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フェイスブックを介した国際送金サービスが初登場 手掛けるは欧州フィンテック企業

土橋克寿クロフィー代表取締役、テックジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

英ロンドンを本拠とするフィンテック企業「TransferWise(トランスファーワイズ社)」が現地時間2月20日、メッセージングアプリ「Facebook Messenger」のチャットボットを用いた国際送金サービス「TransferWise Bot」を提供開始した。現在、米国、英国、カナダ、オーストラリア、欧州において利用できる。

フェイスブックは、同アプリを介した送金サービスを米国内で実現しているものの、国際間の送金サービスはまだ提供していない。そのため、実質的にTransferWise Botが、同アプリのチャットボットを用いた初の国際送金サービスとなる。ユーザーは下記画像のように、自動会話プログラムとのチャットを通じて、友人や家族に送金可能だ。

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Skypeを育んだIT先進国エストニアで生まれたトランスファーワイズ社は、その次なる最大の注目株であり、今ではユニコーン(企業価値10億ドル超えの未公開企業)の一角を成している。P2P技術を用いた国際送金サービスを提供することで、海外送金に掛かる手数料負担を10分の1まで減らしている。

トランスファーワイズ社の国際送金サービスでは、銀行に手数料を支払って海外へ送金するのではなく、互いの通貨を交換したい人同士をマッチングさせている。単純化すると、A氏が持つX通貨預金でB氏のX通貨支払いを、B氏が持つY通貨預金でA氏のY通貨支払いを受け持つ仕組みだ。これにより、例えば1000ポンド分をユーロで支払いたい場合、平均的な銀行手数料は約40ポンドだが、同社経由なら約4ポンドで済む。現在は50カ国以上でサービスを提供、主要35通貨で取引され、国際送金取扱高は毎月10億ドルを超えている。

同社は2016年9月より、日本においても国際送金サービスを提供している。なお、新サービス「TransferWise Bot」の日本での提供開始は未定であり、現時点で日本からの送金は叶わないが、チャットボット自体を試してみることは可能だ。トランスファーワイズ・ジャパン代表取締役の越智一真は次のように語る。

「botサービスは本日開始したばかりで、まずは取扱通貨を限定し試験段階だが、技術的には国内でも提供は容易に可能です。日本では9月に海外送金サービスを開始し、手数料の削減や送金スピードをより早くするなど、まずは基本的なサービス拡充を予定していますが、botサービスの需要は認識しております。国内のお客様の需要や法規制等を考慮し、お客様が望む利便性の高いサービスを提供していきたい」

クロフィー代表取締役、テックジャーナリスト

1986年東京都生まれ。大手証券会社、ビジネス誌副編集長を経て、2013年に独立。欧米中印のスタートアップを中心に取材し、各国の政府首脳、巨大テック企業、ユニコーン創業者、世界的な投資家らへのインタビューを経験。2015年、エストニア政府による20代向けジャーナリストプログラム(25カ国25名で構成)に日本人枠から選出。その後、フィンランド政府やフランス政府による国際プレスツアーへ参加、インドで開催された地球環境問題を議題に掲げたサミットで登壇。Forbes JAPAN、HuffPost Japan、海外の英字新聞でも執筆中。現在、株式会社クロフィー代表取締役。

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