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ラスベガスのエイリアン目撃騒動のその後 海軍「UFOと空中衝突しそうになった」 米UFO公聴会開催へ

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
UFOが頻繁に目撃される地域では、UFOツアーが盛んに行われている。(写真:ロイター/アフロ)

 ラスベガス在住の男性が自宅裏庭で身長3メートルもあるエイリアンを目撃したと通報し、地元警察が現場に駆けつけて話題となった現代版「未知との遭遇」とでもいうべきエイリアン騒動は、その後どうなったのか?

 目撃した男性は目撃談の動画の中で第2弾の動画を投稿すると話していたが、これまでのところ、投稿されていない。

 男性の指摘と食い違う証言も出た。第1弾の動画の中で、男性は隣家の防犯カメラが捉えた衝撃音の動画を公開していたが、その動画は、事件が起きた4月30日より前の4月半ばに撮られたものだと隣家の住民が話していることがわかった。

 また、裏庭にできていたという、UFOの着陸した跡ではないかと思われるサークル状の跡も、昨年から存在していたものだとの指摘もされている。

エイリアンのフェイク動画も拡散

 世界が注目する大事件が起きると、フェイク動画が拡散されることはありがちだ。潜水艇タイタン号沈没事故でも最後の瞬間を捉えたというフェイク動画が拡散されたが、この事件でもエイリアンのような生き物が映し出されている動画(下)が拡散された。しかし、デジタル処理されたフェイク動画だったとすぐに判明した。

 また、ラスベガスの地元警察は、男性とその家族の安全を確保するため、一時的だが、男性宅に防犯カメラを設置。この事件に興味を持った人々が男性の家の敷地内に入ってきたり、男性やその家族をハラスメントしたりすることが懸念されたからだ。

 もっとも、この措置は異例だったようだ。防犯カメラの設置について、UFO研究者は「警察はそんな高価な防犯カメラを設置することはありません。UFOの目撃報告を受けている場合でも、設置はしないでしょう」と話している。

 地元警察はこの事件については結果的に“根拠なし”のケースとして終結させている。

NASAは隕石との見解

 NASA(アメリカ航空宇宙局)も、この事件について見解を出した。

 男性がエイリアンを目撃したと通報する少し前に、警官のボディ・カメラが空から落下する緑色の光を捉え、同じ光を4州で少なくとも21人の人々が目撃していた。緑色の光はUFOが墜落する様子ではないかとの憶測が広がったが、NASAは「それはUFOではなく、空から落ちてきた1メートル以下の輝く隕石であり、誰かの庭に墜落したわけではない」との見方を示した。

 ところで、類似した緑色の光(上の動画)は、7月14日午前4時半に、ルイジアナ州でも目撃された。民家のドアの防犯カメラがその光を捉え、その動画が拡散された。しかし、天気予報サイトAccuWeatherは、その光は夜空の中燃え尽きた流星に過ぎないとの見方を示しており、その日、6州で29件の目撃報告があったという。

 しかし、この動画に対して「ラスベガスの警察のボディ・カメラが捉えた緑色の光と同じじゃないのか」と流星との指摘を訝しがるコメントもあがっている。

米UFO公聴会開催へ

 UFO熱が高まるなか、米下院監視委員会は米国時間26日、UFOを目撃した3人の元軍人を招致して、“歴史的”とも言うべきUFO公聴会を開催する。

 ちなみに、同委員会は、この公聴会についてUFOではなくUAPとしている。UAPは、最近まで「未確認空中現象(Unidentified Aerial Phenomena)」の略称だったが、昨年、NASAは、国防権限法に従って、「未確認異常現象(Unidentified Anomalous Phenomena)」の略称に変更した。

 公聴会開催を発表した共和党議員のティム・バーチェット氏は「ただ透明性を求めているだけだ。みんなが透明性を求めるべきだと思う。もし、UFOが存在しないのなら、なぜ連邦政府は透明性を阻止するために多くの時間と労力を費やしているのか。なぜ連邦政府はファイルを公開しないのか。私が見たすべてのファイルはスイスチーズのように赤く塗りつぶされている」と透明性が欠如している連邦政府の対応を批判している。

 また、チャック・シューマー上院院内総務(民主党)とマイク・ラウンズ上院議員(共和党)は、先週、UFO関連記録の機密解除を目的とした国防権限法の修正案を提出、議員は超党派でUFO関連記録の透明化を図ろうと動いている。

 この修正案では、UFO関連情報を受けた連邦機関や民間産業が300日以内に、その情報をバイデン大統領に任命された9人からなる審査委員会に提供することを義務付けており、審査委員会はそれらの情報を機密解除すべきか否かを審査するが、最終的には機密解除して公開することを狙っている。この修正案は、ジョン・F・ケネディ大統領の暗殺に関する情報の機密解除のために設けられた1992年の法律に倣ったものになると言われている。

UFOと空中衝突しそうに

 公聴会で証言を予定している元海軍パイロットのライアン・グレーブス氏によると、バージニア・ビーチ近くで一緒に勤務していた多くのパイロットのレーダー・システムが2014年に更新された後、これまで見たことのない飛行物体を定期的に読み取るようになり、その後、パイロットたちはこれらの物体を実際に目撃するようになり、さらには、これらの物体と空中衝突しそうになり始めたという。

 また、その物体は高い高度で、ハリケーンのような強風の中にありながらも完全な静止状態を保ったかと思えば、瞬時に方向転換をして超音速に加速するという説明のつかない動きを見せたという。撮影したUFOの動画もあるようだ。

 UFO情報の透明化は、飛び交う様々な陰謀論の排除や国家安全保障のためにも重要だと情報開示を求める議員らは主張している。公聴会でどのような証言が行われるのか、また、議会はUFOを含むUAP情報の透明化へと一歩コマを進めることができるのか注目されるところだ。

(参考記事)

Congress is getting serious about UFOs. Just don’t call them that

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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