10点快勝でヤングなでしこがグループ単独首位に。中国に勝てばU-20W杯出場権獲得に王手
【7人がゴール。ゴールラッシュで勝ち点3】
力の差を見せつけた。ウズベキスタンで開幕した AFC U20女子アジアカップ初戦。U-20女子日本代表(ヤングなでしこ)は、U-20ベトナム女子代表に10-0で勝利し、勝ち点3を積み上げた。
今大会で背番号10を背負うことになった松窪真心が前半でハットトリックを達成し、試合の流れを決めた。
前半11分、2列目から飛び出してボランチの角田楓佳のスルーパスを引き出し、相手を一人切り返しでかわしてゴールネットを揺らした。
日本は全体をコンパクトに保ちながら、攻撃では中央とサイドを効果的に使いわけて相手陣内でのハーフコートゲームを展開。23分には角田が芝に左足を取られて捻挫するような形で負傷交代を強いられることとなってしまったが、交代で入った大山愛笑がその穴を埋めた。
31分には、米田博美のパスを受けた松窪が、ドリブルから左足を一閃。鮮やかな弾道が右隅に決まった。43分には大山が起点となり、辻澤亜唯のシュートのこぼれ球に松窪が詰めて3-0。
後半、守備を固めたベトナムのゴール前にはスペースがなかったが、日本は交代選手が違いを生み出す。左サイドに入った笹井一愛が果敢に仕掛けてチャンスを創出。前線ではテクニックのある土方麻椰や背後への抜け出しを得意とする辻澤も効果的な動き出しを見せ、大山の正確な長短のパスが相手の守備ラインを崩壊させた。
56分、交代で右サイドに移った辻澤のドリブルを起点に、スムーズな連係から土方が4点目を沈める。60分を過ぎると、狩野倫久監督は交代カードを次々に切り、選手の配置を変えて攻撃パターンの多さを示した。
「練習の中でやってきた攻撃の崩しのバリエーションやコンビネーションを少しずつ出せるようになった感覚がありました」というセンターバックの林愛花の言葉からも、後半は積み上げてきた連係と即興力がしっかりと発揮されていたことがわかる。
64分には、笹井のパスから林がミドルシュート。ベトナムGKル・ティ・トゥが懸命に弾いたボールを土方が押し込んでリードを広げた。
60分には中谷莉奈と白沢百合恵、73分には小山史乃観が投入され、再びギアを上げた。66分に笹井のクロスから辻澤のダイレクトボレーが決まり、70分には、センターバックからボランチに移った佐々木里緒が美しい左足ループシュートを決めて7-0。73分に笹井が得意のドリブルから8点目を決め、終盤には米田と白沢も追加点を決めてゴールラッシュを締めくくった。
【中国に勝てばU-20W杯出場権獲得に大きく前進】
「とにかく楽しもう!今まで支えてきてくれた方々への感謝の気持ちを持ってプレーしよう」
キャプテンの林は、試合前の円陣で仲間たちにそう声をかけたという。試合中も集中力を切らさず、声をかけ合った。
ベトナムは小柄な選手が多く、粘り強い守備が特徴。松窪が「前半はチームとしても堅さがあった」と振り返ったように、立ち上がりは堅さも見られたが、後半は躍動し、終わってみれば7人がゴール。アシストも含めて13人がゴールに関わった。
一方、打たれたシュートは1本。日本は高く設定したラインの背後を狙われるリスクは常に抱えているが、そこをつかれる場面はほぼなかった。
今大会の日本はドリブルが得意な選手が多いのも特徴だが、この試合では途中出場の笹井の存在感が際立った。これまで年代別での代表経験がなく、初めての国際大会に臨む気持ちを「ワクワクした気持ちでいっぱいだった」と表現した167cmの長身ドリブラーは、翌日のオンライン取材で試合を楽しそうに振り返った。
「海外の選手は日本人に比べて足が長くて伸びてくるところがありますし、守備も間合いをしめて一気に(プレッシャーに)来ることがあるので、ボールを相手に晒さず、触らせないような間合いで、大きく、大胆にドリブルすることを意識しました」
普段は、男子代表の上田綺世のプレー動画などを見てイメージトレーニングをしているという。今大会では「全試合ゴール」と「大会得点王」という目標を掲げる。もちろん、日本でその目標を持っているのは笹井だけではないだろう。
次は中2日で7日に中国と対戦する。
中国は、A代表が昨年10月のアジア2次予選でパリ五輪への出場権を失い、シュイ・シンチア監督が退任。昨年12月から、ワン・ジュン監督が暫定でA代表を指揮しながらU-20女子代表と兼任している。昨年末のアメリカとの親善試合(1-2と0-3で敗戦)では、今回のメンバーからフル代表に5人が入った。
初戦は北朝鮮と1-1で引き分けており、得失点差も明暗を分ける。グループステージ突破に重点を置き、守備を固めてくる可能性もある。そして、最終ラインには170cm台の選手から180cmを超えるGKまで、フル代表顔負けの長身選手が揃う。守備を固められたら崩すのは容易ではないだろう。1対1のバトルにも注目だ。
「中国の選手は身長もあって足も長いので、ファーストタッチをいつもより前におかないと、足が伸びてくる印象があります」(林)
「攻撃ではテンポよく回すことや、起点になって縦にボールをつけることを継続して、守備では1対1で負けないように頑張りたいです」(米田)
「初戦に比べて球際の強度はかなり上がってくると思います。その中でも、普段WEリーグで強度の高い中でやらせてもらっている自信を持ってプレーできたらなと思います」(笹井)
日本はこの試合に引き分け以上で、グループステージ突破に大きく前進する。突破すれば、上位4位に与えられるU-20ワールドカップ出場権を獲得できる。
U-20中国女子代表との第2戦は、日本時間3月7日20時キックオフ。DAZNでライブ配信される。