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メスの秋田犬「こっちゃん」のニュースから医療過誤に遭わないためにできることとは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:Paylessimages/イメージマート)

いまやペットは家族の一員ですね。ペットの具合が悪いと動物病院に連れていきます。愛するペットに早くよくなってもらいたいからです。

現在のペット医療は以前より高齢化に伴いより専門性が大切に必要になってきています。ペットの治療は多岐にわたっています。人医療は、内科や外科や皮膚科などと分かれていますが、一般的に全部の科を診ます。いまでは獣医療は、眼や脳脊などとより専門性を重視した動物病院も出てきています。

筆者は医療過誤が起こってはいけないことだと思い慎重に治療をしています。そのため、血液検査や尿検査や画像診断をするようにしています。人間のすることなので、間違いがなくなることが難しいですね。それで仕事柄、ペットの医療過誤のニュースを読むと、どうしたら防ぐことができるのかと考えてしまいます。

今日は、メスの秋田犬の「こっちゃん」のニュースから医療過誤に遭わないためにどうしたらいいかをご提案をします。まずは、こっちゃんの医療過誤についてお話します。

メスの秋田犬のこっちゃんの死因は?

秋田犬のイメージ写真
秋田犬のイメージ写真写真:PantherMedia/イメージマート

毎日新聞によりますと、愛犬の死を巡って獣医師と訴訟で争った経験がある飼い主の話が掲載されていました。

 待ち合わせた喫茶店に女性はたくさんの写真を持って来てくれた。飼っていたのはメスの秋田犬「こっちゃん」。写真の中で女性や夫に抱かれて幸せそうだ。「目がぱっちりして、性格はとっても穏やかでね」。しかし、夫婦とこっちゃんの日々は7年前、突然終わった。8歳だった2014年7月、救急動物病院に運び込まれ、子宮蓄のう症と判明して緊急手術を受けたが、手遅れだった。

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つまり秋田犬のこっちゃんは、始めに来院した動物病院で「子宮蓄膿症」がわからず、救急病院で子宮蓄膿症がわかり緊急手術をしたけれど、手遅れで命を落としたということなのです。こっちゃんのご冥福をお祈り申し上げます。

子宮蓄膿症は、見落としやすい疾患なのでしょうか。それでは、子宮蓄膿症とはどんな疾患なのかを見ていきましょう。

子宮蓄膿症とは?

写真:ideyuu1244/イメージマート

子宮は、メスの腹腔内にある臓器です。犬や猫はY字型をしています。子宮蓄膿症とは、その子宮に細菌感染が起こることで膿がたまり、さまざまな症状を引き起こす病気です。子宮は、赤ちゃんを育てる臓器なので、かなりの量の膿がたまります。

症状

□発熱

□食欲不振

□元気消失

□多飲多尿

□腹部膨満

□吐く

□オリモノが出ている

□陰部が腫れている

□腰などを持つと嫌がる、痛がる

□感染が長引くと敗血症

□細菌が持っている内毒素がエンドトキシンショックを引き起こす

このような症状です。熱があり食欲がないというのは、臨床現場ではよく見られる症状なので、単なる感染症かと思われることもあり見落とされるのです。そして、子宮蓄膿症には以下のふたつのタイプに分かれます。

開放性子宮蓄膿症

この症例だと子宮から膿や血などが出ているので、被毛や寝床を汚すので、わかりやすいので比較的医療過誤にはなりにくいです。陰部からずっとオリモノが続く場合は、これにあたります。

閉塞性子宮蓄膿症

この症例の場合は発見が遅れることがあります。

開放性と違って、膣から膿や血やオリモノが出てこないからです。子宮の出口が閉まっていて、子宮の中にだんだんと膿がたまり続けます。

閉塞性の膿の逃げ場がないため、治療が遅くなると子宮破裂して膿がお腹の中に漏れ出し腹膜炎を起こすと命の危険になることもあります。

子宮蓄膿症の医療過誤に遭わないために飼い主ができること

写真:Paylessimages/イメージマート

子宮蓄膿症は、メスの避妊手術をしていない子がなります(避妊手術をしている子はほぼならないです)。

年齢も7歳以上のシニアの子がなりやすいです。よく観察しているつもりでも、気がついたら重篤な症状になっていることがあります。獣医師が的確に診断してくれればいいですが、そうじゃないこともあります。

そのためには、避妊手術をされていないメスの犬や猫を飼われている飼い主は以下のことに気をつけてください。

犬の場合は、半年ごと(10カ月ごとの子もいます)にの発情があるので、ちゃんと記録しておく

 猫の発情は犬のように膣から出血がないので発情がわかりにくいです。

発情期の後の1カ月後ぐらいが子宮蓄膿症になりやすいので、よく動作を観察する

犬や猫がしきりに陰部の辺りを舐めていないか観察

毎日、陰部を観察する

 ・オリモノや血や膿がないか

 ・毛が抜けて腫れていないか

動物病院で避妊手術をしていないことを告げて、子宮蓄膿症の疑いがないか尋ねる

などをして、早期に子宮蓄膿症の治療をしてもらいましょう。一般的には外科手術になります。

他の医療過誤に遭わないために

それでは、どのようにすれば、医療過誤に遭わないか考えましょう。獣医師の方もちゃんと診察しているけれど、あってはならないけれど見落としたりするので、以下のことに気をつけてましょう。

□血液検査をする

 ・子宮蓄膿症は、細菌感染なので白血球の値が高値、CRPや新SAAなどの炎症マーカが高値

□エコーやレントゲン検査などの画像診断をする(一般診療でもこの程度は検査可能なことが多い)

 ・閉鎖性子宮蓄膿症の発見は遅れがちになりますが、画像診断をすると判明しやすい

□普段から信頼のできるかかりつけ医を持っておく

□かかりつけ医が休診のときがあるので、2、3軒の信頼できる動物病院を見つけておく

□治療していてもすっきりしない場合は、セカンドオピニオンに行く

□2次診療を紹介してもらう

ペットは大切な家族です。筆者は、医療過誤はあってはならないことだと思い日々診察しています。しかし、人間のすることなので絶対にしないとは言い切れないので、過去の医療過誤の症例を見て防ぐ方法を検討しています。ペットは高齢になり、診断が難しいがんなどの病気も増えていることは事実なので、飼い主も愛犬や愛猫のなりやすい病気の知識を持っていることも大切ですね。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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