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子どもがケンカで言う「いつ? 何時何分何秒? 地球が何回まわったとき?」にキチンと答える方法とは!?

柳田理科雄空想科学研究所主任研究員
イラスト/近藤ゆたか

こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。さて、今回の研究レポートは……。

子どもが友達とケンカになったときの罵り言葉といえば、「いつ言った? 何時何分何秒? 地球が何回まわったとき!?」である。

もう何十年も使われ続けているようだが、考えてみれば立派ではないか。ケンカの最中に「地球の回転数」を考えようというのだから。

まあ、子どもたちはそんなつもりじゃないのかもしれないけど、科学的にはなかなか興味深い問題だ。

地球がこれまで何回まわってきたかを細かく計算して、誰かに「いつ言った? 地球が何回まわったとき!?」と言われても、冷静に対処できるようにしておこう。

◆自転は遅くなっている

地球は1日に1回、自転している。また、1年に1回、太陽のまわりを公転している。その「1年」とは、正確には365.25219040日だ。

地球が生まれたのは、46億年前と考えられている。太陽のまわりを回っていた岩石が集まってできたので、生まれたときから自転も公転もしていた。

そして本日は、2022年7月15日。

ちょっと強引だが、本日からピッタリ46億年前に地球が誕生した、と仮定しよう。

その場合、上の要素から、地球が22年7月15日までに自転してきた回数を計算すると、次のようになる。

365.25219040×46億=1兆6801億6007万5840回

よーし、明日からはこの数字を使ってケンカしよう! と思ったあなた、少しお待ちいただきたい。

科学的にきちんと考えるなら、この数字はまだ甘い。

なぜなら、地球の自転のスピードは一定ではなく、少しずつ遅くなっているからだ。

生物が化石に残した痕跡から、6億年前、1日は22時間だったことがわかっている。つまり、地球は22時間で自転していた。

また地球が誕生した46億年前は、1日は4時間だったとも、6時間だったともいわれている。いまよりはるかに速くグルグルまわっていたのだ。

なぜ地球の自転が遅くなっているかというと、その原因は「潮の満ち引き」にある。

地球の「月に向いた側の海面」は、月の重力に引っ張られて盛り上がっている。また、反対側の海面は、他の場所より月の重力が弱いので、やはり盛り上がっている。

このため、宇宙から見ると、海はわずかにゆがんで、卵のような形になっている。

その盛り上がった海に、地球の自転によって、陸地がぶつかる。これでエネルギーが失われるため、地球の自転は少しずつ遅くなっている。

こういった状況まで考慮に入れて計算するならば、地球が22年7月15日までに自転した回数は、3兆1184億5150万4961回となる。

また、別の日の回転数を知りたければ、ここに「22年7月15日から知りたい日までの日数」を足せばよい。

たとえば、2023年1月1日なら、7月15日から170日経っているわけだから、右の回転数に170を足して、3兆1184億5150万5131回。ふむ。これで「地球が何回まわったとき?」と聞かれても、科学的に正しい答えを返せることになる。

イラスト/近藤ゆたか
イラスト/近藤ゆたか

◆公式を作りました!

これで完璧……と思ったが、いやいや、ちょっと待て。

上記の数字は、「日」の単位にしか対応していない。前述の3兆1184億5150万5131回というのは、23年1月1日の午前0時までの回転数なのだ。

「地球が何回まわったとき?」の前には「何時何分何秒?」という質問があるのだから、相手の問いかけに誠意をもって答えようと思ったら、秒単位まで考慮した回転数を求めるべきだろう。

地球の自転は1日に1回だから、これを自転の回数で表すには、小数を用いるしかない。1時間は3600秒、1日は8万6400秒だから、「時」を24時間法で表せば、次の公式が成り立つことになる。

地球が回った回数=3兆1184億5150万4961回+2022年7月15日からの日数+(時×3600+分×60+秒)÷8万6400

これで、具体的な回転数を小数点以下まで求めることが可能になった。

たとえば、それが「2022年8月5日午後4時56分33秒」だとして、その数字を当てはめていくと……。

「2022年7月15日から8月5日までの日数」は、7月が17日(15日の午前0時までに14日経っているから)、8月が4日。合わせて17日+4日=21日だ。すると整数部分は、3兆1184億5150万4961回+21回=3兆1184億5150万4982回。

小数点以下が(16×3600+56×60+33)÷8万6400=6万993÷8万6400=0.7059375となるから、地球が回った回数は=3兆1184億5150万1982.7059375回。

というわけで、「それはいつ? 何時何分何秒? 地球が何回まわったとき!?」と言われたら、「2022年8月5日午後4時56分33秒! 地球が3兆1184億5150万1982.7059375回まわったときだ!」と答えれば、科学的にはパーフェクトです。

まあ、ケンカの最中にこんな細かい計算をしていたら、相手は呆れて、ケンカも収まってしまうような気もしますが。

空想科学研究所主任研究員

鹿児島県種子島生まれ。東京大学中退。アニメやマンガや昔話などの世界を科学的に検証する「空想科学研究所」の主任研究員。これまでの検証事例は1000を超える。主な著作に『空想科学読本』『ジュニア空想科学読本』『ポケモン空想科学読本』などのシリーズがある。2007年に始めた、全国の学校図書館向け「空想科学 図書館通信」の週1無料配信は、現在も継続中。YouTube「KUSOLAB」でも積極的に情報発信し、また明治大学理工学部の兼任講師も務める。2023年9月から、教育プラットフォーム「スコラボ」において、アニメやゲームを題材に理科の知識と思考を学ぶオンライン授業「空想科学教室」を開催。

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