一気に3人もアリ? エミー賞で日本人俳優が受賞したら初の快挙 「SHOGUN 将軍」最多ノミネート
日本人俳優として初の快挙がもたらされるかもしれない。それも一気に3人も……。
7/17(現地時間)に発表された第76回エミー賞のノミネーションで、「SHOGUN 将軍」はドラマシリーズ部門の作品賞など22部門、25ノミネート(複数入った部門がある)を果たし、ノミネート数としては今年度の最多を記録。つまり受賞の可能性が限りなく高い一本となった。これは予想どおりとはいえ、うれしい結果である。
授賞式は9/15(現地時間)とまだちょっと先だが、早くも期待が高まる。エミー賞はショービジネス界の「4大栄誉」=EGOTのひとつ。EGOTとは、E(エミー賞/テレビ)、G(グラミー賞/音楽)、O(オスカー/映画)、T(トニー賞/舞台)の総称で、今年はアカデミー賞で『ゴジラ-1.0』や『君たちはどう生きるか』の受賞が賞賛を浴びたように、それと並ぶ快挙が9月に待ち受けていそうな気配である。
最も注目されるのは「俳優」だろう。アカデミー賞もそうだが、なんだかんだ言って俳優部門は授賞式の“華”。そこに今回のエミー賞では、真田広之(ドラマシリーズ主演男優賞)、アンナ・サワイ(同主演女優賞)、浅野忠信と平岳大(同助演男優賞)と日本人俳優が4人もノミネートされたことで、日本での注目はかつてないほど高まる。しかも複数の受賞が現実味を帯びている。真田広之や浅野忠信は早い時期からエミー賞予想でトップの位置につけていたし、アンナ・サワイも先日のテレビ批評家協会賞(TCA賞)で主演女優賞を受賞。つまり3部門すべてでの日本人の受賞がありえるのである。
これがなぜ快挙なのかといえば、過去75回のエミー賞の歴史で、日本人俳優の受賞がなかったから。衣装デザイン賞のワダエミ(「エディプス王」)や、特殊メイクアップ賞の矢田弘(「恋するリベラーチェ」)、美術賞の鈴木智香子(「ハウス・オブ・ライズ」)、音響効果賞の小山吾郎(「私が愛したヘミングウェイ」)などの受賞歴はあったが、俳優部門ではノミネートどまり。それも数少ない。
2007年、マシ・オカが「HEROES(ヒーローズ)」でドラマ部門助演男優賞にノミネート。その前となると、1981年、今回と同じ原作を基にした「将軍 SHOGUN」で三船敏郎、島田陽子、目黒祐樹がそれぞれミニシリーズ&テレビ映画部門の主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞にノミネートされたのみ。彼らは誰も受賞に至っていない。島田陽子は同作でゴールデングローブ賞は受賞したものの、エミー賞は獲れなかった。
ちなみに「将軍 SHOGUN」は1981年のエミー賞でミニシリーズ部門の作品賞、シリーズ部門の衣装デザイン賞(西田真)では受賞を果たしている。
こと俳優に関しては、EGOTにおいて日本人が受賞に到達するのは非常に難しい。アカデミー賞では、1958年、『サヨナラ』でのミヨシ・ウメキ(ナンシー梅木)の助演女優賞、ただ一人。ノミネートでは、菊地凛子(『バベル』)、渡辺謙(『ラスト サムライ』)、パット・モリタ(『ベスト・キッド』)、マコ岩松(『砲艦サンパブロ』)、早川雪洲(『戦場にかける橋』)の例があった。
またトニー賞でも俳優は、渡辺謙(「王様と私」)、マコ岩松(「太平洋序曲」)、ミヨシ・ウメキ(「フラワー・ドラム・ソング」)のノミネート歴だけで、受賞はゼロ。
ここ数年、アカデミー賞ではアジア系の作品、俳優の躍進がめざましく、エミー賞でも2年前の2022年、「イカゲーム」でイ・ジョンジェがドラマシリーズ部門の主演男優賞受賞が大きな話題となった。前回のエミー賞(脚本家組合のストなどで今年の1月に開催)では、「BEEF/ビーフ」で受賞したスティーヴン・ユァンやアリ・ウォンもアジア系。そうした流れに乗った感もありつつ、今回の「SHOGUN 将軍」で日本人俳優が複数部門で受賞するとなれば、歴史を変える瞬間が訪れると言っていいかもしれない。少なくとも、これまで日本ではあまり大々的に報じられることのなかったエミー賞が、授賞式まで大きな注目を集めるのは間違いなさそうだ。