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台湾の台北で華やかにプライドパレード「日本も早くそうなって」

宮崎紀秀ジャーナリスト
メイン会場はなんと台北市政府前(2024年10月26日台北 筆者撮影)

 台湾の台北中心部で、性的志向やジェンダーへの偏見に反対し、その多様性を祝う大規模なプライドパレードが開催され、華やかなムードに包まれた。日本からの参加者の一人は「LGBTを受け入れてくれる社会になったら、みんなが生きやすくなる。日本も早くそうなって欲しい」と訴えた。

台北市政府前でプライドパレード

背景に見えるのは街の象徴「台北101」(2024年10月26日台北 筆者撮影)
背景に見えるのは街の象徴「台北101」(2024年10月26日台北 筆者撮影)

 台北で26日正午から始まったプライドパレードのメイン会場は市政府前の広場。メインステージに加え、協賛企業や関連団体が売店を並べ大勢の市民で賑わった。

「街に受け入れてもらえている感覚があって、『らしくいられる』環境が台湾にはあると思うので、それを求めて来ている人も多いと思う」
 そう話すのは日本でLGBTの支援を行うNPO法人「カラフルチェンジラボ」の三浦暢久さん(47歳)。今回、日本から10人程で参加し、アクセサリーなどのレインボーグッズを売る店を出した。

「理解の浸透度の違いを感じます」と話す三浦暢久さん(2024年10月26日台北 筆者撮影)
「理解の浸透度の違いを感じます」と話す三浦暢久さん(2024年10月26日台北 筆者撮影)

 台北に来て、日本との大きな違いを感じたという。
「町中で普通に当事者の子たちが手をつないで歩いたりして、素敵だなあと思いながらみていた。パレードが一般的になっているのが影響しているのかなと思いました」
 日本とは大分違いますか?と尋ねると、「それは違いますよ」と大きくかぶりを振った。
「日本では町中で手をつないで歩くなんてまずできないので、それは文化の違いや理解の浸透度の違いを感じますよね」
 三浦さんはこうした違いを日本でもぜひ知ってもらいたいと考えている。
「早く台湾のように同性婚ができるようになるなど、国をあげて市をあげて、市民の皆様もLGBTを受け入れてくれる社会になってくれたら、みんなが生きやすくなるのになあと思っているので、日本も早くそうなって欲しいと心から思っています」

三浦さんたちが販売したグッズ(2024年10月26日台北 筆者撮影)
三浦さんたちが販売したグッズ(2024年10月26日台北 筆者撮影)

オープンで楽しい

「自分たちが楽しみたくてやって来た」
 口を揃えるタックさん(45歳)とタカヤさん(38歳)はパレードに参加するため滋賀県からやって来たという。

「日本だとやっぱり周りの目が好奇の目というか。こっちは違って、オープンで楽しい」
 とタックさん。タカヤさんは「みんな生き生きしているかな」と会場で出会った人たちの印象を語った。

タックさん(左)とタカヤさん(右)(2024年10月26日台北 筆者撮影)
タックさん(左)とタカヤさん(右)(2024年10月26日台北 筆者撮影)

外国からも多数参加

 台湾は5年前にアジアで初めて同性婚を合法化した。そのためか日本のみならず外国からの参加者も目立った。
 華やかな衣装をつけたグループは、マレーシアからの参加グループだった。
 プラスティックフリー(31歳)さんは参加の理由を「第三の性やトランスジェンダーに関心を持ってもらいたくて」と話した。

「すごく元気があって、楽しい」
と笑顔で話したのは、4日間の日程で韓国から参加したというミンアさん(36歳)。
「韓国では(プライドパレードに)参加するのはとても難しいので、台湾にやってきて楽しもうと思いました」

マレーシアから参加したグループ。真ん中がプラスティックフリーさん(2024年10月26日台北 筆者撮影)
マレーシアから参加したグループ。真ん中がプラスティックフリーさん(2024年10月26日台北 筆者撮影)

同性婚の合法化で変化した社会

 同性婚の合法化は、国際社会に「台湾が多様性を重視する民主的な社会」であることを印象付けたが、台湾内部にも変化を与えたという。
「特に(同性同士の)結婚ができるようになってから、社会のゲイに対する友好度がだんだんよくなってきました」
 台湾人のオリオさん(36歳)の印象だ。
 オリオさんと共に参加していたポールさん(34歳)は「男性が男性を好きになるのも、女性が女性を好きになるのも、それも一つの自由です」と開放的な台湾の現状を評価する。

猫も着飾って参加(2024年10月26日台北 撮影筆者)
猫も着飾って参加(2024年10月26日台北 撮影筆者)

 気温は30度に達し、蒸し暑い1日だった。しかし、プライドパレードに参加した人たちは、エネルギッシュで明るく、ある人は着飾り、ある人は踊り、ある人はレインボーの旗を振って歓声を上げた。
 プライドパレードに参加して10年目という台湾人のウイルソンさん(32歳)の言葉は、シンプルにして深く染み入った。
「(プライドパレードは)とてもいいと思います。皆が自分らしくしているから。愛は男も女も関係ない。自分が楽しいことが一番重要ですよ」

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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