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感覚的なスポーツであるサッカーと難解な日本語の親和性

杉山茂樹スポーツライター
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 日本語は難しさにおいて、世界でも指折りの言語として知られる。音読みと訓読みがあることの厄介さに加え、語彙の多さも習得が難しい要因だとされる。一方、サッカーはデータの類が決定的に少ない感覚的なスポーツだ。指導者に問われているのは伝える力で、高い表現力が不可欠になる。言葉はおのずと重要なウエイトを占めることになる。

 サッカーと難解な日本語と相性がいいと考えるのが自然だ。外国人の指導者より日本の指導者の方が、サッカー指導に必要な言葉を潜在的に多く持っている。同義語、類義語に加え、日本語はオノマトペを含むカタカナ表記も豊富だ。その分、様々な言い回しが可能になる。細かなニュアンスを伝えやすい。よい指導者に不可欠とされる言語技術は、外国人の指導者より上達しやすい環境にある。

 だが、日本はサッカー先進国ではない。日本人の指導者で世界的な監督は誰もいない。Jリーグにおいても外国人監督の優位性が目立つ。近い将来、それぞれの関係が逆転しそうなムードもない。よく考えれば、これは不思議な現象だ。サッカーは外国文化そのものながら、言語的な親和性は日本語にある。サッカーと日本語の相性のよさを、日本人の指導者はもっと認識する必要があると考える。

 本場で使われているサッカー用語や言い回しを、日本語にどう落とし込むか。その昔、ハンス・オフトがよく使い、流行語にもなった「アイコンタクト」は、日本語に訳さなくて正解だった。「目配せ」では、訴求力は弱かった。アイコンタクトをそのまま使用した通訳氏を讃えたくなるが、「ポリバレント」はどうだろうか。イビチャ・オシムが好んで使った、複数のポジションをこなす「多機能性」を意味する言葉である。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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