ソニーがゲーム用に「スマホを冷やす」専用機器を発表。誰向けなのか?
9月12日、ソニーがXperiaブランドからゲーミング向けの新製品を発表しました。最新モデル「Xperia 1 IV」に冷却装置や拡張ポートを追加する専用オプションとのことですが、いったいどんな人に向けた製品なのでしょうか。
汎用の冷却ファンとは違う「専用設計」
スマホのゲームといえば細切れの時間でも遊べるカジュアルなものが人気ですが、スマホの性能向上に伴い、PCなどで人気のeスポーツタイトルの移植が続いています。
バトロワゲーム「PUBG」のモバイル版は、NTTドコモがプロリーグを主催。2022年前半は「Xperia 1 III」、2022年後半は最新モデルの「Xperia 1 IV」を公式端末として採用しています。
メーカーによっては「ゲーミングスマホ」を開発するところもありますが、ソニーはいまのところ「普通」のXperiaに、ゲームや配信向けの機能を搭載する方針です。
そして今回、Xperia 1 IV専用のゲーミングギアとして登場したのが「Xperia Stream for Xperia 1 IV」です。
構造としては、Xperia 1 IV本体をはめ込んで使うアダプターのようになっており、ゲームを遊ぶときだけ簡単に着脱できる仕組みのようです。
持ちやすさも重要です。スマホを横向きに持つと2本の親指で操作することになりますが、ゲームによっては人差し指を加えた4本指が有利な場合があります。
そこでソニーは、プロeスポーツチームSCARZの監修のもと、4本指や5本指を使う場合の持ち方も想定したといいます。
スマホの発熱対策として重要なのが冷却です。スマホ用の冷却ファンとしては安価なものが多数出回っており、本体に装着して背面を冷やすことはできます。
しかし指で操作するタッチ画面の温度が上がってくると、手汗で操作がしづらくなり、熱で不快感も増してきます。
そこでソニーは、背面から吸い込んだ冷たい空気を前面に流すことで、画面も同時に冷やせることを特徴としています。
ほかにも専用設計のメリットとして、ソニーは温度が上がりやすいのはどの部分なのか分かっている(チップセット部分)ため、そこを重点的に冷やしているとのことです。
冷却ファン以外に、拡張ポートを備えたドック機能もあります。搭載するポートは3.5mmオーディオジャック、HDMI、有線LAN、充電用USB Type-Cの4つです。
スマホに有線LANは意外な組み合わせかもしれませんが、大会などではWi-Fiでは接続が不安定になることがあるため、有線LANが使われているといいます。
また、バトロワやFPSのようにわずかな遅延が勝敗を左右しかねないゲームでは、有線LANや有線イヤホンのほうが有利な場面が出てきます。
各ポートにつないだケーブルは本体の「下方向」に出ており、スマホを持つとき邪魔にならないよう配慮されています。
Xperia 1 IVでゲームを遊びたい人には便利なオプションに見えますが、Xperia Streamの市場想定価格は税込2万4000円と、一般的な冷却ファンやUSBハブに比べてかなり高価です。
この点についてソニーは、eスポーツも想定した品質で、冷却装置と拡張ポートを一体化した専用設計であることから、十分に価格に見合った価値はあると説明しています。
10月14日にはSIMフリー版のXperia 1 IVをセットにしたパッケージ「Xperia 1 IV Gaming Edition」も発売します(市場想定価格は税込19万円)。別々に買うよりも少しオトクな価格になります。
これらの製品は、9月15日からソニーの直営店や一部の家電量販店に、また9月15日から18日に開催される「東京ゲームショウ2022」に、展示される予定です。
「ゲーミング」はスマホの新たな魅力になるか
最近のXperiaシリーズは、カメラ性能を中心に映像制作やYouTuberといったクリエイター用途を前面に打ち出してきました。
実際にクリエイターとして活躍する人は少ないのですが、クリエイターを目指す人や憧れる人、自分もクリエイターのように撮りたいという人にも訴求できるわけです。
同様に、ゲームもスマホの魅力を高めるものとして注目されています。特にeスポーツタイトルはスマホの性能を限界まで要求するため、メーカーにとって腕の見せどころになります。
eスポーツといえばまだPCが中心ですが、モバイルでもプロとして活躍する選手やストリーマーが増えており、PCよりも若いファンや視聴者層が拡大しているといいます。
これから大会などでXperia Streamが使われる事例は増えそうです。自分もゲームがうまくなりたいと思った人たちは、Xperiaに目を向けることになるでしょう。
しかも写真や動画は個人の好みに左右される部分もありますが、ゲームでは勝ち負けがはっきりと分かります。デバイスの性能差で負けるのは実力で負ける以上に悔しいので、ワンランク上の製品に手を伸ばす人が増えるはずです。
こういった背景があることから、高価格帯の製品を売りたいスマホメーカーにとっても、ゲーミングは「負けられない」カテゴリとなっています。