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映画館活況のGWの後、2024年は特大ヒットを狙える映画はあるのか、ないのか?

斉藤博昭映画ジャーナリスト
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ポスターより

書き入れ時の春の大型連休に対し、映画会社が宣伝のために使った呼び名がそのまま一般的に定着した「ゴールデンウィーク」。それゆえに毎年、映画の興行が活気づくわけで、昨年(2023年)は『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』と『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』がハイレベルの争いを展開。その前の2022年は『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』と『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』、2021年は『名探偵コナン 緋色の弾丸』と『るろうに剣心 最終章 The Final』……と、GWが定位置になった「コナン」を軸に、他にも強力な作品が公開され、しのぎを削ってきた。

今年(2024年)も『陰陽師0』、『ゴジラ×コング 新たなる帝国』、『劇場版ブルーロック EPISODE 凪』などもるが、『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』が一人勝ちの様相も呈している。

2024年の日本国内の映画興行収入は現在(4/29)、『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』が97億円でトップ。メガヒットの指標となる100億円が確実。次いで「コナン」が65億円で、こちらもこのままのペースなら余裕で100億円超えが予想される。

では、このゴールデンウィークの後にも2024年はメガヒット作品が現れるのか。そこは未知数になりそう。つまり「確実」な作品が存在しないのである。例年、ゴールデンウィークの次に、興行で爆発的ポテンシャルをもつのが夏休みだが……。

ここ数年、夏から秋にかけては邦画のアニメーションで、メガヒットを狙える作品が必ず公開されてきた。

2023年『君たちはどう生きるか』 93.1億円

2022年『ONE PIECE FILM RED』 203.3億円

   『すずめの戸締まり』 147.9億円

2021年『竜とそばかすの姫』 66億円

2020年『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』 404.3億円

2019年『天気の子』 142.3億円

新海誠、細田守、宮崎駿と、監督の名前で客が呼べる作品が相次いでいたのも事実。しかし2024年は、そのポテンシャルを預けられたのが、『映画けいおん!』や『映画 聲の形』などの山田尚子監督の『きみの色』(8/30公開)、あるいは『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』チームによる『ふれる』(秋公開)だ。作品の仕上がりや宣伝戦略によって、どの程度のヒットになるか現状では予想が難しいが、だからこそ“大化け”も期待できる。

邦画の実写作品では、『キングダム 大将軍の帰還』(7/12公開)。前作が興収56億円。そして「踊る大捜査線」の12年ぶりとなる新プロジェクト(秋公開)がある。12年前の作品『〜THE FINAL 新たなる希望』が59.7億円。ともにメガヒットなると、ハードルが高くなる。

洋画に目を移すと、昨年の「スーパーマリオ」や、その前年の『トップガン マーヴェリック』のように100億円超えの作品が、2024年、これから登場する可能性は少なそう。ゴールデンウィークが終わってすぐの『猿の惑星/キングダム』(5/10公開)は、その仕上がりの高さを予感させるも、前作『〜:新世紀』が10億円に届かなかったので、そこからの上積みが目標になる。

むしろ『マッドマックス:フュリオサ』(5/31公開)が映画ファンの枠を超えて、どこまで人気が広がるか、ポテンシャルは大きそうだ。前作の『〜怒りのデス・ロード』は興収18.1億円だった。

その後の夏休みは、マーベル作品の中でも日本でも人気が高い『デッドプール&ウルヴァリン』(7/26公開)や、ディズニーの人気アニメの続編『インサイド・ヘッド2』(8/1公開)あたりが夏休み映画の期待作。『デッドプール』は1作目が興収20億円、2作目が18億円。『インサイド・ヘッド』の前作は40.4億円

期待を高めたいのは、むしろ秋。『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』(10/11公開)だ。前作の『ジョーカー』が50.6億円という破格の興収を記録。洋画の不振が顕著になっていたここ数年、日本でも大きなブームを起こしたので、レディー・ガガも共演するこの続編は、2024年の「大穴」の可能性も秘めるが、さて……。

このように邦画・洋画ともに、メガヒットが確実視される作品を見つけづらいのが、2024年のこれからのシーズン。しかしそんな時にこそ、思いがけないセンセーションを引き起こす映画が突然現れるのも、日本の映画興行である。2018年の『ボヘミアン・ラプソディ』や2022年の『THE FIRST SLAM DUNK』がその例で、想定外のサプライズで特大ヒットを達成する作品が、映画業界全体で望まれる。

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』 (C) & TM DC (C) 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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