『らんまん』浜辺美波の母・牧瀬里穂は4年ぶり。朝ドラヒロインの母親役のリピート出演率の高さ
朝ドラ『らんまん』に、90年代初めに時代を象徴するスターだった牧瀬里穂が出演している。ヒロインの浜辺美波の母親役。2019年の『まんぷく』以来の朝ドラ登場だ。この10年ほど、朝ドラのヒロインの母親役は、かつて自身がヒロインを演じていたりと出演歴がある女優が務めるケースが多い。
3M時代を彷彿させる美貌でトレンド入り
朝ドラ『らんまん』で神木隆之介が演じる主人公と結婚するヒロイン役で、浜辺美波が出演している。その母親役を務めているのが牧瀬里穂。90年代初めには宮沢りえ、観月ありさと共に“3M”と呼ばれ、一時代を築いた若手スター女優だった。
4月に浜辺と共に『らんまん』に登場するや、“牧瀬里穂”がツイッターでトレンド入り。「全然変わってない」「親子というより姉妹のよう」といった声が上がっていた。
牧瀬は高校生だった1989年に、山下達郎の『クリスマス・イブ』が流れる『クリスマス・エクスプレス』のCMで脚光を浴びる。1990年には相米慎二監督の『東京上空いらっしゃいませ』、吉本ばなな原作で市川準監督の『つぐみ』に主演し、数々の映画祭で新人賞を受賞。
1991年には竹内まりやが提供した『Miracle Love』で歌手デビューも果たし、オリコン4位を記録している。さらに1992年には、SMAPの稲垣吾郎と共にドラマ『二十歳の約束』で初主演。「ヒューヒューだよ」という台詞がモノマネのネタにされるなど、強いインパクトを残した。
「奥の手」を教えるシーンが話題に
その後は、宮沢りえが『たそがれ清兵衛』、『紙の月』、『湯を沸かすほどの熱い愛』など映画中心に確固たる実力派女優となり、観月ありさが『ナースのお仕事』シリーズなど連続ドラマで30年続けて主演したのに比べると、華々しい時期は短かった。
2008年に結婚。2019年に朝ドラ『まんぷく』で、安藤サクラが演じるヒロインが働く喫茶店のママ役で10年ぶりにドラマ出演。今回の『らんまん』も同じ監督からオファーがあり、4年ぶりの出演を決めたという。
浜辺が演じる西村寿恵子の母・まつ役。元売れっ子芸者で和菓子屋を営んでいる。武家の妾となり、ひとり娘の寿恵子を育ててきた。植物の研究と印刷の修行に打ち込む槙野万太郎(神木)に会えず、悲嘆する寿恵子に「奥の手を教えてあげる」と正座で向き合い、「男の人のためにあんたがいるんじゃないの。いつだって自分の機嫌は自分で取ること」と諭すシーンは話題を呼んだ。
『つぐみ』でわがまま放題だが憎めない少女を演じたりしていた牧瀬の凛々しい佇まいは、30年以上を経て母親役になっても健在だ。
自らヒロインを演じてから時を経て母の立場に
朝ドラでヒロインの母親を演じる女優は、今回の牧瀬と同様、過去の朝ドラに出演していたケースが非常に多い。
2作前の『ちむどんどん』(2022年度前期)で黒島結菜の母親役の仲間由紀恵は、『花子とアン』(2014年度前期)で吉高由里子と女学校で出会い、文学を通じて深く関わる役を演じていた。『カムカムエヴリバディ』(2021年度後期)で上白石萌音の母親役の西田尚美は、『マッサン』(2014年度後期)で玉山鉄二が演じた主人公の姉役。
自ら朝ドラでヒロインを務めた後、母親役で戻ってきた例もある。『おかえりモネ』(2021年度前期)で清原果耶の母を演じた鈴木京香は、『君の名は』(1991年度)で空襲下に助けられた男性とすれ違いを繰り返すヒロインだった。『わろてんか』(2017年度後期)でも葵わかなの姑、松坂桃李の母を演じている。
『なつぞら』(2019年度前期)は100本目の記念作品として、歴代ヒロイン15人が出演。その中で、広瀬すずの亡き母として回想シーンに登場した戸田菜穂は『ええにょぼ』(1993年度前期)で医師、広瀬の育ての母となる松嶋菜々子は『ひまわり』(1996年度前期)で弁護士と、それぞれヒロインを演じていた。
『べっぴんさん』(2016年度後期)で芳根京子の母役は菅野美穂。男性が主人公だった『走らんか!』(1995年度後期)で彼に想いを寄せる同級生というヒロイン。『ちゅらさん』(2001年前期)にも、国仲涼子の面倒を見る小説家の役で出演している。
10年で21作中15人がカムバック組
他にも、『エール』(2020年度前期)で二階堂ふみの母の薬師丸ひろ子は、再放送中の『あまちゃん』(2013年度前期)で能年玲奈が憧れる女優役。『ひよっこ』(2017年度後期)で有村架純の母の木村佳乃は、『天花』(2004年度前期)で藤澤恵麻の高校時代の担任役を務め、『風のハルカ』(2005年度後期)では老舗旅館の女将役だった。
『花子とアン』で吉高由里子の母の室井滋は、『青春家族』(1989年度前期)、『ええにょぼ』(ナレーション)、『走らんか!』、『純情きらり』(2006年度前期)、『ウェルかめ』(2009年度後期)と出演を重ねていた。
『あまちゃん』からこの10年の21作を見ると、ヒロインの母親役で過去の朝ドラに出演していた女優は15人にも上る。逆に、朝ドラ初出演でヒロインの母親を演じたのは、『舞いあがれ!』(2022年度後期)の永作博美、『半分、青い。』(2018年度前期)の松雪泰子、『まれ』(2015年度前期)の常盤貴子、『あまちゃん』の小泉今日子ら。
ちなみに、『らんまん』で浜辺の叔母で牧瀬の妹を演じている宮澤エマは、『おちょやん』(2020年度後期)では杉咲花に冷たく当たる継母役だった。
視聴者に重ねた年月も思い起こさせて
ヒロインの母親はそれなりに重要な役どころで、40~50代の実力ある女優をキャスティングすれば、キャリアの中で過去の朝ドラに出演していたことも、必然的に多くなるかもしれない。
“OG枠”があるわけではないにせよ、今回の牧瀬里穂と同様、前回の出演作のスタッフが声を掛けるケースもあるだろう。ある意味、特別な朝ドラの現場の勝手を知っているのは、本人的にも娘=ヒロインを見守るうえでもメリットのはず。
いずれにしても、特にかつてのヒロインなどが年齢を重ねて朝ドラに戻ってくるのは、視聴者的には自分の過ごした年月も思い起こさせ、感慨深い。牧瀬は51歳になったが、今をときめく浜辺との美人親子ぶりは、10代の彼女も見ていた者には感動的ですらある。