彼らの役割を統一の力量に加えます。

南北韓の双方を経験した脱北民の経験と知識を、統一政策の樹立と推進に積極的に反映し、

統一大韓民国の未来を開いていく大切な資産にします。

このような努力と共に、南北対話の扉は大きく開いておきます。

南北対話はパフォーマンスとしての政治イベントではなく、

私たち国民と北韓住民の平和保障と生活改善などを議論する、実質的な場にならなければなりません。

私は今日、南北当局間の実務レベルの「対話協議体」の設置を提案します。

ここで、緊張緩和を含め、経済協力、人的往来、文化交流、災害や気候変動への対応に至るまで、どんな問題でも扱えます。

離散家族、国軍捕虜、拉北者、抑留者問題のような人道的な懸案も協議できるでしょう。

一方で一昨年の光復節の「大胆な構想」ですでに明らかにした通り、非核化の第一歩を踏み出すだけでも政治的、経済的協力を始められます。

対話と協力を通じ、南北関係の実質的な進展を遂げることができるよう北韓当局の呼応を求めます。

最後に、国際社会との連帯です。

私たちの分断が国際政治の産物であったように、統一は私たち一人で容易に成し遂げることができません。

私たちの統一は自由と人権の普遍価値を拡張する課業であり、世界平和と人類の繁栄に直結した事案です。

統一大韓民国が世界の平和と繁栄に寄与する国になるという信頼を、国際社会に広く拡散させなければなりません。

国際社会に責任ある寄与をし、国際社会とともに統一政策を推進していかなければなりません。

私は昨年の国連総会での基調演説を通じ、国家間の開発格差、気候格差、デジタル格差の解消において、大韓民国が先導的な役割と寄与を果たすことを明らかにしました。

私たちは政権発足後、ODA予算の規模を果敢に2倍以上増やしました。

韓国主導の「無炭素連合」を発足させ、気候課題に対する国際的な規範の議論をリードしており、

AIソウルサミットを開催するなど国際社会の新しいデジタル規範の定立の先頭にも立っています。

このような寄与と役割を土台に、自由統一に対する国際社会の支持を牽引するようさらに努力します。このために、志を同じくする国々とともに<国際韓半島フォーラム>を創設します。

同盟及び友邦国と自由の連帯を強固にしながら、私たちの統一に対する共感を形成するために努力します。

国民の皆さん、そして北韓の同胞の皆さん!

統一大韓民国で私たちは、より大きな自由と機会を享受することになるでしょう。

さらには、人類社会のすべてに向けた祝福のメッセージになるでしょう。

私と政府は2024年の今年を、「自由平和繁栄の統一大韓民国」に向かう新たな元年にしていきます。

尊敬する国民の皆さん、

大韓民国が歩んできた挑戦と成就の旅程は、人類の現代史の輝かしい記録となり、大きな感銘を与えています。

去る8月1日、世界銀行は「中進国の落とし穴」という報告書で、大韓民国を「成長のスーパースター」と呼び、

大韓民国の成長の歴史を「すべての中進国が熟知すべき必読書」と評価しました。

この報告書は「Korea」をなんと100回も言及し、「投資」、「技術導入」、「革新」に至る私たちの成功の秘訣を詳しく紹介しています。

昨年の私たちの1人当たりの国民所得は初めて日本を越えて、2026年には4万ドルを見込んでいます。

今年上半期の韓国と日本の輸出格差は過去最低の35億ドルを記録しました。

最近のパリ五輪における世界8位という目覚ましい成績で確認したように、私たちの青年は挑戦を恐れず、力強く未来へ進んでいます。

世界各国が大韓民国が歩んできた道をなぞろうとしています。

しかし、これに満足することはできません。

統一大韓民国に向かうためには、私たちがより強くならなければなりません。

私たちの自由を脅かす内外の挑戦に立ち向かい、より大きな歴史の発展を成し遂げなければなりません。

尊敬する国民の皆さん、私たちの歩みを続けましょう!

より大きな大韓民国、統一大韓民国へと、固く手をつないで力強く進みましょう!

ありがとうございます。

ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長

群馬県生まれの在日コリアン3世。1999年からソウルに住み人権NGO代表や日本メディアの記者として朝鮮半島問題に関わる。2015年韓国に「永住帰国」すると同時に独立。16年10月から半年以上「ろうそくデモ」と朴槿恵大統領弾劾に伴う大統領選挙を密着取材。17年5月に韓国政治、南北関係など朝鮮半島情勢を扱う『コリアン・ポリティクス』を創刊。20年2月に朝鮮半島と日本の社会問題を解決するメディア『ニュースタンス』への転換を経て、23年9月から再び朝鮮半島情勢に焦点を当てる『コリア・フォーカス』にリニューアル。ソウル外国人特派員協会(SFCC)正会員。22年「第7回鶴峰賞言論部門優秀賞」受賞。

徐台教の最近の記事