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台湾に嫁いで台湾を称賛する中国人に中国がブチ切れ?

宮崎紀秀ジャーナリスト
中国の習近平国家主席(2024年10月24日ロシア・カザン)(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 台湾人と結婚して、ユーチューブで台湾の生活を称賛する若い中国人たちに対し、中国政府がネット上で攻撃を仕掛けているという。中国側は、民主的で自由な台湾の様子が、国民の間に広がるのを警戒しているとみられる。

台湾を称賛する中国人とは?

 台湾に暮らす中国人の配偶者は38万人以上。中国人配偶者の中には、中国政府の意に沿うような影響を台湾社会に与えようとしているのでないかと疑いを持たれる人もいる。一方、若い世代では台湾での生活を称賛する動画を発信するユーチューバーたちも現れた。

 台湾の新聞「自由時報」によれば、中国人配偶者のユーチューバーたちは、台湾の医療や法治、政府の効率が中国より優れているといった内容を自発的に紹介しているが、中国の統一工作に詳しい台湾政府の関係者の話として、こうしたユーチューバーたちが数か月前からネット上で攻撃されており、その背後には中国政府がいるという。

 「台湾政府に買収されている」などと動画の内容の信憑性を疑わせようと意図したとみられるコメントがつけられたりしたという。また、ユーチューバーの中国にいる家族が脅される可能性もあり得るという。

中国が嫌がるのは...

 自由時報の取材に応じた専門家によれば、こうした中国人配偶者のユーチューバーは、人生の新たな経験をシェアしようとしており、取り上げる話題は必ずしも政治的な内容とは限らない。医療や文化の違いといったものなので、却って伝播力があり、中国側が恐れているのではないかという。

 また、そうした動画がティックトックなど中国で使われる動画サイトに転送されれば、中国の若者も目にすることになる。すると中国の若者たちも、「台湾は中国の一部」という中国政府の主張に反して、台湾と中国が全く違う社会であることを知ってしまう上、中国にいる自分たちの生活が台湾の生活よりも悪いことにも気づいてしまい、長く植え付けられてきた愛国主義とのギャップが生じてしまう。
 中国人配偶者による動画は、こうした「反洗脳」の作用を持つため、中国側はその影響力を弱めようとしている、と専門家は強調している。

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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