オートバイのあれこれ『SRXにも負けてない!?500のクラブマン』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『SRXにも負けてない!?500のクラブマン』をテーマにお送りします。
2021年の春に国内デビューし、以降高い人気を誇るホンダの『GB350』。
その先祖のような存在が、1985年(昭和60年)にデビューした『GB500TT』です。
日本では(おそらく)ほとんど知られていない欧州向けモデル『XBR500』を元に、往年のイギリス車風デザインが施されていました。
パワーユニットは、同時代の4ストオフロードモデル『XR500』に搭載されていた空冷単気筒SOHCエンジンがベース。
オンロード向けの特性に改めるため、ピストン、クランクシャフト、ポート形状などが一新され、またバルブタイミングやトランスミッションのギヤ比も変更されていました。
細部にわたってテコ入れが行われたことで、GBのエンジンは単気筒ながら高回転域までキッチリ回るキャラクターに仕上がっていました。
当時のホンダの先進技術『RFVC』(Radial Four Valve Combustion Chamber:放射状4バルブ半球型燃焼室)を備えていたのもポイントといえるでしょう。
車体に関しては、そのスタイリングデザイン同様、シンプルな設計で一貫されています。
アルミ製のツインスパーフレームや、フロントフォークのアンチノーズダイブ機構、1本式のリヤサスペンション(モノショック)などが流行り始めていた頃でしたが、GBは旧来的なダブルクレードルフレームにベーシックな前後サスペンションが組み合わされていました。
その車体構成や外観から、“クラシカルテイストを味わうモデル”というふうに思われがちなGB。
しかし、よく観察すると、GBはその外見以上のポテンシャルを秘めていたといえそうです。
GBと同じ85年に登場し、“シングルスポーツ”として高い評価を得たヤマハの空冷単気筒モデル『SRX-6』とスペックを比べると、
SRX-6:最高出力42ps/乾燥車重149kg
GB500TT:最高出力40ps/乾燥車重149kg
で、スペックシート的にはさほどSRXと変わらないのです。
もちろん、バイクの性能はパワーと車重のみで語れませんし、実際のところSRXはフレームなどを見てもよりモダンな作りとなっていましたから、走らせた時のフィーリングはそれなりに異なるのでしょうが、それでもこの数値を見れば、決してGBのパフォーマンスが悪くはなかったことを理解してもらえるのではないかと思います。
GBは当時のレプリカブーム下においてまとまった支持を集めることは叶いませんでしたが、今改めて見ると、そのプリミティブな佇まいには心を惹かれるものがあります。
ちょうど最近は“ネオレトロ”なるものがもてはやされていますから、もしGB500が当時のスタイルのまま再販されれば、当時以上に人気を博しそうな気がします。