天安門事件の記念館が閉館。香港でも当局の締め付けか?
中国で民主化を求める学生らが武力鎮圧された天安門事件。6月4日で、32周年となるのを前に、事件の資料を集めて公開していた香港の「六四記念館」が、2日、閉鎖を決めた。香港当局の立ち入りを受け「許可証」がないと指摘されたためだという。
閉鎖の理由は「娯楽所の許可がない」?
六四記念館の運営を支援してきた香港市民支援愛国民主運動連合会(以下、支連会)によれば、1日午後、記念館は、食物環境衛生署の立ち入り調査を受けた上、「公衆娯楽場所の許可証がない」として、関連する条例の違反に当たると指摘されたという。記念館では職員や来館者の安全を考慮し、閉館を決めたという。
香港では、これに先立ち、天安門事件の追悼集会の開催も禁止されていた。去年に続き、新型コロナ対策がその理由とされた。
6月4日の事件から32周年になるのを前に、事件の再検証を嫌う中国政府の意向を汲み、香港当局が圧力を加えた可能性は高い。
事件を風化させないために
六四記念館は、1989年6月4日に、中国の民主化を求める学生らを人民解放軍が武力鎮圧した天安門事件に関する写真や遺品などの資料を集め、公開していた。その目的は事件を記録し、風化させないためだ。
記念館は2014年にオープンした後、一時期閉館。事件から30周年にあたる2019年、再開するが、その直前に何者かの侵入を受け、備品の1部が破壊されるという“いやがらせ”も経験した。
中国本土では、天安門事件についてはいまだにタブー。中でも事件で子供を失った親たちは、事件の真相究明と、公式な謝罪や補償を求めているが、中国政府は、「事件は解決済み」として、その声を無きものとしている。事件を公に語ることが許されない中国で、若い世代は事件の詳細をほとんど知らない。
中国の若者が事件を知らないからこそ
一方、一国二制度の下で一定の言論の自由が保たれてきた香港では、これまで事件の検証なども比較的自由だった。六四記念館もその1つだが、中国が香港への統制を強め、「香港国家安全維持法」を施行するなど、そうした環境が変わりつつある。
六四記念館は、香港へ観光にくる中国本土の若者らが、天安門事件に触れることのできる数少ない場でもあった。
寄贈された弾痕のヘルメット
事件で、当時19歳の息子を失った張先玲さんは、息子の被っていたヘルメットを記念館に寄贈した。北京に住む張さんは、自由に香港に行けるわけではない。しかし、息子の形見である、弾丸の跡が残るヘルメットを記念館に寄贈した理由について、こう話していた。
「博物館にあれば、多くの人に見てもらえます。銃を撃って人を殺したのは事実であるという証拠になりますから」