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中国が天安門広場で台湾人を拘束。大国中国が見逃せない旅行者の小さな行為とは?

宮崎紀秀ジャーナリスト
天安門。向かって左が「中華人民共和国万歳」の標語(写真:アフロ)

 近日、台湾の市民2人が中国で相次いで身柄拘束されたという。一人は北京の天安門広場で写真撮影をした「だけ」だが、中国は旅行者の小さな行為さえ見逃さなかった。

身柄を拘束されたワケは?

 台湾の対中国窓口機関にあたる海峡交流基金会の羅文嘉秘書長が15日明かした。 一人は北京の天安門広場でピースサインを作って写真を撮ったところ、中国の警察に拘束され、期間は3日間に亘ったという。また別の一人は新疆ウイグル自治区でドローンを使って空撮したという。いずれもすでに釈放され、無事、台湾に戻ったという。

羅氏は「中国は非常に不穏な全体主義社会で、政権は高度に敏感で緊張している」と説明した上で、台湾市民に中国への不必要な渡航を避け、渡航する場合には細心の注意を払うよう呼びかけた。

 天安門広場はかつて中国政府が学生たちを武力で鎮圧した事件の現場であり、新疆ウイグル自治区は民族問題がくすぶる地域。いずれも中国当局がナーバスになる場所で、旅行者らが身柄拘束される事態はあり得るが、その理由が意外と小さかった。

中国が嫌がるのは...

 台湾メディアによれば、天安門広場で拘束されたのは台湾人の若い女性旅行者。問題は写真撮影の際の行為だった。

 北京中心部に位置する天安門は中国の誇りと象徴。毛沢東の肖像画と共に中国の正式名称を使って「中華人民共和国万歳」という標語が大きく掲げられている。

 女性旅行者は、天安門を背景に写真を撮る際に、その標語の文字列の「人」と「共和」がピースサインの指で隠れるようにして撮影したという。すると出来上がった写真は「中華◯民〇〇国万歳」となる。隠れた文字を飛ばして読めば、「中華民国万歳」になる。中華民国は、台湾の政権の正式名称である。

女性が模倣したとみられるインフルエンサーの写真(写真提供yellowweiwei)
女性が模倣したとみられるインフルエンサーの写真(写真提供yellowweiwei)

 実は、以前に同様のことを台湾のインフルエンサーがやって、撮影した写真をSNSにアップしていた。今回、身柄拘束された女性もこれを模倣したとみられる。

 台湾の多くの若者は、「台湾は自分が生まれた時から台湾であって、中国とは全く違う国」という意識をもっている。そのため「世界に中国は一つしかなく台湾は中国の一部」と主張して我が物顔に振る舞う中国に対し反感を抱いている。

 女性の行為はそんな心情が現れたささやか反抗だったとみられる。だが中国という国は、旅行者によるほとんどジョークの域を出ないこんな小さな行為さえ、大目に見ることができない大国なのだ。

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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