Yahoo!ニュース

シャネルNo.5のボトル形状の商標登録出願について

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:97184259出願書類

「"シャネル"が"No. 5"のボトルデザインを商標出願 米国特許商標庁は"識別力なし"と難色」という記事を読みました。

シャネル(CHANEL)がブランドを代表するフレグランス“シャネル No. 5(以下No. 5)”のボトルの形状を米国特許商標庁(USPTO)に商標登録出願している件について、USPTOは現状の提出資料では識別力が認められないため承認できないと難色を示している。

ということだそうです。問題の商標は出願番号97184259、昨年の12月に出願されています。タイトル画像に商標を示しました(右側は参考用の見本です)。

「"識別力なし"と難色」と言うとずいぶん否定的なニュアンスに思えますが、商品の容器の形状(または、商品そのものの形状)を商標登録出願すると、暫定的な拒絶(オフィスアクション、拒絶理由通知)が通知され、出願人に使用による識別性(多くの消費者がこの形状と言えばこの商品と認識できるほど有名になっていること)の立証を求めるのは、日米共通の一般的審査プロセスです。

日本の例で言えば、キッコーマンの醤油瓶の形状は商標登録に成功し、サントリーの角瓶は(文字要素なしでは)登録を認められませんでした(関連過去記事)。一般に、このパターンの登録のハードルは高いです。

この後、シャネルは、この商標の使用実績、広告予算、消費者サーベイの結果等を提出して、使用による識別性を立証することになるでしょう。私は、シャネルNo.5の主要な需要者ではない(使うことも買うこともない)ですが、著名性の高さを考えれば、登録が認められてもおかしくはないと思います。

特に、このケースについては、ボトルの蓋の形状(1687481)、および、斜視図による商標(2382784)がシャネルにより既に登録され、有効に存続している点に基づき使用による識別性を主張してはどうかと、オフィスアクションにおいて審査官が親切にも提案しているので、登録してくれる気満々のようにも思えます。

出典:米国商標登録1687481号
出典:米国商標登録1687481号

出典:米国商標登録2382784号
出典:米国商標登録2382784号

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

栗原潔のIT特許分析レポート

税込880円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

日米の情報通信技術関連の要注目特許を原則毎週1件ピックアップし、エンジニア、IT業界アナリストの経験を持つ弁理士が解説します。知財専門家だけでなく一般技術者の方にとってもわかりやすい解説を心がけます。特に、訴訟に関連した特許やGAFA等の米国ビッグプレイヤーによる特許を中心に取り上げていく予定です。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

栗原潔の最近の記事