戦々恐々の東京五輪の放送権交渉
2020年の東京五輪決定は喜ぶべきことだが、日本のテレビ界にとっては難しい問題を抱えることになった。これから始まる放送権料交渉である。時差がない日本のテレビ局が一番有利とあって、おそらく国際オリンピック委員会(IOC)側はべらぼうな金額を要求してくることになるだろう。
五輪の放送権料は高騰の一途をたどってきた。NHKと日本民間放送連盟(民放連)から成るジャパン・コンソーシアム(JC)は2010年バンクーバー冬季五輪と12年ロンドン夏季五輪で合わせて325億円(推定)をIOCに支払ったとされる。バンクーバー五輪分が60億円、ロンドン五輪分が265億円といわれた。
その後の14年ソチ冬季五輪と16年リオデジャネイロ夏季五輪はセットで、JCは360億円(推定)を払う見通しだ。前の冬・夏五輪の1・1倍となる計算である。ちなみに放送権料の負担額はNHKが70%、民放連は30%となっている。
一番でかい放送権料を払う米国をみると、NBCが既に14年ソチ冬季五輪から20年夏季五輪までの冬夏4大会を合わせて43億8000万ドル(約4500億円)で契約している。内訳をみると、ソチ五輪とリオ五輪で20億ドル、18年平昌冬季五輪と20年夏季五輪では23億8000万ドルとなっているようだ。
JCの18年平昌と20年東京五輪の本格的な放送権交渉はまだ始まっていない。従来通り、たぶん18年五輪、20年五輪のパッケージ交渉となるだろう。IOCがどんな数字を出してくるか、考えるだけでこわい。
東京五輪に向け、日本のテレビ界は間違いなく活気づくはずだ。オリンピックスポーツを積極的に扱っていくことになるだろう。東京五輪の「商品価値」は従来の2倍くらいには跳ね上がることになるとみる。
では放送権料が倍になったらどうする。つまり18年平昌五輪と20年東京五輪で合わせて700億円を突破したら、とてもじゃないけれどJCが持ちこたえるのは至難の業となる。500億円を超えても、賄いきれなくなるのではないか。
実際、民放連はロンドン五輪後、五輪放送をめぐる収支が赤字だったことを明らかにしている。赤字はJCが五輪の放送権料を支払い始めた1984年五輪以降、初めてのことだった。もう限界なのだ。インターネット放送などを工夫し、収入源を増やす努力が求められることになる。
ついでにいえば、予算上の都合があるとはいえ、放送権料の支払いは円建てではなく、かつてのようにドル建てのほうが賢明ではないか。
この放送権料の話は一般の人には無関係に見えるが、実はNHKの受信料やスポンサーの商品購入者に跳ね返っていくものである。だからJCと東京五輪の放送権料交渉の行く末には少しは注目したほうがいいと思うのだ。