キッコーマン醤油容器が高いハードルを越えて立体商標登録
「キッコーマンの『しょうゆ卓上びん』が立体商標として登録 文字がなくても何だか分かる」というニュースがありました。おなじみのキッコーマンの醤油瓶の形状(タイトル画像)が商標登録されたという話ですがなぜこれがニュースになるのでしょうか?
日本の商標制度では1996年より立体物も商標として登録可能になっています。
看板として使用される立体商標(たとえば、KFCのカーネルサンダース人形、不二家のペコちゃん人形、くいだおれ人形等)であれば、類似先登録がなければほぼ確実に登録されます。
ハードルが高いのは商品または容器形状そのものを立体商標とする場合です。商標権は更新料さえ払えば永遠に権利を存続できる強力な権利です。一般的な形状を特定の企業に独占させてしまうと弊害が大きいので、長年の使用により消費者(需要者)に対して強い識別性を発揮している形状でなければ立体商標としては登録されません。なお、容器に識別性のある商品名や企業名が書いてあれば話は別です。大変なのは形状のみで立体商標登録する場合です。
上記記事には、形状のみで立体商標登録された例として、コカコーラのボトル形状、ヤクルトの容器などが挙げられています。いずれも、形状(下記画像)を見ればあの商品とわかるくらいの識別性がありそうな気がしますが、いったんは拒絶され、不服審判を経て苦労の末に登録されています。
形状のみでは立体商標登録できなかった例としては、福岡のひよこ饅頭、サントリーのウィスキーの角瓶などがあります。ひよこはいったん登録され無効審判もクリアーしたものの知財高裁で逆転、角瓶は不服審判でも拒絶となり知財高裁で争っても認められませんでした(その後、角瓶は商品名を入れた状態で立体商標登録)。結構、ハードルが高いことがおわかりかと思います。
一方、キッコーマン醤油瓶については、審判を経ることなく比較的スムーズに登録されています。
最初このニュースを聞いたときは、何となくどこにでもありそうなデザインという気もしましたが、上記記事によれば「工業デザインの先駆者でデザイナーの故・榮久庵憲司(えくあんけんじ)氏の設計で1961年に発売」という歴史あるデザイン(どうもすみません)で、かつ、画像検索でヒゲタやヤマサなどの他社製品の醤油瓶のデザインを見るとキッコーマンとは全然違うので、十分な識別性を発揮していると特許庁に判断されたのも納得でした。