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この球団がノンテンダーFAとした3人中2人は、前年に35本塁打の一塁手と防御率3.05の先発投手

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブランドン・ウッドラフ Sep 11, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 11月17日、ミルウォーキー・ブルワーズは、ラウディ・テレーズブランドン・ウッドラフJ.C.メヒーアの3人をノンテンダーとした。40人ロースターに入っていて、サービス・タイムが6年未満の選手に対し、球団が契約を交わす意向を示さなかった、ということだ。ノンテンダーとされた選手は、FAとなる。

 リリーバーのメヒーアは、ほとんど実績がない上、9月に162試合の出場停止処分を科された。薬物検査の陽性反応は、昨年5月に続き、これが2度目だ(1度目は出場停止80試合)。いずれも、スタノゾロールが検出された。

 一方、一塁手のテレーズは、昨シーズン、35本のホームランを打った。先発投手のウッドラフは、153.1イニングを投げ、防御率3.05を記録した。来シーズンの年齢(6月30日時点)は、それぞれ、29歳と31歳だ。退団させるのは、もったいない気もする。

 ただ、今シーズン、テレーズは、105試合で13本塁打と出塁率.291に終わった。パワーを発揮した昨シーズンも、出塁率は.306に過ぎなかった。

 今夏の離脱中に、ブルワーズは、ピッツバーグ・パイレーツから一塁手のカルロス・サンタナを獲得した。オフに入り、サンタナはFAになったが、テレーズに代わる選手として、今度は、ニューヨーク・ヤンキースからジェイク・バウアーズを手に入れた。

 ウッドラフの場合、マット・アーノルドGMが声明文を発表し、その冒頭に「本日、球団史における最高の投手かつ人物の一人に関わる、極めて難しい決断を下す必要があった」と綴ったのは、ほぼ真実だろう。ちなみに、この声明文は、メヒーアとテレーズには触れておらず、別の声明文もない。

 ウッドラフの好投は、昨シーズンだけではない。2019年が防御率3.62(121.2イニング)、短縮シーズンの2020年が防御率3.05(73.2イニング)、2021年が防御率2.56(179.1イニング)、2022年は防御率3.05(153.1イニング)。開幕直後から4ヵ月離脱の今シーズンも、防御率2.28(67.0イニング)を記録した。

 また、この5シーズンとも、奪三振率は9.90を超え、与四球率は2.50に満たなかった。2019~23年に500イニング以上を投げた70人のなかで、ウッドラフの奪三振率10.72と与四球率2.24は9位と16位、防御率2.93とFIP3.10は3位と4位に位置する。

 にもかかわらず、ブルワーズは、ウッドラフを退団させた。

 レギュラーシーズンが終わる直前に再び肩を痛めたウッドラフは、ポストシーズンで投げることなく、先月、手術を受けた。来シーズンは、ほぼ全休の見込みだ。しかも、来シーズンの年俸は、ほぼ間違いなく、今シーズンの1080万ドルからアップする。ウッドラフは、年俸調停の申請権を持っている。そして、来シーズンが終わるとFAとなる。

 ブルワーズは、ウッドラフと再契約を交わすこともできるが、実現の可能性は低い。おそらく、ウッドラフには、資金のある球団が2年以上の契約を申し出るだろう。その契約は、ブルワーズの提示を上回るはずだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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